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2009.02.26 株式会社ウイングスタイル 代表取締役  羽石 雄高 氏

「運動は続けてこそ意味がある」多くの人はそう考えてはいても、実際に続けられる人はほんの一握りにすぎない。株式会社ウイングスタイルが運営するジョグノートは「運動することが楽しくなるソーシャルメディア」として2005年のサービス開始以来、順調に会員を増やしている。(2009年1月段階で約6.8万人、2008年〜2009年の一年間で倍増) 実際に体を動かすというリアルな行動を、「ネット」を使ってサポートする本サービスについて代表の羽石氏に伺った。
羽石 雄高[ はねいし ゆたか ]
動画配信会社で企画、営業やサービス企画に携わった経験を活かし、ソーシャルメディアの企画・開発を中心としたビジネスを展開する株式会社ウイングスタイルを設立。企業のWEBサイトのソーシャル化や自社運営メディアを通じ、「みんなのより充実した生活を支援する」サービスの提供をミッションとしている。

「記録」と「交流」によりモチベーションを高める

ジョグノートは、ジョギング、ウォーキング、スイミング、自転車など自分が行った運動を記録できるオンラインサービス。他の登録者と交流するソーシャルネットワークの仕組みも兼ね備えている。 「ジョグノートを立ち上げたのは、東京マラソンの少し前。世の中の流れとして、ダイエット食品や特定のサプリメントに劇的な効果を求めるというよりも、きちんと体を動かし食事にも気を配るといった方向に、体づくりの意識が変わりつつあるのを感じていました。そこで、運動をはじめた人たちがそのモチベーションをキープできる仕組みをオンライン上に作れば、より多くの人たちが体を動かすことを楽しんで続けられるのでは、と考えたのです」 現在のメインターゲットは30〜40代。1人で真面目に自分の運動記録を付け続けているユーザーもいる一方、共感できそうな人とコミュニケーションを取り合って同じ大会を目指すなど、「交流機能」をフルに活用しているユーザーも多いという。 「ジョグノートの登録者数は、土日の夜間に増えるという傾向があります。マラソン大会やイベントなどで知り合った人たちにジョグノートの存在を教えてもらって登録した、というケースが多いようです。その日自分が走ったり泳いだりした距離が毎日のグラフとなって記録され、それが自分とリンクされている人たちにも共有されます」 「つまり、誰がどれだけ行動を起こしたか、ということが一目瞭然になるため、『今日は疲れたからやめておこうかと思ったけど、ジョグノートに書き込みたいから少しだけでも走りにいくか』という具合にモチベーションを高めることができるツールとなるわけです」 また、ジョグノートの会員は現在6万8000人あまりだが、そのなかで他のユーザーと交流を持っている人と持っていない人では運動の継続に大きな差が生まれるという結果も出ている。 「1ヶ月目、2ヶ月目はあまりかわらないのですが、3ヶ月目くらいからは交流をしていない人が運動から離れてしまう割合がぐんと増えるのです。ジョグノートに限らず、よほどストイックに取り組んでいる方でない限りは、1人で取り組んでいる場合のモチベーションが続く期間はだいたい1〜2ヶ月が限度のようです」 「最近では、エンタテイメント性の高いフィットネスDVD、ハイテクを駆使したり高いゲーム性をもった健康デバイスやソフトウェアなどがたくさん提供されるようになってきており、運動を楽しく継続するための環境はかつてないほど整ってきたように思えます。それでも1〜2ヶ月過ぎると、新鮮味がなくなり結局飽きてしまい、それと同時に運動するという習慣が途絶えてしまうということがまだまだ多いと聞きます。しかしながら、それらの仕組みに「交流」というエッセンスを加えることで、継続率が確実に向上するのだということを、ジョグノートの運営を通じてかなりの手ごたえを持って感じています」

記録の最大の課題「入力の手間」をカットする

ジョグノートは現在、NTTドコモの公式サイトとして専用アプリケーションをもち、同様の仕組みを持つau SmartSportsとは連携を図ることで、GPS機能によって、ランニングやウォーキングの移動距離、コース、消費カロリーなどを自動的に取り込むことができるようになっている。 「今や携帯電話は、ジョギングやウォーキングの時にも持って出かけるものになっています。家に帰ってPCを開き、コースや距離を入力するのが面倒だという方には携帯のGPS機能を利用した仕組みは役立つと思ったんです。また、スイミングならともかく、ジョギングやウォーキング、自転車は実際に走った距離を正確に測るのが難しいもの。入力の手間をカットし、記録をしやすくすることが最大の課題だったのです」 「また、現在はi-modeだけなのですが、アプリケーションを立ち上げている最中に、カメラで写真を撮れるようになっています。ジョギングしている間に見つけたきれいな風景や、面白い店などを写真にとっておけば、ルート情報とともに、PCにアップできます」 「『今日はこんなルートを走って、こんなものをみつけた』という楽しさを仲間と共有することで、それを走るはげみにできるというわけです。今後そういったサービスを含め、携帯と連動した仕組み作りにもっと力をいれていきたいと思っています」

運動の内容を見直し、結果を出しやすくすることでさらにモチベーションを高める

記録と交流により継続力は高まるが、やはり結果を出すことが次は大切になるともいえよう。 「『走ってはいるがペース配分や頻度、走り方のコツなどが自己流のため今一歩結果が出ないのでジョグノートをやめてしまう』という人に向け、新しいサポートメニューを準備中です。体重を落としたい、肩こりを治したいなどある程度汎用性がある目的を提示して、それにあったプログラムを提供するといった仕組みを作りたいと考えています」 現在のジョグノートのサービスは、記録と交流でモチベーションを高めるものだが、新メニューでは、利用してある程度期間が経ってから、効果が上がりやすい「正しい知識」を提供するというもの。継続支援のためのシナリオができているといえそうだ。

アクティブ会員を増やしていく工夫

サービス開始以降、クチコミなどを通じて会員は増え続けている。しかし、会員登録はしたが、実際には活動していない会員もおり、アクティブ会員(現在記録や交流を楽しんでいる会員)をどう増やしていくかが課題となる。 「ジョグノートに登録して楽しく運動を続けていたものの、色々な理由から遠ざかってしまう人がいます。そうした人たちにもう一度『体を動かす喜び』を思い出してもらう仕組みを作っていきます。例えば、『お茶の間フィットネス』。季節や天候によって、ジョギングやウォーキングをするのが面倒になる場合もあります。自宅のリビングでできる筋トレやヨガなら、取り組みやすいのではないでしょうか。最初はとりあえず軽いスクワットを数回でも良いのでそれをジョグノートに記録して、自分の運動を目に見える形にすることで満足感が得られ、『明日もやってみようか』と思ってもらえればアクティブ会員を増やせる可能性があります」

今後について

「今後はジョグノート主催のイベントなど、リアルなコミュニケーションを図れる場も増やしていく予定です。健康増進やダイエットを目的とした人たちが実際に集って、体を動かす楽しみを共有し、情報交換をするなかで、一人ひとりの運動がより充実していくというサイクルを作りたいと考えています」 「また、オンライン上においても、ユーザーの誰かがリーダーになって、運動プログラムなどを提案し、それに共感した人たちが新たなコミュニティを形成していくというような仕組みも提供していきたいと思っています。正にそこがソーシャルメディアならではのメリットですね」 「リアル、バーチャルにかかわらず、ジョグノートというツールを通してモチベーションを高め、『体を動かすことが楽しい』と思える人を増やしていき、そしてその結果みんなが健康的で前向きな生活を送れるようになることが私たちのミッションだと考えています」 [ 取材日:2009年1月30日 ]