「体験情報共有型」患者コミュニティ「patientslikeme」
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【先進事例分析】
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「体験情報共有型」患者コミュニティ「patientslikeme」
ー 注目サイトとして数々の受賞をうける ー
「ソリューションコミュニティ」という新しい方向性
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これまで本メルマガで紹介した成功している米国健康サービスの一つの共通
要因として「体験者・成功者」の活用があります。
例1)e-dietsのメンタープログラム
(同社ダイエットネットプログラムを利用した成功者がコーチ役になり、
ダイエット初心者にウェブコミュニティ上でアドバイスするしくみをもつ、
ネットダイエットプログラム販売企業。年商約60億円)
例2)weight watchersのグループリーダー
(同社ダイエットセンターを利用した成功者で同社の教育を受けた人を
リーダーとする、リアルのダイエットコミュニティビジネスを展開する企業。
年商約1500億円)
スポルツでは健康サービスを構想する際、こうした「体験者がサービスに参画
するコミュニティ」に注目しています。そこで今回は、「体験者ウェブコミュ
ニティ」単体でビジネスを構築している事例として、「patientslikeme
(ペイシャンツ ライク ミイ」を紹介します。
※参考バックナンバー:体験者がサービスに参画する事例
・e-dietsのメンタープログラム
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/203.html
・weight watchersのグループリーダー
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/221.html
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「patientslikeme」の概要
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■運営企業:PatientsLikeMe, Inc.
■サイト名:patientslikeme.com
http://www.patientslikeme.com/
■企業(サイト)設立:2004年
■起業のきっかけ
社長Heywood 氏の兄弟が難病のALSと診断された際、同様の患者と治療方法や
体験を共有したかったという切実な思いがきっかけ。
MIT(マサチューセッツ工科大)卒業後の2004年に、同大学の技術者たち
とともにサイト運営をスタートした。コミュニティカテゴリーとしては、
ALS、パーキンソン病、うつ病など8つある。
■サイトコンセプト
体験情報共有型ネットコミュニティ
(PatientsLikeMe, the leading online health community for patients
with life-changing conditions)
■ミッション
患者同士の助け合いで、日々を充実して過ごしてもらうこと
(Patients healping patients Live better every day)
■注目度
・Business 2.0 Magazineが選んだ「世界を変える15社」に選出(2007.7)
・Ars Electronic Websiteの「community」カテゴリーで最高技術賞を受賞
(2008.9)
・FierceHealth ITで健康IT分野の最高イノベイティブ賞を受賞(2007.4)
■ベンチャーキャピタル
CommerceNet、Omidyar Network、Collaborative Growth & Seed LLC、
Invus, LPの4社。直近では、Collaborative Growth & Seed LLCが2007年5月に
5億円を投資。
■収益
現在のところ、製薬企業、研究機関へのデータ販売が中心と思われる。
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サイトの特長
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patientslikemeの「体験情報共有型」患者コミュニティの特長としては、
以下の3点をあげることができます。
■特長1:ヒストリー情報(「症状+対策+周辺症状」が時系列でわかる)
検索項目にしたがって、自分と同じ病状の人をクリックすると、その人の
プロフィールとともに、症状の変化、対策(処方薬、サプリメントなど)、
周辺症状の変化が一目でわかります。
利用者側のベネフィットとして、自分の将来のシナリオとして活用、
先読みしていろいろな行動や準備ができる点が大変大きいです。
※詳しくは下記ページより。(是非チェックしてみてください)
http://www.patientslikeme.com/welcome/find
condition、genderを選んで「find patient」を押してみてください。
右側に対象者が現れるので、そのうちだれかをクリックしてください。
■特長2:参加者による定量化情報
実際に取り組んだ「対策」については、同じ病状の人がその対策をどの程度
取り組んでいるか、どう評価しているかが定量データとしてわかります。
例えば、ビタミンCを摂取するという対策をとっている人の定量化情報
として、以下の内容が集計データとして現れます。
・摂取の理由
・摂取の量
・摂取期間
・止めた理由
・有効度
・副作用
■特長3:製薬企業、医師の基礎研究にも生かされる
同サイトでマイページ登録をすると、「Research」というコーナーが自動で
現れます。このコーナーでは、自分の入力した情報が基礎研究として
どのように役立っているのかが、具体的にわかるものになっています。
サイトに記載された自分のデータは医師や研究機関によって、今後の人の
ために活用される、人のためになるという精神的な報酬を強く感じるコーナー
です。
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スポルツの視点:
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■特定の健康課題ごとに体験者の克服ストーリーがあれば、同じ健康課題の人
はそれだけでも十分励まされるはずです。それが本事例のように、ヒストリー
形式で定量的に整理されていることで、将来のシナリオがわかり「安心感」
「納得感」だけでなく、今後の行動に結びつく「期待感」を提供しています。
言い換えると、「ソリューションコミュニティ」であるとも言えます。
■次号では、同サイトのビジネスモデル、競合事例、差別化の軸、日本国内の
「体験情報型コミュニティ」の現状から今後のコミュニティの方向性を考えて
みます。
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