[海外事例にみる企画ヒント編]高齢者向け健康ベンチャーの注目企業
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[海外事例にみる企画ヒント編]2018年5月22日号
≫≫≫Author:脇本和洋
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こんにちは。脇本和洋です。
今号は「高齢者向けの健康ビジネス」をテーマに海外事例をとりあげます。
昨年は、AARP(アメリカ退職者協会)のイノベーションアワードからシニア向けベンチャー事例を紹介しましたが、今年は
・Aging2.0(高齢化社会を支えるベンチャーを支援する団体)
・cbinsight(ベンチャー支援企業)の高齢者向けベンチャー特集
といった所から、注目したい事例を紹介しましょう。
参考>HealthBizWatchバックナンバー
(2017年シニア向けヘルスケアベンチャー企業)
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---高齢者向け健康ベンチャーの注目企業
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「足りないのではない!きっと」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 SleepTech実証実験、海外 Fitbit動向など、9本
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>高齢者向け健康ベンチャーの注目企業
【今回の紹介事例】
1.センシングとエアバッグで転倒時の怪我を最小限にする「Active Protective」
2.認知症患者の食事を支援する「Memory Meals」
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1.センシングとエアバッグで転倒時の怪我を最小限にする「Active Protective」
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■企業名:Active Protective
■概要:
高齢者の「転倒・骨折」は、歩くことができなくなり介護が必要になる原因となります。「転倒・骨折」の中でも、尻もちをつき足の付け根を骨折する(大腿骨頚部骨折)場合が数多くあります。
そのような高齢者の「大腿骨頚部骨折」に着目しているのが今回紹介するActive Protective社です。
同社は、外傷外科医のRobert Buckman医師が2006年に創業した企業で、高齢者が転倒した時にお尻回りを守るベルト式のエアバックを開発しています。ベルトのように腰に装着すると、転倒した時に素早くエアバッグがミニスカートのような形に開き「大腿骨頚部骨折」から高齢者を守ります。
ベルトには3D加速度センサーが付いており、通常の動作と転倒時の体勢の崩れの違いを素早く識別し、転倒と判断した場合はエアバッグがベルトから飛び出ることでお尻の強打/骨折から利用者を守ります。
このように「転倒した場合に素早く家族などに連絡がいく」といった従来の高齢者見守り用ウェアラブルの考え方ではなく、「転倒した場合に怪我をしないように守る」という発想からウェアラブルを使って新しい価値を生み出しました。
同商品は現在いくつかの介護事業者に提供されており、来年一般発売の予定です。
■紹介動画
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2.認知症患者の食事を支援する「Memory Meals」
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■企業名:Life in the Moment
■概要:
2014年に設立された、認知症(アルツハイマー病)患者をケアする家族向けのプラットフォーム「Life in the moment」を開発している企業。
サービス開発のきっかけは、創業者のAshley Bryanが自ら経験した認知症患者家族としての苦労です。彼女は母親が認知症と診断された後、母親の介護、情報収集、医師やサポートグループとの話し合いなどでその生活は多忙を極めました。
こうした苦労から認知症患者の介護家族が効率的に正確な情報、ツール、サポートを得られるような包括的支援サービスの必要性に気づき、「Life in the moment」というプラットフォームを現在開発しています。
同プラットフォームには認知症の初期、中期、後期それぞれのステージに合わせて家族が必要な情報と、介護支援用のツールキットがあります。ツールキットには認知症患者向け食事プランツール、脳トレツール、家計管理ツール、医師との情報共有ツールなどが用意される予定です。
・動画によるプラットフォームの紹介
■プラットフォーム内のサービス第一弾として「Memory Meals」を開発
プラットフォーム内では今後様々な企業の商品やサービスが組み込まれる予定のようですが、同社が手掛けるサービスとして「Memory Meals」という、脳機能に良い食事プランを教えてくれるアプリサービスがあります。
「Memory Meals」は、認知症の予防や進行を遅らせるのに効果があるとされるマインド食事法(Mind Diet)に基づいており、B-BとB-Cで提供しています。
【B-B向け】
BtoB向け(認知症患者を介護する施設向け)では、「Memory Meals」にて専門シェフによる「おいしいマインド食」のオリジナルレシピ集と、それに基づく月間食事プラン、各メニューの栄養データがわかるサービスを提供。
各メニューが脳の健康に役立つレベルを独自のアルゴリズムで数値化し、「脳健康スコア(Brain Health Score)」として表記します。こうすることで脳の健康を意識したメニューを提供しています。
さらにゲーム感覚で脳の健康と食事に関する知識を増やせる知識コンテンツがあり、介護施設などで入居者が食事時に会話を弾ませたり、食への興味を高めたりすることができ、食を通じて会話や笑顔が生まれることまでを、価値にしています。
【B-C向け】
「Memory Meals」は、まずB-B向けで実績をつみ、その後BtoC向けでサービス展開を考えています。B-C向けでは、利用者の健康状態や味の好みに合わせた食事プランを作ってもらえる「Smart Plan」という機能を追加予定。そして食事記録に基づき、特定の栄養成分を多めに摂った方が良いかを判断し、必要なら食事プランを調整してくれるというものです。
他にもおすすめのサプリメントを提案するといったパーソナライズされた機能があり、単にアプリでなく、物販により収益をあげることを狙っていると思われます。
■紹介動画
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3.2つの事例に共通すること
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長年、我々は健康ビジネスの成功事例から共通点を分析しています。
その中で、
・事業テーマの明確さ
・事業の背景としての企画者自らの経験
があります。
事業テーマの明確さでいうと、Active Protectiveは「転倒時の怪我とウェアラブル」、Memory Mealsは「認知症の人向けの食事とアプリ」といったように、解決するテーマと解決する手段が明確になっています。
事業の背景としての企画者自らの経験でいえば、Active Protectiveは「外科医としての経験」、Memory Mealsは「認知症患者を家族として支援した経験」があります。
この2つの事例が今後成功するかどうかはまだわかりませんが、健康ビジネス成功事例の共通点を抑えている点は確かです。
高齢者向けに限った話ではありませんが、事業立案の最初のステップとして、事業テーマを明確にし、事業の背景としての自らの経験があることを、我々は大切にして企画づくりを支援しています。
引き続き、来月もシニア向けの健康ベンチャーをとりあげます。
【脇本和洋】
●「価値創造に力を入れた企画支援」
Active Protectiveは転倒した場合に怪我をしないように守る、Memory Mealsは認知症の進行を緩やかにする食事ができるだけでなく会話が弾む、といった「魅力的な価値の創造」をしているとも言えます。
魅力的な価値の創造含め、新商品・サービスの企画支援をしています。概要をまとめていますので、是非ご覧ください。
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「足りないのではない!きっと」
何か足りていない!と感じる時、実は足りていないのではなく、あまりにも多くを持ちすぎて本質が見えなくなっている場合が多い。そんな時は捨てることで本質が見えてくることがあります!
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【3】今週の注目デジクリップ! <9クリップ>
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[1]日経デジタルヘルスより、医師・佐竹晃太の「モバイルヘルス」で変わる医療:メンタルの不調をアプリで改善する
「こころの健康」にフォーカスした海外スタートアップ事例を紹介。米Ginger.io社の認知行動療法に基づくアプリは、カウンセラーと無料相談ができ、それを経て実際にどのような方法でケアをしていくかを決定する。(2018/05/09)
[2]西川リビング、快適温度が長く続く「PCM(R)クールパッド」【PDF】
温度変化の激しい環境変化で任務を行う宇宙飛行士のために開発された「温度調節機能」を持つ高機能素材「PCM(R)」を使用した寝具シリーズ。心地よいひんやりが長く続くのがポイント。(2018/05/10)
[3]日経デジタルヘルスより、情報医療 オンライン診療アプリ「curon」の進捗を語る
curonの導入医療機関は既に約600施設に達しており、オンライン診療の活用は徐々に進みつつある。長期間の治療や定期的な処方が必要な慢性疾患などの診療に使われるケースが目立つという。(2018/05/10)
[4]ネスレとファンケル、「ウェルネススムージー」などを新発売【PDF】
ネスレとファンケルは、栄養や健康の問題解決に共同で取り組むプロジェクトを2017年10月から開始。今回「ネスレ ウェルネス アンバサダー」向けの専用カプセルとして6製品を新たに共同開発。(2018/05/10)
[5]メドピア、医師によるオンライン健康相談「first call」がNTTドコモの「dヘルスケア」と連携
「dヘルスケア」有料会員は、従来のサービスに加えて「first call」を利用可能に。食事や睡眠時間など日々の健康状態を記録・管理するだけでなく、身体の疑問や不調を感じたときにチャットやテレビ電話で医師に直接相談できる。(2018/05/14)
[6]ニューロスペースとTEPCOi-フロンティアズ、SleepTechの実証実験を開始
実証実験ではAI搭載睡眠解析プラットフォームや睡眠計測デバイス・モバイルアプリケーションを活用し、東電EP従業員向けに睡眠計測・改善サービスを実施。結果を元に、東電EPが有する約2,000万世帯の一般家庭に向け、スマート寝室・睡眠IoTサービスの共同開発・提供などを検討。(2018/05/14)
[7]クラブツーリズムと星野リゾート、共同プロジェクト始動
星野リゾートが運営する宿泊施設を利用した新しい旅行商品を企画する共同プロジェクト。4つのテーマの共同企画商品が誕生。旅して健康「会津で見つけるわたしの休息3日間」など。(2018/05/14)
[8]Fitbit、Googleとのコラボレーションなどデジタルヘルス分野を強化
FitbitとGoogleは、最近Fitbitが買収したTwine Healthなどのサービスを利用して、糖尿病や高血圧などの慢性疾患の管理を提供できるよう、共同で取り組むことも検討している。(2018/05/09)
[9]mHealthWatch注目ニュース:日本コカ・コーラ、歩くだけでドリンクがもらえる新サービス『Coke ON ウォーク』
健康からのダイレクトなアプローチではなく、「楽しさ」「取り組み易さ」そして「手軽さ」などの視点で健康、ヘルスケア領域から少し外れた領域のサービスや仕組みを見てみると、意外と健康施策に十分活用できるものがあるものです。(2018/05/21)
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