───────────────────────────────────
●米国健康関連サイトから新しいビジネスモデルのヒントをつかむ(2)
<「BtoC 健康情報+コマース(商品販売)」型の今後の方向性を考える>
───────────────────────────────────

【はじめに】

 日本の健康関連のサイト運営企業にとって、新しいビジネスモデル*を
構築するために先行事例として海外のビジネスモデルをヒントにすること
は有効な方法といえます。
 今月は日本の「BtoC 健康情報+コマース(商品販売)」型の今後の方向
性を考えるためにビジネスモデルの構築ステップ自体を明確化し、その中
の重要なステップである海外サイトのベンチマーク*を行ってみます。
(尚、「健康情報」はかなり幅広いテーマとなりますので今回は「ダイエット
情報」と設定します。

※ビジネスモデルとは
ヘルスビズはビジネスモデルを「インターネットの強みを自社の強みと結び
つけて顧客の課題を解決する新しいビジネスのしくみ」と定義しています。
ヘルスビズメールマガジン11月号*では健康関連サイトを、BtoB(サイトの
顧客が企業の担当者)で5つの型、BtoC(サイトの顧客が一般の消費者)で
3つの型に分類しています。


※ベンチマークとは
ヘルスビズはベンチマークを「アイデア開発の一つの手法で似たものを見つ
け、優れた部分を取り込んで、同じようにやらない(自分の考えた独自性を
中心に据える)こと」と定義しています。


.........................................................................................................
1.【ビジネスモデル構築ステップ】
.........................................................................................................

海外のベンチマークを行う前にビジネスモデル構築のステップ自体を分解する
と以下のようにまとめることができます。

<ビジネスモデル構築のステップ>
1. 開発テーマの設定
2. ターゲットの設定
3. モデルの基本要素の仮説設定
・ターゲット顧客の課題
・自社の強み
・インターネットの強み
4. ベンチマーク(50~100の国内外のサイト)によるヒント抽出
5. モデル開発の方向性(仮説)設定
6. 具体的モデルアイデアの設定、絞り込み
7. コンテンツメニューの作成
8. ビジネスモデルの検証

ベンチマークはビジネスモデル構築の中でも「新しいモデル構築のヒント」
を抽出するための非常に重要なステップであり、海外の事例、異業種の事例
などいろいろな視点からベンチマークを行うと効果的です。
今回は1999年11月にニューヨークで開催された展示会「e-healthcare」に
参加した企業を中心に対象をダイエット関連サイトに絞り30社をベンチマーク
先として選びました。(ダイエットコミュニティサイト、健康コミュニティ
サイト、女性コミュニティサイト、ダイエット雑誌など)

ベンチマーク手順としては選定したサイトの、「顧客からみて魅力あるコン
テンツ」と「顧客がサイトに感じる予想不満点」の情報を収集し、日本の
サイトに応用するためのヒントをつかみます。

※展示会「e-healthcare」
http://www.ehealthcareworld.com/newyork99/exhibitors.html


.........................................................................................................
2-1.【顧客からみて魅力あるコンテンツからのヒント】
.........................................................................................................

選んだサイトの中で特にユニークなコンテンツを提供している2社のサイト
とその他のサイトにおける「顧客からみて魅力あるコンテンツ」を抽出し、
そこか>ら得られたヒントを●印で以下にまとめます。

■Best of weightloss
http://www.bestofweightloss.com/
ダイエット専門のコミュニティサイト。
主な収入源はニュースレターやe-mailで消費者に健康関連製品情報を配信する
ことによる広告費、書籍・スポーツ用品・健康食品などのオンラインショッピ
ングによる取引手数料である。

●ダイエットを始めたい人に絞った情報の提供
ターゲットをダイエットを始めたい人に絞ってQ&A、心構え、始め方、気軽に
続けられる効果的な様々な方法(例:サプリメントの使い方、食事の摂り方、
カロリーを消費するのに効果的な運動、リンゴダイエット、キャベツスープ
ダイエット)などの幅広い情報を提供している。

●いろいろなダイエット法の総合的紹介
血液型別ダイエット、いろいろなダイエット運動などを紹介している。

●専門家が評価したお勧め情報
専門家が評価したダイエットに関する「おすすめの本」、「おすすめのダイ
エット関連リンク集」などを紹介している。

■babycenter.com
http://www.babycenter.com/
妊婦、及び乳幼児の子育てに熱心な母親向けサイト。妊娠中の菜食ダイエット
などが掲載されている。オンラインショッピングによる取引手数料を主な収入
源にしている。

●女性のライフステージに合わせたコンテンツ
妊娠、出産は女性のライフステージが大きくかわるタイミングであり、その
ステージとダイエットがどう関わるかを特集している。

■その他のサイトから得られるヒント
●シミュレーション機能の充実
「理想体重」、「理想体型」、「体脂肪率」、「運動や日常生活によって
消費するカロリー」、「一日に必要な栄養(炭水化物の量)」、「運動の際に
目安とすべき心拍数」、「一日に摂取したカロリーに合わせた運動と目安と
する食事パターン」などが表示される。

●ダイエット情報の評価
ダイエットに関する「おすすめサイト」をランク付けしている。

●仲間との競争意識を高める
ダイエット仲間に自分のダイエット進行状況(イラスト付き)をオンライン
で伝えることができる。

●仲間を発見する
ダイエットに関するアンケートに答えると自分と似た経験や関心をもつなダイ
エット仲間がどれくらいサイトを訪問したか即座にわかる。掲示板、チャット
などを充実させている。

●仲間と励まし合う
ダイエット激励メールの雛形が用意されていたり、専門家の書いたエッセイ
などの全文をダイエット仲間に送ってお互いに励まし合うことができる。

●個人個人に合わせたアドバイス
日常の食事・運動に関する質問に答えると自分にあったアドバイスをオンライ
ンで得ることができる。

●成功者の体験談
そのサイトを利用してダイエットに成功した人達の体験談を知ることができる

●書籍会社へのリンク
Amazon.comとの連携を図っている。

●ダイエットに関するウソ・ホントを検証
クイズ形式でダイエットに関するウソを指摘している。

●栄養成分表の表示
大手ファーストフードチェーンのメニューのカロリーを表示している。

●運動の目的別にプランを紹介してくれる
ウォーキングの目的ごとにウォーキングプランが現れる。

●ダイエットの専門家に質問できる
掲示板などを利用して専門家に質問できる。


.........................................................................................................
2-2【顧客がサイトに感じる予想不満点からのヒント】
.........................................................................................................

ベンチマーク手順の2番目として「サイトを使ってみて感じた不満点」から
得られたヒントをまとめます。

●情報の体系化
ダイエットサイトの多くは情報が充実しているために逆に読みにくかったり、
どこに自分のほしい情報があるかわかりにくい場合が多い。初心者でも使い
こなせるように情報をわかりやすく体系化することがポイントになる。

●消費者の興味に合わせた情報検索機能
ダイエット商品をただずらずらと並べているサイトでは消費者は困る。
例えば、年代別、ダイエットの目標期間別、ライフステージ別、ライフサイ
クル別、消費者ニーズ別などによる商品の検索機能が必要である。

●怪しい情報の排除
掲示板を開くと「ダイエットに絶対効く!」などの怪しい情報が必ず入って
きてサイトの信頼感が下がる。このような情報を減らす工夫が必要になる。


.........................................................................................................
【今後の方向性】
.........................................................................................................

以上のヒントを活かして今後のモデル構築の方向性を仮説的に考えてみます。

<モデル例1>
■仮コンセプト名:やるぞダイエット

■概要(顧客メリット)
ダイエットしたい人のモティベーションを最大にキープできるサイト。
(このサイトにいくと絶対にやるぞ!という気になるサイト)
コンテンツの内容としては ・ 自分の現在の体重、身長、写真を入力すると
CGで加工されたダイエット後の自分をシミュレーションできる。
・ 自分の現在の年齢、体重、体型、ダイエットの目標期間、ライフスタイル
などを入力すると自分とよく似た成功者が選べ、その人達がどのような方法
をとったかわかる。詳しく知りたい場合、その成功者や専門家にメールでアド
バイスを受けることができる。
・ 自分の家の近所のダイエット仲間を発見することができる。
・ ダイエット商品は専門家から推薦され、ウェブ上で購入できるようにする。
また、商品にはダイエット成功者が評価ポイントをつけ、その商品の実績も
知ることができる。
・ ある期間ごとに「あなたのダイエットの進行状況」を聞くメールが専門家
から届くようにする。(リマインダー機能)

■運営側のメリット
食品、機器、書籍、専門家など幅広く紹介することにより、商品を購入した
り、専門家に相談した場合の取引手数料を得ることができる。

<モデル例2>
■仮コンセプト名:あきらめないでダイエット

■概要(顧客メリット)
ダイエットしたいと思うがいろいろな事情であきらめている人にターゲット
にし、ダイエットを面倒と思う場面ごとにそれをどう克服するかのアドバイス
と商品を幅広く紹介するサイト。
コンテンツの内容としては ・ 毎日忙しいのでダイエットができないという
人に対しては1日のライフサイクル(何時に何をしているのか)を聞く質問が
あり、その人のライフサイクルに合わせたダイエットの商品とアドバイスが
検索できるようにする。
・ ダイエットを始めたいが情報がありすぎて迷うという人に対しては
「あなたに合ったダイエットプログラム」というコーナーがあり、そこで
高度なOne-to-oneプログラムによりその人に合ったアドバイスを提供する。
アドバイス中には専門家が勧める商品も織り込む。
・ 一度ダイエットにトライしたがうまくいかなかったので専門家に相談したい
という人には日本中のダイエット指導の専門家を検索できるようにし、その人
に有償で相談できるようにする。また、専門家自身も消費者から評価される
ようにする。

■運営側のメリット
食品、機器、書籍、専門家など幅広く紹介することにより、商品を購入したり、
専門家に相談した場合の取引手数料を得ることができる。


■まとめ
今月は日本の「BtoC 健康情報+コマース(商品販売)」型の今後の方向性を
考えるためにインターネットビジネスモデル構築ステップ自体を明確化し、
その中の重要なステップである米国サイトのベンチマークを行い、仮説的に
今後の方向性を考えてみました。

来月は更に新しいビジネスモデル構築のヒントをつかむために異業種サイト
のベンチマークを行います。

───────────────────────────────────