[ヘルスコーチングの視線編]ヘルスコーチングの可能性を探る:インタビューから見えてくるキーワード「オンラインコミュニケーション」
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[ヘルスコーチングの視線編]2017年5月30日号
≫≫≫Author:里見将司
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「ヘルスコーチングの視線」では、ヘルスコーチングのアプローチについて現場の方々の生の声をインタビュー形式でご紹介しています。
前回に引き続きこれまでのインタビューを振り返ってみて、気になるキーワードをピックアップしました。
今回ご紹介するキーワードは、「オンラインコミュニケーション」です。
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---ヘルスコーチングの可能性を探る:インタビューから見えてくるキーワード「オンラインコミュニケーション」
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「フィットネス・カフェ」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 組織改善プラットフォーム、海外 ウェアラブルバンドなど、14本
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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<テーマ>
ヘルスコーチングの可能性を探る:インタビューから見えてくるキーワード「オンラインコミュニケーション」
これまでインタビューさせていただいた方々は、対象者との直接のコミュニケーションを数多く経験してきた専門家はもちろん、ヘルスケアサービスを提供する立場として利用者とのコミュニケーションの現場を見てきました。
その方々のインタビューをあらためて振り返ってみると、領域はもちろん立場が異なっていても、これからのヘルスケアサービスではオンライン上でのコミュニケーションが欠かせないものになっていくことで、オンライン上でのコミュニケーションの難しさをしっかりと捉えています。
今回はこれまでのインタビューの中で「オンラインコミュニケーション」に対して、それぞれがどう捉えて、どんな難しさを実感し、どんなことに注意しているのか、インタビューからピックアップしてみなさんにご紹介したいと思います。
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1、コメントの行間を読み、細かなサインを見逃さない繊細さや洞察力が重要
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(株式会社ボディクエストの代表でボディデザイナーの森俊憲さん)
オンラインでのパーソナルトレーニングでこれまでに10,000人以上への個別カウンセリングやパーソナルトレーニング指導を行っている森さんでも、オンライン上でのコミュニケーションでは、気をつけていることがあるとコメントされています。
(森氏)ーーーーー
同じような内容の文章でも、受け取る側(読み手)によって印象や感情に差が出てきます。
私もこの仕事を始めてから10年が経ち、数多くの皆さんとやり取りをさせていただいてきましたが、わかりやすく言うとオンラインでモチベーションを上げられるか反感を買うかは紙一重だと思っています。
言葉だけのやり取りになりますので、社会人として当たり前な礼儀やマナーはもちろんのこと、ユーザーコメントの行間を読み、細かなサインを見逃さない繊細さや洞察力、的確に伝えるための表現力・文章力など、極めて高度なコミュニケーション能力が求められます。
現在、社外で活躍していただいているボディクエスト公認トレーナーの皆さんには、この点を最重要視して対応してもらっています。
●ヘルスコーチングの視点:
「真摯かつ丁寧に対応していくこと」
顔が見えない分オンラインだからこそ意識すべきポイントとして「真摯かつ丁寧に対応していくこと」を基本にしている森さんのスタンスが印象的でした。
コメントの行間を読み細かなサインを見逃さないことが重要だからこそ、丁寧な文章、表現が必要とのことで、オンラインだから簡潔に伝える、文章量は少ないほうが良いと言われていますが、対象者の顔が見えない分、私はケースによっては文章量よりも丁寧な伝え方が最重要視すべきだと常日頃から感じています。
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2、本音や温度感をつかむこと、そしてしっかりと読み解くことが重要
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(株式会社エムティーアイ 管理栄養士 川端史紀さん)
健康診断の結果の改善や減量をオンライン上で栄養士がマンツーマンでサポートするサービス「MY栄養コーチ」を現場で作り上げてきている管理栄養士の川端史紀さんは、対面での栄養指導の現場もこれまでに数多く経験してきています。川端さんのインタビューの中で、これまで経験してきた対面でのコミュニケーションとオンライン上のコミュニケーションでの違い、難しさについて以下のようにコメントしています。
(川端氏)ーーーーー
基本的なコミュニケーション技法が通用しないのが難点です。
例えば、Face-to-faceであれば、会話に緩急をつけたり、声色をかえたり、非言語的コミュニケーションを使ったりすることができますが、オンラインではそのようなアプローチはできないので、伝わりやすくする手段が限られてしまいます。
お客様の本音や温度感をつかむのはとても大変ですし、そこが読み解けなければ、的外れなアプローチをしてしまいかねません。
●ヘルスコーチングの視点:
「対象者を知ること、そのための双方向のコミュニケーション」
栄養指導の現場でもオンラインでのサポートであっても、最終的には結果を出すことが重要で、そのためにはその人に合った効果的な具体策の提案が必要になります。
しかし、オンライン上でのコミュニケーションでは対象者から届くテキストだけで反応や状況を読み解く必要があります。
ですが、オンラインのコミュニケーションであっても双方向のコミュニケーションはもちろん可能です。
対象者の気持ちや視点、状況を把握するためには双方向のコミュニケーションにどう持ち込めるかということが重要になってきます。
そこで、ポイントになってくるのが、ヘルスコーチングのスキルの一つである「質問」です。
専門家は「教える」「アドバイスする」ことが役割だと思い込んでいるケースをよく見かけますが、適切なアドバイスは対象者に寄り添ったものでなければ意味がありません。そのためにも対象者を知ることが重要でその知るための問いかけや気づいていない点に目を向ける「質問」など、「質問」のスキルがオンライン上のコミュニケーションでも重要になってくるのです。
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3、お互いに自己開示をしてもらうかがマネジメントにおいてとても重要
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(株式会社Be&Do 執行役員 橋本豊輝さん)
オンライン上で「オンライン・コミュニケーションマネジメント講座」を提供し、また企業向けに離職・離脱防止やパフォーマンスアップのためにエンゲージメントを高める人材マネジメントツール「Habi*do(ハビドゥー)」をオンラインで提供している橋本さんも、オンラインコミュニケーションの注意すべきポイントを以下のようにコメントしています。
(橋本氏)ーーーーー
オンラインでは表情や雰囲気が伝わりづらい分、対面以上に情報の受け取り手がその内容を見たときにどのように感じるかという想像力が重要です。
同時に、相手がどのような人かわからないままでは、コミュニケーションがとりづらくて仕方ないと思います。ただでさえ目や耳から入る情報が少なすぎるためです。
時と場合によるのですが、もしお互いに知らない人が集まってオンラインでコミュニケーションをとる場合は、いかにお互いに自己開示をしてもらうかがマネジメントにおいてとても重要になるでしょう。
●ヘルスコーチングの視点:
「関係性づくり」
オンライン上でのコミュニケーションでも、事前に対象者を知るための情報を入手していることが求められます。しかし、どんなに事前に情報を入手していたとしても、やはりサポートする過程での反応や変化はテキストでのやり取りだけで把握する必要があります。
ただ、対象者とのテキスト上でのやり取りの中に、どれだけ対象者の気持ちや本音などを入れてもらえるかは、やはり対象者との関係作りがポイントになってきます。
専門家は「教えられる人」、対象者は「教えてもらう人」の関係では、対象者はいつまでも「受け身」な状態のままになってしまいます。
専門家側が「教えられる人」から「伴走する人」「寄り添う人」に立場を変えることが必要であり、まずその最初のステップとして専門家と対象者双方での「自己開示」は距離感を縮める上では必要な要素になってくると思います。
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4、伝えたい事と伝わる事に違和感が無くコミュニケーションを進める事は重要
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(株式会社RDサポート ヘルスケア事業部 小関望さん)
管理栄養士・栄養士を含めた登録者4,500人以上で食品・健康業界に特化した人材派遣・人材紹介サービスを提供している株式会社RDサポート。その中で、自社としても特定保健指導事業や栄養相談などを展開しているヘルスケア事業部で長年管理栄養士・栄養士を見続けてきている小関さんはインタビューの中で、管理栄養士のオンラインコミュニケーションの現状について、以下のようなコメントをしています。
(小関氏)ーーーーー
オンラインに抵抗を感じる方はそんなに多くないと思います。
しかしながら、オンラインに使用するPCやツール、アプリに触れる機会が少ない方は、どうしても抵抗を感じてしまうのは事実です。
また、自ら何かを「発信する」事に慣れていない方は強く抵抗感がある様に思います。
逆に、ITリテラシーがなくても、「文脈を読む事ができる。」「表現力溢れる文章が作れる。」「自信を持って意見ができる。」方は活躍しています。
限られた(適切な)テキスト量で、伝えたい事と伝わる事に違和感が無くコミュニケーションを進める事は重要だと思います。
●ヘルスコーチングの視点:
「専門家の知識+ヘルスコーチング+オンライン」
ヘルスケアサービスの中では、対象者に対して「こうすべき」という指導スタイルのコミュニケーションを通常目にしますが、実際に取り組むのは対象者であって、対象者が主体的に取り組むようになるためのコミュニケーションが必要です。これは、対面でのコミュニケーションでも同じことが言えます。
対面でのコミュニケーションが主流だったヘルスコミュニケーションは、今後ますますオンライン上でのコミュニケーションの機会が増えていきます。
その時にまずは対面、オンラインを含めて対象者が主体的に取り組むようにしていくサポート、コミュニケーション、アプローチを基本に、オンラインでのコミュニケーションのスキル、テクニックが必要になってきていると思います。
専門家の知識を「ヘルスコーチング」のコミュニケーションに載せて、オンラインを活用して伝えていくことが、これからのヘルスケアサービスには必要なのです。
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「対象者に専門家側が“寄り添う”オンラインコミュニケーション」
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上記でご紹介した4人の方々は、それぞれ異なる分野、領域でオンラインのコミュニケーションに関わっています。
みなさん分野、領域は異なりますが、オンライン上のコミュニケーションについての難しさを口を揃えて言われています。
しかし、これからのヘルスケアサービスでは、オンライン上のコミュケーションは、外すことができない重要な要素であることも認識されていて、みなさんそれぞれがチャレンジされています。
対面とオンラインでは異なる部分やポイントをしっかりと抑えつつも、やはりヘルスケアサービスでのコミュニケーションでは、対象者の意識が変化し行動が変化するためのアプローチが基本になってきます。
そのためには、主役である対象者に専門家側が“寄り添う”スタイルのコミュニケーションをベースにしたオンライン上でのコミュニケーションが必要になります。
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最近、管理栄養士向けなど専門家の方々へのヘルスコーチングのセミナーのお声掛けをいただくケースが多くなってきております。
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『ヘルスコーチング』プライベートセミナーの内容は以下にてご確認ください。
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「フィットネス・カフェ」
フィットネスの現場のレッスンアフター機会をカフェにできないだろうか?これ極めて効果あり!!
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【3】今週の注目デジクリップ! <14クリップ>
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[1]アトラエ、組織改善プラットフォーム「wevox」正式リリース【PDF】
企業の組織課題を独自のサーベイを用いて定量化及び特定し、働き方改革を促進する新サービス。サーベイを定期的に実施することで、改善施策の効果を計測することができ、組織改善のPDCAサイクルを実施することが可能となる。(2017/05/17)
[2]日本生命保険、ヘルスケア事業の本格展開と健診・医療ビッグデータの活用を通じた中長期的な保険事業の高度化について【PDF】
野村総合研究所、リクルートライフスタイルと「ニッセイ健康増進コンサルティングサービス(企業・団体・健保・共済組合向け)」を開始。(2017/05/17)
[3]国立健康・栄養研究所、日本人はどんな食品から食塩をとっているか?ー国民健康・栄養調査での摂取実態の解析からー
5月17日の「高血圧の日」「減塩の日」の開始にあわせて「健康日本21(第二次)分析評価事業」の一環で国民健康・栄養調査のデータを解析し、日本人が食塩を多くとっている食品についてのランキングをまとめた。(2017/05/17)
[4]東急不動産HDと本田技研工業、既存の郊外型住宅団地「季美の森」で高齢化社会対応型スマートコミュニティの実証実験を今夏より開始【PDF】
第一段階として、高齢者や主婦を中心とする住民を対象に本田技研工業の次世代電動パーソナルモビリティーによる団地内走行やカーシェアリングを実施するなど次世代移動支援に取り組むことで、その有効性や利便性を検証する。(2017/05/18)
[5]日本コカ・コーラとセブン&アイ・ホールディングス、「一(はじめ) 緑茶 一日一本」を新発売【PDF】
「セブンプレミアム」と「一(はじめ)」両ブランドによる共同企画製品として初の機能性表示食品。体脂肪を減らす機能があることが報告されているローズヒップ由来ティリロサイドを含有。(2017/05/18)
[6]ジョンソンヘルステックジャパン、世界で話題のサイクル「ステージズ」販売開始
2015年登場以来、世界中で話題のインドアサイクル「ステージズ」。日本での正規販売契約を結び、マトリックスよりステージズ「SC3」「SC1」の注文受付を開始。(2017/05/18)
[7]E3、指一本で測定できる糖質モニター「caboc」新発売
必要なのは指を挿入するだけ、体への負担なく1日何度でも測定が可能。指を挿入するだけで摂取した糖質の増減を可視化する。(2017/05/18)
[8]ウェルビーと大日本印刷、患者向け自己管理(PHR)サービスで連携
ウェルビーの患者向けサービスに「DNPモニタリングシステム Your Manager」を搭載する。服薬記録に対応するセンシング技術を活用し、より利便性の高いPHRサービスを提供。(2017/05/18)
[9]「慶応メディカルAIセンター」の狙いとは…LINK-Jが「AI×医療」でシンポジウム(日経デジタルヘルス)
慶応メディカルAIセンター設立の狙いは、AIの医療応用に向けた研究環境を整備するとともに、臨床応用のための実証を医学部内で実施したり、ビッグデータを活用できる情報基盤を構築したりすることにある。(2017/05/19)
[10]デジタルヘルス事例:“医療版Uber”今夏始動「スマート往診システム」って何?(日経デジタルヘルス)
配車サービス「Uber」の医療版とも言えるサービスが今夏、日本に登場する。夜間にスマートフォンアプリから医師を自宅に呼べるサービスを開発。まずは東京都23区と千葉県の一部でサービス提供を始め、対応エリアを順次拡大する。(2017/05/22)
[11]東北大学とオムロンヘルスケア、自分で測り自分で創る健康社会へ
日常生活のモニタリングで得られた検査値と高血圧等の疾病の関連を明らかにするための共同研究を実施する契約を締結。一人ひとりの日常生活のモニタリングと健康データの関連の解明を目指した5,000人規模の研究。(2017/05/23)
[12]カリフォルニア大学デービス校がHealbeと共同で、摂取カロリーを記録できるウェアラブルバンドを公開
カリフォルニア大学デービス校の研究グループはHealbe社と5年間の契約を結んだ。179ドルで販売されているこのバンドは、Flowの技術を採用し、人間の摂取カロリー、水分量、感情の状態など様々な記録が可能。(2017/05/18)
[13]SenselyとMayo Clinicがデジタルヘルスケアソリューションの進化に協力
患者のエンゲージメントと慢性疾患モニタリングのためのバーチャル医療アシスタントアプリケーション「Sensely」は、Mayo Clinicと個人の最適な健康成果をサポートする技術を活用することで合意。(2017/05/23)
[14]mHealthWatch注目ニュース:Partners HealthCare、AI使用を促進する10年間のプロジェクト
今回取り上げたPartners HealthCare社の計画は、データを効率的に解析し、臨床医がすぐに使えることを目指しているが、10年計画の肝となるのは患者に効率的で質の高い医療サービスを提供することになる。(2017/05/29)
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