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2014.7.9
あっと株式会社
代表取締役 武野 團 氏

生体データ計測の最もポピュラーなものは体重計や体温計だと思われる。この2つは体調管理のために使い方や計測結果への対処なども成人であればみんな知っている。
 
我々のカラダの中での変化をセンシングし、より予防的に活用しようという試みは今後とても注目されている領域だ。そこで2003年より毛細血管観察というユニークなアプローチを展開している武野さんに新たなセンシングの可能性について伺った。
プロフィール
武野 團[たけの だん]
佛教大学文学部中国文学科卒、大学在学中に上海へ留学、卒業後JQ上場の電子部品メーカーに入社、香港へ出向し上海駐在員事務所設立や現地工場の管理業務に従事。退職後、実父の病気を機に開発された毛細血管血流観察装置“血管美人”の製造の会社で経営全般の業務に従事し、毛細血管血流観察を研究、医学書院発行“臨床検査”第54巻第8号に論文掲載。2009年“研究開発型ベンチャー企業”あっと株式会社を設立、2013年大阪トップランナー育成事業の認定を受ける。

なぜ?毛細血管?

様々な事業経営を展開していた先代(武野さんの父)の問題意識のもとに開発されたのが毛細血管観察機器の「血管美人」だ。
 
先代が自らの健康を害したことがきっかけで、その改善の効果をどうやって把握するかを考えているうちに出会ったのが、故小川三郎先生の「毛細血管と臨床」という医学書。
 
心臓から送り込まれた血液がUターンするところが毛細血管であり、その部分の血流がスムーズであれば「血液はサラサラ」ということになるのではないかとの思いが機器開発の起点となったとのことだ。
 
元々電気屋の経験もあったことで自ら機器開発に取り組み、2003年に販売開始にこぎつける。そして2004年頃に毛細血管血流観察映像がテレビを中心とした健康情報番組に取り上げられブームとなり、機器生産が追いつかない状態も経験する。
 
武野團さんは、この時は就職した電子部品メーカーでの赴任で香港にいたのだが、2006年に意を決し日本に戻り「血管美人」ビジネスに参加することになる。
 

科学のレベルへ

「毛細血管の研究は昭和初期頃に始まっていましたが、十分な計測技術がなかったのでエビデンスはまだまだ不足しています」
 
現状ではいわゆる「非科学的現象」であることは否定できない。ということで現在武野氏は大阪市イノベーション創出補助事業として大阪大学医学部と共同で毛細血管観察技術をベースに毛細血管の数値化にアプローチをしている。
 
「毛細血管のカタチ・長さ・太さと実際の血液状態と年齢との相関や生活習慣・疾病との関係性を科学レベルで分かるようにしたい」とのこと。
 
武野氏は年に数回イベントなどで数多くの来場者の毛細血管を観察する機会があり、健康スポーツ系のものであるとフィットネスクラブなどの体脂肪率・体組成計測&アドバイスコーナーの横である場合もしばしば。
 
隣の体組成計測の結果からの生活習慣に対するアドバイスと自社の毛細血管観察からの分析との相関はかなりあるとのことだ。実際に武野氏は既に1万数千人の毛細血管観察を経験している。本人は明確に表現はしないが、かなり相手の健康状態が毛細血管観察で分かってしまうのではないかと私は推測する。だからこそ、きちんとしたエビデンスづくりに力を入れているのだと思う。

気づきを与える意義

実はこの「血管美人」は、既に累積2千台強市場に出ている。健康機器・食品開発研究機関から、漢方薬局、クリニック、スポーツクラブなど、なんらかの健康改善向上ソリューションを提供できる、もしくは開発している団体・企業ということになる。
 
毛細血管観察で自分の毛細血管状態を見ることによって、自分の実際がどうなっているのかの気づきが大切と武野氏は言う。冷えを感じる方や、不定愁訴で悩む方の観察をすると案の定そのような状態の画像が見えることになる。それを見た女性はそれで気づき、納得し、本質的な改善への意識へと向かうのだと思われる。
 
私はこの毛細血管観察技術のきちんとしたエビデンスが揃い始めると日常生活の中でのコンディショニングチェッカーとして大きなビジネスチャンスが広がるのではないか?と感じている。
 
かなり飛躍的な想像になるけれど、アップルのiOS8に搭載されるHealthKitやGoogle Fitなどに毛細血管スコア(blood capillary)が入る可能性はゼロではないと思っている。もちろん大変なことだが、、。
 
データヘルスやモバイルヘルスの世界観がどんどん進み、具体的になっていく中で、「血管美人」はどうポジショニングするのだろうか?
 
どうやら、武野氏にはその戦略図があるようだ!
今後の展開に注目したい「血管美人」毛細血管観察ビジネスだ!



取材後記:
実は、武野氏は年初に私が大阪で開催したワークショップへの参加者でもあります。独特の間合いとペースをお持ちのユニークな方で、じっくりと話をしたいと思っていただけに、今回のインタビュー実現は私にとってもラッキーでした。
 
 
 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2014年7月4日]