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2014.9.10
ケアプロ株式会社 
代表取締役 川添 高志 氏

2007年に“ワンコイン健診”という当時では斬新なアイデアで起業したケアプロ株式会社は7年目を迎えた。紆余曲折ありながらも前進し続ける同社のスタンスは思わず応援したくなってしまうと同社を知る多くの健康ビジネス事業者のコメントを耳にしてきた。
 
さて、今回はその応援したくなる理由を聞きたく、川添社長に直接インタビューした。
プロフィール
川添 高志[かわぞえ たかし]
1982年、横浜市出身。05年3月、慶應義塾大学看護学部卒業。看護師・保健師。
経営コンサルティング会社、東京大学病院を経て、07年12月起業。世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパー、アショカフェローに選出。

起業の思いから現在のスタンス

まず、川添さんの起業までのプロセスを振り返る。
高3の時経験した老人ホームでのボランティアが医療と経営問題を考えるきっかけとなり、慶応義塾大学看護医療学部に進むこととなる。
 
大学3年時に米国のMayo Clinicへの視察の際にたまたま入ったスーパーマーケットで“ミニッツ・クリニック”という簡易的な健康診断と治療を行っている場を見たことで、日本でもこういったアプローチができないかというアイデアを持つようになる。
 
大学時代から起業資金1,000万円を貯め、かつ経営コンサルティング会社で経営を学び、予防医療のスキルを身につけるために東京大学病院の糖尿病代謝内科病棟に勤めることになる。糖尿病患者さんのほとんどが、もっと早く病気が見つかっていれば重症化せずにすんだ人だったという。
 
高3のボランティア体験を起点としたその後のプロセスでの問題意識や経験が“もっと簡単に健診を受けられる場があったら”という課題に対するソリューションとして1項目500円で受けられる“ワンコイン健診”の具現となる。
 
起業してから自己採血に関してネガティブなスタンスが多かった。
特に医療業界は保守的である。
 
「保守的な方にこそ信用してもらえるように我々が積極的に歩み寄っていくことが重要。敵と思われる方を見方にしていくことが大切」
 
と川添さんは言う。
このことを実施し続けてきた7年だった。
 
2014年3月の厚生労働省告示第156号により自己採血検査施設のグレーゾン解消を受けて、オーソライズされたことになるが、“ワンコイン健診”を改め“セルフ健康チェック”とサービス名称を再設定した。これによってガイドライン遵守を前提として医療機関側とのコミュニケーションはスムーズになっていくこととなる。
 

実は、様々なポテンシャルの種を蒔いてきている

“セルフ健康チェック”は、スタートとなった中野店(常設)と出張やイベントなどで展開しているが、某駅ナカにて1日1,300名のチェック実績もあるという。この出張イベントは、実施2回以上のスペースが200カ所あり、各所の来店者数・属性構成・結果傾向などが細かくデータベース化されている。
 
利用者は今年4月時点で累積24万人を突破したという。このスペースを地道に開拓してきたことが大きなノウハウになってきていることは間違いないだろう。現在、1日に検査チームは5チーム対応可能とのことである。
 
 
エリア特性の分類は必須と思われるが、ここで今後も蓄積されていくであろうデータの価値はリアルなヘルスコミュニケーションのベースのひとつとして可能性があるのではと感じるのは筆者だけだろうか?エリア住民の健康意識と健康セルフチェックのパフォーマンスがリンケージしていると思うのだ。
 
この移動図書館的なキャラバン展開は、ヘルスケアサービスのひとつのビジネスモデル原型になっていくのではないかと言う人もいる。さらにケアプロの場合、エリアで健康意識のある人にダイレクトなコミュニケーションができるのである。
 
各スペースでのリピーターも存在し増えていることで、今後年間を通じた会員制サービス提供の構想もあるという。このサービスに様々な健康ソリューション商品・サービスが連動するということも可能になっていくのではないかと感じた。

今感じていること

「駅ナカでのイベントも経験してみて、駅との相性が非常にいいので鉄道会社さまと一緒に展開できないかということを考えています。駅は公共性の高い場所であり、忙しい現代人が使う場所です。駅ナカの保健室として健康相談ができる機能を持つことが、日本の駅として意味を持つのではないでしょうか。
 
今後人口減少で利用者が減っていくなかで、駅の付加価値は何だろうというときに健康を支援するということになっていてもいいのではないでしょうか。駅だからこそ救える健康があると思うのです。日本の特徴を活かした健康サービスをつくりたいです」
 
筆者ならずとも、この駅ナカ保健室アイデアの可能性を感じていただけると思うが、続けて
 
「新幹線に乗っている間に、コーヒーいかがですか?お弁当いかがですか?“セルフ健康チェック”いかがですか?というサービスもありだと思うのです」
 
と現場を数多くこなし、そこで生まれる価値の意味や広がりイメージをしっかりと掴んでいることが分かる。
 
 
ここまでお読みになっていかがだろうか?
 
日本の健康業界にとって好ましいひとつのアイデアが広がっていくことに応援したくなりませんか。
 
彼らは今後事業拡大に向けて人財を求めている。
ご興味ある方は直接ドアをたたいてほしい。
当分ケアプロの動きは見逃せないと思う。



取材後記:
川添さんと初めて会ったのは6年前頃でしょうか。
真摯なスタンスは当時と少しも変わりなかったですし、
経験に裏打ちされたアイデアには力強さも感じました。
 
 
 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2014年9月1日]