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2019.4.12
トリプル・リガーズ合同会社 代表
丸山 亜由美 氏

従来型のヘルスケア領域でのコミュニケーションはとても簡素で、とにかく真面目なイメージがありました。
クライアントからデザインやクリエイティブな人材にオーダーが行きアウトプットは生まれているのですが「いいですね!」レベルであって「えっ!それ欲しい!やってみたい!」と感じたことはありませんでした。
 
ですが、やっと「ワクワク」クリエイティブ展開をしてくれそうな貴重なプレイヤーに出会う機会をつい最近いただいたので今回ご紹介します!丸山亜由美さんです。

プロフィール
丸山 亜由美[まるやま あゆみ]
北里大学 医療検査科を卒業後、外資系製薬企業Rocheに入社。トップセールスを経て武蔵野美術大学 基礎デザイン科へ入学。在学中はドイツのケルン国際デザイン大学に留学(トビタテ留学ジャパン)。
卒業後は、Tokyo Startup Gateway 2018(東京都主催)、ヘルスケア ビジネスコンテスト2019 アイデア部門(経産省主催)にて優秀賞を受賞。2019年3月にヘルスケアに特化したクリエイティブ事業で法人設立。
 

Q1 起業の経緯を教えてください


Rocheに勤めていた時、リアルタイムPCRという遺伝子の研究機器を販売するセールスをしていたのですが、 その時の経験が起業のきっかけです。ある時、デザインがとても洗練されたマシンが出たことがあって。しかも、測定中に7色に光るという遊び心のあるオプションが付いていたんです。研究者の皆さんが「本来、実験や研究って楽しいものだよね」と言って、価格やスペックのセールストーク無しで、たくさん買ってくれました。
 
トップセールスになれた時、「製品のデザインや使っていてワクワクするということが、これからのライフサイエンスやヘルスケアにおいて新しい価値になる」と強く感じまして。それを自らが生み出せる人になりたいと思って、思い切って会社を退職し武蔵野美術大学で4年間デザインを学びました。
 
卒業してからは、NPO法人ETIC.のMakers UniversityやPanasonicが主催している100BANCHなどのアクセラレーションを受ける機会に恵まれ、2つのビジネスコンテストの受賞が契機となり、ヘルスケアに特化したアート・デザイン・イベントなどのクリエイティブ事業を行う法人を設立しました。現在は、ヘルスケア関連の企業の新規事業やイベントなどの企画・運営にクリエイティブ・ディレクターやデザイン・マネージャーとして関わらせてもらっています。

 

Q2 医療領域でもデザイン性が新たな価値を生むという実体験をされたと、あるインタビュー記事で拝見しました。とても興味深いので教えてください!


実は20才の時に2型糖尿病と診断されて、それから10年以上に渡って服薬や食事・運動療法を通じて血糖値の自己管理をしています。慢性的な疾患の良好なコントロールを続けることは簡単ではありません。でも、アートやデザインには、病気と向き合う時間にワクワクしたり気分が上がる瞬間を作り出す力があると思っています。
 
糖尿病予防の活動の一環として、血糖値が上がりやすい食べ物が光るというアートを展覧会に出展したり、ポップなデザインの血糖値測定会を開催したのですが、「うどん光ってる!食べ過ぎ注意」や「渋谷で血糖値測ってるよ!ブース可愛い」と参加者の皆さんがSNSに投稿してくれて。「自分で体調管理できることはカッコいい」というイメージをアートやデザインを通じて発信することができました。
 
患者さんにインタビューすると、医療機器を目立たないように隠れて使っていたり、ネガティブなイメージから病気であることを言い出せない方が多いんです。でも病をオープンに共有することで、周りの人が患者さんの課題を一緒に解決できたり、その結果として患者さん以外の人にとっても生活環境がより良くなったりすることがあると思います。そんなコミュニケーションのきっかけをアートから、解決策をデザインから作れるような事業をこれからも展開してゆきたいです。



Q3 丸山さんが考えるデザインの本質は意匠や表現に止まらない問題解決や行動変容とのことですが、HBWの配信を20年やってきて我々の言いたかったこともそれなんだと共感しています。なぜそう思うのかを教えてください!!!


一見するとデザインは見た目の華やかさや奇抜さに注目が集まってしまいがちですが、私は「心地よく暮らすための発明」であると考えています。これまでの医療では、早く正確に診断し、効率よく治療を行うことに重きが置かれてきましたが、近年 patient centric=患者中心の医療が提唱されるようになってきました。
 
人生100年と言われるこれからの時代は、病気の完治よりもむしろ、患者さんの自己実現が重要になってゆき、残された時間の中でパフォーマンスを最大限に引き出すにはどうすれば良いかということがテーマになってゆくと思います。慢性的な疾患と向き合いながら過ごす時間をどう豊かに生きてゆくことができるか?そのための創意工夫がまさにデザインと呼べるのではないでしょうか。
これからも、人生100年時代における新しいヘルスケアを目指す企業さまの新規事業や企画に関わりたく、新たなコラボレーション案件を募集しております!

 
インタビュアー:大川耕平

[取材日:2019年4月10日]

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