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  「健康×コーチング」に見る新しい健康指導
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【ヘルスコーチングとは】

コーチングとは、カウンセリングや単なるアドバイスとは違って、コーチが
相談者と会話しながら、本人の「気づき」「自発性」を促す形で課題解決に
導く手法です。

日本でも最近、スポーツトレーニングやビジネス分野でコーチングの手法が
取り入れられていますが、海外では健康分野への応用が進んでいます。

米国には、「ヘルスコーチング」と呼ばれるサービスがあり、生活習慣病の
予防や改善、禁煙支援などに活用されています。例えば大手医療機関のデュ
ーク大学医療センターでは、電話で1回30分のヘルスコーチングサービス
を月3回~4回提供しています。

今回は、健康分野の専門家向けのヘルスコーチ養成企業「Totally Coached
.Inc」を紹介、ヘルスコーチングのポイントを考えます。


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【事例紹介】 Totally Coached, Inc.
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■基礎情報
・正式企業名:Totally Coached, Inc.
http://www.totallycoached.com/home.htm

・所在地:スコッツデール(アリゾナ州)
・設立:1998年
・事業コンセプト表記:Intrinsic Coaching(本質的なコーチング)
・ターゲット:栄養士・フィットネス専門家・医療施設マネジャーなどの
 健康専門家

■プログラム内容
名称:Intrinsic Coach training for Health & Wellness professionals

基本費用は、$795(約92,000円)/12週間。
1週間に2回、電話での実践練習が中心で、ほかにトレーニングマニュアル
、オンラインフォーラムでの質疑応答も可能。各種医療資格のCEU(継続教
育単位)も取ることができる。ほかに基本コースを補足する上級コース、
$1,195(約13万8千円)/6週間 もある。

※講座内容(PDFファイル)
http://www.totallycoached.com/assets/Details_At_A_Glance.pdf


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■ヘルスコーチングのポイント
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ここでは、Totally Coached社の講座を終了した管理栄養士、フィットネス
専門家の体験談から、ヘルスコーチング実践のポイント2点を紹介します。

ポイント1)専門家が一方的に話すのではなく、患者が自ら話をする流れを
      作ること

『これまでの栄養相談では、顧客に対する「栄養教育」に多くの時間を費や
してきた(自分が多くしゃべっていた)が、コーチングを使った場合は、患
者に多く話をしてもらうことになり、非常にうまくいっている』
(臨床栄養士/Elkhart General Healthcare System社)

・コーチング例:健康イベントにて
 1)血糖値測定コーナーで、ある女性に血糖値チェックしてもらった。
 ↓
 2)測定後、その女性に「どうしたら糖尿病になるのを防げるでしょう
   か?」とたずねてみた。
 ↓
 3)女性は「食べる量をへらすことです」と自分で答えた。
 ↓
 4)その後、2人で今朝の朝食の内容など、さまざまなことを話しあいな
   がら「食事コントロールのアイデア」を出し合った。
 ↓
 5)会話を通じて、管理栄養士としての専門知識をその女性に伝えること
   もできた。

上記のヘルスコーチングは、コーチがすべての答えを教えるのではなく、相
談者に幅広い角度からの効果的な質問を行いながら、相談者自身が自分の課
題や解決方法に気づくよう促しています。

※管理栄養士の体験談
http://www.totallycoached.com/tcWebV5_2/aboutYou/regD/index.html


ポイント2)「ステップ毎の目標」を明確にすること

『これまでは専門家として、目標達成のための答えは自分が知っていると自
覚して顧客のトレーニングプログラムを作成していたが、本当の意味で顧客
の目標を達成できるものではなかった』

『コーチングでは、顧客に対して、目の前の目標(ゴール)は、あくまでも
最終的なゴールにいきつくまでの「戦略」にすぎないと、わかってもらうこ
とができる』(フィットネス・マネジャー Advocate Health, Grainger
Corporate Fitness Center)

このケースでは、ヘルスコーチが目標達成までの「ステップ」毎に、細かく
目標を設定して計画・実行・評価をサポート、最終的なゴールまで顧客と二
人三脚で進んでいることが述べられています。

※フィットネス専門家の体験談
http://www.totallycoached.com/tcWebV5_2/aboutYou/fitS/index.html


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【スポルツの視点】
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■今回紹介したヘルスコーチの事例は、相談者に対して「自分自身が自らの
課題に気づくことができる」「自分の定めた目標なので途中で挫折すること
なくプランを継続できる」というベネフィットを提供しています。

■すでに日本でも、下記のような健康分野でコーチングを活用したサービス
が見られますが、まだあまり多くありません。

・コーチングダイエット(メディカル&ライフサポートコーチ研究会)
http://medical-life.info/modules/tinycontent0/index.php?id=1

・栄養士による食コーチング(パルマローザ)
http://www.palmarosa.jp/index.html

上記では、いずれもコーチングが、健康や病気について「気づき」を与える
だけでなく「目標への継続的なサポート」手法としても活用されており、今
後の展開に注目したいところです。

■では、日本で今後「ヘルスコーチング」を導入する場合、どのような点が
ポイントになるでしょうか。

1)ヘルスコーチ(人材)について
ヘルスコーチングは、「健康関連資格+コーチングスキル」の両方をもつ専
門家が実施しています。個人の健康課題を扱うコーチングの場合は、なんら
かの健康(医療)の専門家であることがより望ましいでしょう。

2)ヘルスコーチングの適用範囲について
ヘルスコーチングは、うつ病など深刻な疾患を持つ人や、病院での専門治療
を必要とする人には、適用されるべきではありません。また、毎回多くの質
問をされて行動改善を求められるため、それを大きなプレッシャーと感じた
り、つらく感じる人に対しては、指導が難しい手法です。ヘルスコーチには
、そのような手法であることを事前によく説明したり、相談者の抱える健康
課題を適切に判断する能力も必要となります。

3)顧客層について
対象となる顧客としては、現在は深刻な症状はない(病院に行くほどではな
い)「生活習慣病の予備軍(半健康な人)」が中心となりそうです。
具体的には、下記のような人へのサービス提供が考えられます。

・定期健診の結果で気になる数値が出て、次の検診日までに検診数値を正常
 に戻したいと考える人
・期間限定でとにかくダイエットしたい人
・ひとりでは成果や達成感を感じられない人
・高齢者や単身者など、人と話をしながら改善したい人

■最近は日本でも、栄養士やフィットネス専門家によって、さまざまな健康
教育が、セミナーやグループワークを通じて提供されています。ヘルスコー
チングは、このような集団で健康知識を学んだ後の人(健康意識の高い人)
を対象とした個人向けサービスとしても活用できます。

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