JATI研修会に参加して
今村 貴幸
昨日(2009年6月21日)JATI(日本トレーニング指導者協会)の第3回総会・研修会に参加してきた。
研修会では、スポーツ栄養学の第一人者で立教大学教授 明治製菓株式会社ザバススポーツ&ニュートリション・ラボ顧問の杉浦克己先生の「パフォーマンス向上のためのスポーツ栄養」というテーマからから始まり、国立健康・栄養研究所 運動ガイドラインプロジェクトリーダーの宮地元彦先生の「運動・体力と健康」についての講習など、多数の興味深い講習を聞くことができ非常に充実した一日となった。
宮地先生の講習の中で興味を引いた点を要約紹介すると、国民健康・栄養調査のデータから日本人の男性は20年間で30代、40代および50代ともに肥満傾向(BMI≧25)にあるが(20年間で1.5倍)、女性は20年間で30代、40代および50代ともに痩せている傾向にある(20年間で5%の減少)、ということ。
もう少し詳しく見ていくと、同じく国民健康・栄養調査から、1999年から2004年にかけて、日本人の1日の歩数は男女ともに約1000歩の減少傾向にあることが分かっている。1000歩は約10分間の運動となり、1日10分間の運動量減少は1ヶ月で約5時間分の運動量減少といえる(逆に1日10分の運動を行えば1ヶ月で5時間の運動量を確保できる)。
一方で、笹川スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査」からは、我国成人の運動・スポーツ実施率はここ10年伸びている(特にウォーキング実施者が増えている)。つまり、運動を全くしない人も減少している。先ほどの話と矛盾しているのではないかと思われるが、総合的に判断すると運動・スポーツ実施率が上がっているが日常活動量が減少しているのではないかと推察される。つまり、ウォーキングなどを積極的に行っている一方で、普段の生活ではエレベーターやエスカレーター、近場の移動でもタクシーなどを使い身体を動かさなくなってきていると考えられ、非常に矛盾したライフスタイルを日本人は送っていると考えられる。
先ほどの日本人男女の肥満痩せ傾向に戻ると、運動量が減少しているから男性が肥満傾向にあることは何となく納得できる。しかし、運動量が減っているのに女性の体重が減少傾向にあるのはなぜか?実は女性は食事制限を中心に体重をコントロールしている人が多いのではないかということが、前述のデータから考えられる。
女性は痩せている傾向にあるからメタボの心配がないと安心をしていられない。つまり、食事制限を長期間行っていることで、骨粗鬆症やサルコペニア(筋量減弱症)になる可能性が高くなることが考えられるからだ。
これらの情報から考えられることは、運動指導をする場面や運動と健康について語る時には、男女で想定される問題点が異なることを考慮していかなければならないということ。つまり、男性は、食事をコントロールして運動量を増やす必要があり、女性は、しっかり食べて運動を行うように指導する必要がある。
上記のような非常に矛盾しているライフスタイルを送っている日本人に対しては、男女別に生活全般をコーディネートできるシステムや指導者が将来的に必要となってくる可能性が高く、また国が最も求めているシステムであり人材であると考えられる。