我々HealthBizWatchを編集企画していく上で情報源はとても重要視しています。定期的なメンテナンスも欠かせません。その中でとても注目しているのがウーマンズが運営するwebメディア「ウーマンズラボ」です。情報切り口がとてもシャープなのです。そこで女性ヘルスケアマーケティング情報が圧倒的に不足しているという問題意識を持ってこのメディアを立ち上げた運営会社、ウーマンズ代表取締役の阿部エリナさんにインタビューの機会をいただきました。

阿部 エリナ(あべ えりな)氏

ウーマンズ 代表取締役

阿部 エリナ(あべ えりな)氏

Profile

女性ヘルスケアマーケティングの分析・ナレッジ・情報を提供する「ウーマンズ」代表取締役。主なクライアントは女性向けのヘルスケア商品・サービスの提供を行うナショナルブランドを中心としたヘルスケア系企業。女性消費者動向や戦略を学べるwebメディア「ウーマンズラボ」運営。2021年3月に、ヘルスケア業界人が学び・交流できるオープンコミュニティ「ウーマンズ・ミートアップ!」を創設。女性ヘルスケアに関する講演・書籍監修・メディア出演多数。

Q1.まず、ウーマンズを立ち上げられた経緯などを教えてください。

ヘルスケア市場には依然として次の課題が取り残されています。

1.ヘルスケア市場に限らず、日本社会全体で「女性視点」が抜けており、男性主体の社会構造/マーケット構造になっていること

2.性差ヘルスケアの概念が企業・業界全体で不足していること


3.女性向けのヘルスケア商品・サービスがそれを必要とする女性に、適時適切にリーチできていないこと

女性活躍が少しずつ進んでいること、フェムテックの一大ブームが起きていること、ジェンダー格差に関する社会問題が顕在化してきたことなど、少しずつ状況は改善の方向に向かい始めていますが、「女性たちにとって本当にウェルビーイングなヘルスケア社会か?」というとまだまだです。

そんな状況を微力ながら改善したいと思い、立ち上げたのが女性ヘルスケアマーケティング事業「ウーマンズ」です。

当社は「女性のためのウェルビーイングなヘルスケア社会の実現」をミッションに掲げています。
実現に向け、自社で何かヘルスケアプロダクトを開発しローンチするという選択肢もありましたが、優秀で価値あるヘルスケアプロダクトは世の中に既にたくさんあるので、当社の役割はそこではないと思いました。

今のヘルスケア市場の大きな課題の一つは「健康維持・増進/病気予防や重症化予防のためのプロダクトがない」ことではなく、「ローンチしても、それを必要としている女性生活者に適時適切に届いていない」という状況です。

これは企業にとっての損失ばかりか、個々の生活者と、そして社会全体の損失でもあります。
そこで、各社が開発・ローンチした多くの価値あるヘルスケアプロダクトがより多くの女性生活者に届くよう、企業様の裏方としてマーケティングサポートを行う、ということを私たちの役割・位置づけとしています。

ウーマンズという事業の立ち上げ前は、オンライン上でダイエット指導を行う女性専門サービス事業をご提供しておりました。
このサービスの提供を通して、20~60代女性のライフログデータの収集・分析をし、そしてこのデータを活用して、女性向けヘルスケア施設の総合開発を多数手掛けるようになっていたので、女性ヘルスケアマーケティングの支援サービスのリソースとなる、ナレッジやデータはすでに十分に手元にありました。

おかげ様でウーマンズ立ち上げ後からはすぐに、コンスタントに法人様からお仕事のご依頼を頂けるようになり、現在に至ります。
当社のように小さな会社が、ナショナルブランドをはじめ、大手法人様から直接ご依頼を頂けるのは大変ありがたいことであると同時に、改めて感じているのが、当社が積み上げてきたナレッジ・分析こそ、当社の一番の強みだということです。

そしておよそ同時期に立ち上げたのが、当社ウーマンズが運営するメディア「ウーマンズラボ」です。
女性ヘルスケア市場の最新動向を研究する法人向けメディアで、市場動向、トレンド、マーケティング、企業事例、調査/統計、国内外のニュースなどを性差ヘルスケアの視点で分析して発信しています。
ウーマンズラボは、ヘルスケア系の法人様を中心とした産学官の方々にお読み頂いております。

Q2.マーケティング支援活動の中で発見されたことはどんなことがありますか?

実際に女性ヘルスケアマーケティング支援サービス「ウーマンズ」を提供するようになり、様々な企業様の現場に入らせて頂いてますが、現場仕事を通じてこんな確信を持つようになりました。「ヘルスケア企業が抱えるさまざまな課題は、情報提供で解決できることが実は多いのではないか?」。

そこで徐々に、各社様の意思決定をサポートできる専門情報の収集・分析・発信に事業の軸足をうつしていきました。
当社が運営するメディア「ウーマンズラボ」は正直、手間暇がかかり、Googleにも振り回され(笑)、さらには直接的な売上に貢献はしないものの、それでも運営し続ける理由は「情報こそが課題を解決する」と確信しているからです。
現在はコンサルティングサービスにとどまらず、各社様が利用しやすい様々な形に専門情報を商品化・サービス化しており、多くの産学官の方々にご活用頂いています。

Q3.HealthBizWatchとしてもとてもウーマンズさんには情報面で助けられているのですが、今後の戦略やプランなどあれば可能な範囲で教えてください!

ウーマンズは「女性ヘルスケア事業の成長・改善・発想につながる情報」を分析し、多様な形に加工して企業様にお届けしています。
いずれも企業の皆様にはご好評頂いているのですが、多様化が進み、さらにはVUCA時代となった今・今後は、当社だけではカバーできない女性ヘルスケア領域の情報を、もっと豊富により専門的に届けていく必要があると感じていました。
そこで、2021年3月に「ウーマンズ・ミートアップ!」を試験的に創設しました。

ウーマンズ・ミートアップ!は、女性ヘルスケア市場で仕事をする企業人(メーカー/流通/総合広告代理店/シンクタンク/コンサルファーム/商社/メディアなど)、医療介護、公社・団体・官公庁など多様なビジネスパーソンが “組織・企業の壁” を越えて学び、交流し、ディスカッションするオープンコミュニティです。女性の健康問題/女性ヘルスケア&フェムテック市場の最新動向/女性生活者動向/女性ヘルスケアマーケティングのコツなどー、様々な女性ヘルスケアに関するテーマを策定・深堀したプログラムを開催します。

各回で、その領域の専門家・専門企業様にスピーカーとしてご登壇頂くため、当社だけではこれまでカバーできなかった女性ヘルスケアに関する情報を、豊富に専門的に発信していくことが可能になります。

1回目開催の「女性の行動変容を促すヘルスコミュニケーション」は、12の企業様/医療従事者の方々にお申込み頂きました。
2回目開催「小学館編集長が伝える、女性の心を掴む商品の魅力の伝え方(6月開催)」は6月8日時点で、定員を超え75の企業様にお申込み頂きました。
いずれもナショナルブランド(医薬品メーカー、化粧品メーカー、食品メーカーなど)や、中堅企業、ベンチャー企業、医療法人理事、医師、薬剤師など、事業規模も業種もエリアも多様な方々にお申込み頂き、大変嬉しく思っています。
また、ウーマンズ・ミートアップのフォロワーも、創設から3か月となる6月には100名様を超えました。

多くのヘルスケアビジネスパーソンが、こういった場を求めていたのだということを改めて実感しています。
ウーマンズ・ミートアップ!にご参加頂く企業様は、当社の主要取引先様、当社の各種サービスを頻繁にご利用くださっている企業様、当社運営メディアの読者様など、当社と何かしらの形で繋がって頂いているお客様ではあるのですが、私たちはお客様、というよりも「女性のためのヘルスケア社会をつくっていくという同じ目標・志を持った仲間」と勝手ながらに思っています(笑)。こちらの片思いかもしれませんが(笑)。

ただ、試験的に創設してみたら、まだ2か月にも関わらず、上述の通りの走り出しとなったので、本格的に運用を開始していこうと思っています。
まだ走り出したばかりですので、模索状態ではありますが、ウーマンズ・ミートアップ!が多くのビジネスパーソンにとって、学びや課題解決の場となり、更には当社がハブとなって各社様が多様な企業や知見と出会える場に育っていけばと思ってます。

ありがとうございました!

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2021年6月14日]