Interview
2015.02.12
音楽から健康へのアプローチ
2015.2.12
株式会社デラ
クリエイティブグループ 企画・制作部 課長 三ツ橋 里香 氏
『健康・快適生活・自然』をコンセプトとした活動をしているユニークな音楽メーカーが株式会社デラです。ヒーリングミュージックのトップメーカーとしての同社の試みから音楽と健康の関係性の可能性を探ってみました。
取材に対応していただいたのは、同社クリエイティブグループ 企画・制作部 課長の三ツ橋里香さんです。
プロフィール
三ツ橋 里香[みつはし りか]
幼少からピアノ、オルガン等鍵盤楽器の演奏・作編曲を嗜み、学生時代に音楽療法の実践現場に立ち会ったことがきっかけで「音が心身に与える影響」を実感。以後、株式会社デラに入社し18年間、デラの全CD・DVD等の企画・制作進行に携わる。企画発案をはじめ、医療・美容・飲食・運動ほか、あらゆる空間と音楽を結びつけ、「究極の心地よい生活」を提案するべく日々商品開発に取り組んでいる。
なぜヒーリングミュージックか
同社は昭和54年にカセットテープ、レコード、CD、ビデオ等の企画・制作・販売会社として設立された。
平成5年、当時音楽が生体に及ぼす影響を客観的に評価する研究を行っていたバイオミュージック学会に所属していた医師、牧野真理子先生との出会いが大きなきっかけとなり、心と身体にやさしいCD『アイソトニック・サウンド』をリリースし、ヒーリングミュージックの専門メーカーとして歩み出すことになる。
それから同社は企画・制作・販売までを一貫して行っているが、それは日本人の性格や嗜好に合ったヒーリングミュージックを突き詰めるアプローチから導かれた結果だという。
「社長が日本人の気持ちに沿った商品を提供したいというこだわりを持っています。もともと海外では日本よりもだいぶ早く、ヒーリングという概念が定着しており、CDショップや雑貨店、駅や空港などでヒーリングCDを見かけることも珍しくありませんでした。
以前社長がカナダへ旅行した際、販売されていたCDを試聴したところ、そこに入っていた自然音はストリーム、雷、オオカミの遠吠えなどという日本人的感覚にはないワイルドなものでした。日本で商品化するときには欧米との違いを意識したそうです。
繊細な感性を持っている日本人は、虫の鳴き声や川のせせらぎにやさしさを感じたり、小鳥のさえずりや風で木の葉が揺れる音を心地よく感じたりします。それらを取り込んだ音楽をオリジナルでつくっていきたいという強い思いがあって今日につながっています。
そして、自然の音は全て自社で収録しようということでスタッフが各所ロケに赴き、当初は国内だけでしたが今は海外(タヒチ、ニューカレドニアなど)も含めて毎年自然の音を録音しに出かけています。自然環境が様変わりするなか、人工の音が入らない純粋な自然音を収録できる場所も少なくなりましたが、その時しか聞けない貴重な自然の音を自社で残したいという意味もあり続けています」
音楽によるサプリメント効果とは
それまで日本の音楽のジャンルでは、ニューエイジやイージーリスニングという名称が一般的だった。平成11年になり三共リゲインのCMで坂本龍一氏が手がけた『エナジーフロー』の大ヒットによって、『癒し』という言葉が普及し、徐々にヒーリングミュージックへの注目度が高まっていくことになった。
その後、平成14年には同社より初の音楽と心身の関係におけるエビデンスデータを取り入れ制作されたセラピーミュージック『究極の眠れるCD』を発売する。
「ドラッグショーやギフトショーなど異業種の展示会などにも出展し、ヒーリングって何?と思われていた方々に、音楽は人の心に訴えかけますし、クスリではないのですがサプリメント効果を果たしますよ!というアピールも行ってまいりました」
このタイミングを境に既に商品構成も増えていったのでお客様に気分や好みでセレクトしていただくことができるようになったという。
同社のお客様は7-8割は女性だ。そしてリピーターも多いという。
サプリメント効果の周辺では様々な角度で商品開発をしている。株式会社デラでは、音楽がサプリメント効果をはたす“サウンド・サプリ®”を提唱しており、様々な角度で商品開発をしている。
例えば、福岡大学スポーツ科学部 田中宏暁教授考案の『スロージョギング&ダイエット』がそれだ。運動も健康につながる重要なファクターなので、今後もアライアンスを探っていくとのことだが、ヒーリングミュージックメーカーとしての立ち位置にはこだわっていきたいという。
「モチベーションを上げたり、ちょっと歩いてみようかな、ストレッチしてみようかな、という気持ちを促すきっかけに音楽がなればと思っています」
「以前、80代のおばあさまから御礼の電話をいただきました。息子さんが購入してくれた当社のウォーキングCDを聴いて、歩いてみようと思ったそうです。それまでは杖を使っていたそうなんですが、今は杖を使わず歩いているというお話でした」
この事実に音楽がもたらす効果の可能性を見い出すことはできないだろうか?直接治療はできないけれど、行動を起こすきっかけ作り(※自分が置かれている環境を変えるためのきっかけ作り、という意味)、サプリメント効果は期待できそうだ。
可能性を感じるもうひとつの試みを紹介したい。独立行政法人理化学研究所医学博士、片岡洋祐氏監修の『涼感』という商品がそれだ。
主観的気分調査システム『KOKOROスケール』を使用し、様々な種類の自然音や涼感をもたらすサウンドを比較・徹底調査。中から、厳選された8つの『涼感』サウンドが収録されている。
これはエビデンスに基づいた企画で、気分を体内から変えるというアプローチとも言える。
エビデンスを背景とした環境音楽で、健康生活へ通じるサプリメント効果は、ストレス社会の現在において可能性を感じるのは筆者だけではないだろう。
音楽からの新しいアプローチを展開する、今後も目が離せない企業のひとつだ。
取材後記:
取材後記:
三ツ橋さんには取材中とっても丁寧に言葉を選びながらインタビュー対応していただきましたし、
ミーティングルームもとても心地よい空気で満たされていた快適な時間でした。
ミーティングルームもとても心地よい空気で満たされていた快適な時間でした。
インタビュアー:大川耕平
[取材日:2015年2月6日]