【海外ユニーク事例編】B-Bフリービジネスモデル「Practice Fusion」
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海外ユニーク事例編:B-Bフリービジネスモデル「Practice Fusion」
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こんにちは。スポルツの脇本和洋です。
6月26日のメルマガでお知らせしたよう、今号のメルマガより
海外ユニーク事例編がバージョンアップします。
・全世界から、
・健康業界だけでなく医療介護業界にも広げ、
・ユニークなビジネスモデル
を紹介していきます。
今回紹介するのは、「Practice Fusion社」。
医療業界に属し、無料のEHR(電子健康記録システム)を中小病院に提供
しています。
収益は、製薬会社からの広告費であげています。
Practice Fusionの特長は、医師へのアンケートで第一位にも評価される
高品質のEHRシステムを無料で提供し、
驚きを与えるというものです。
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(通常EHRシステム構築に最低でも400万程度はかかるとされています)
その結果、現在では数多くの病院に採用され、3,100万人(米国人口の10%)の
電子カルテを保有する企業になりました。
近年の米国健康医療IT分野の成功企業の一つとして、
よく名前があがる会社というわけです。
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そもそも、EHR(電子健康記録システム)って何?
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EHRは、Electronic Health Recordの略で、「電子健康記録」と呼ばれます。
異なる医療機関や検査機関で別々に管理されている個人の医療情報
(電子カルテ)を相互活用できるようにするシステムのことです。
医療機関において重複検査や誤診を回避し、結果として医療の効率化や
医療費の削減につなげることを狙いとします。
米国では、国をあげてこのEHRを推進しており、EHRを進める病院や医師に
インセンティブを支払う(5年間で合計44,000ドル)法律が採択されています。
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事業概要:「Practice Fusion」
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では、簡単に事業概要を紹介しましょう。
■企業名:Practice Fusion, Inc
■設立:2005年
■売上:推定 14.2mil U.S. Dollar
(1ドル=80円として11億3,600万円)
※出所:D&Bグローバルプロファイル(2011年11月更新)
■ミッション(表記):患者のデータをいつでも、どこでも、
利用可能にすることで、医師の職務遂行を支援する
(Empowering physicians to save lives by making patient
data available anytime, anywhere.)
■ターゲット:中・小規模の病院や開業医
■サービス:無料のEHR(電子健康記録)を中小病院に提供する
■収益源:製薬企業などからの広告掲載料
■利用者数:15万人以上の医療従事者
■データ蓄積されている患者数:3,100万人以上
■メディアでの取り上げ
・米国のテレビ放送局「NBC ニュース」で特集された時のもの
・ヘルス2.0カンファレンス2009年での講演
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サービスの全体像と提供価値
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EHRシステムの基本的な8機能と、それぞれの提供価値を以下の括弧内に
記載してみます。
1.Charting:医療カルテの記入・保存・管理(テンプレートで短時間化)
2.Messaging:電子メールの送受信(高い機密性管理)
3.e-Prescribing:電子処方箋(患者処方の他の薬との相互作用を瞬時に確認)
4.Documents:医療画像・資料の保存・管理(容量は無制限で使える)
5.Labs:臨床検査機関とのやり取り(70以上の検査機関に送れる)
6.Reporting:レポーティング機能(複数の患者データを検索できる)
7.Scheduling:スケジュール管理(診療予約管理ができる)
8.その他(紹介状のテンプレート、請求書作成システムなどで短時間化)
同社のEHRシステムは、アウトソーシング分野の調査会社
「The Brown-Wilson社」が行ったプライマリケア用EMRシステムの
顧客満足度調査で、他の有料のEHRシステムを押しのけ、
第一位を獲得するなど、無料でありながら高い顧客満足度を得ています。
※尚、システムの種類は、ウェブベースのアプリケーション
(クラウドコンピューティング)となっています。
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収益構造
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同社は、EHRシステムを無料で中小の病院に提供する代わりに、
製薬企業、医療機器企業からの広告費の収益をあげています。
同社のサイト内を見ると、今後集まった膨大な個人医療データを使って
データ販売をしていくことが記載されており、同社に投資する
ベンチャーキャピタリストもその点に可能性を感じていると思われます。
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同社のビジネスモデルのまとめ
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事業概要(ミッション、ターゲット)、サービスと提供価値、収益構造という
ビジネスモデルの中心要素を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
一番印象として残った点は、「高品質なシステムで、当然有料と考えられる」
ものを無料で提供し、
大きな驚きを与えている点です。
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読者の皆様は今健康業界で、様々な健康サービスがあふれる中、
新しい提供価値を目指してビジネスを企画していることと思います。
価格以外にも様々な方法で、
・「驚きをいかに作るか」
の大切さを、改めてこの事例から学べるのではないでしょうか。
■編集人:脇本 和洋(わきもと かずひろ)
・株式会社スポルツ ディレクター
・メールマガジン「海外ユニーク事例編」の編集を14年行う
・健康業界の事業企画部門の方を中心に、イノベーションを起こす手伝いをする
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