[海外注目企業の継続支援編]米国製薬企業が注目する「服薬継続支援サービス」
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[海外注目企業の継続支援編]2017年3月21日号
≫≫≫Author:脇本和洋
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こんにちは。脇本です。
「海外注目企業の継続支援編」の2017年第3回目は
「服薬継続」をテーマにお届けします。
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---米国製薬企業が注目する「服薬継続支援サービス」
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「バランスからイノベーションは生まれない!」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 新生活と食生活に関する調査、海外 ウェアラブル市場動向など、14本
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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テーマ:米国製薬企業が注目する「服薬継続支援サービス」
製薬業界にとって長年の課題である、服薬継続。
特に痛みのない慢性疾患(生活習慣病など)の患者の場合、病気を治すことに興味はあるが、できれば薬は飲みたくないという人が多く、飲み忘れ防止の通知がくる程度のサービスでは、顧客にはあまり響かないでしょう。
米国では、「Patient Adherence and Engagement Summit」という、服薬継続をテーマにしたサミットがあるなど、様々な新しい取り組みがなされています。
上記のサミット含め最近の傾向を分析してみると、服薬が前面にでるのではなく、
・(服薬を含む)生活習慣全体の改善が継続できるように支援する
という考え方がでてきています。つまり、食事と運動と服薬を同等に考えています。
この視点で、米国製薬企業が注目する「服薬支援サービス」を紹介します。
参考>5th Patient Adherence and Engagement Summit
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1、Fit4D
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●サービス提供企業:Fitness4Diabetics, LLC
●採用する製薬企業:Bayer, GSKなど
●対象疾患:糖尿病
●サービス開始:2012年(設立2009年)
●サービス名:Fit4D
●サービス概要:製薬企業、保険会社などに糖尿病コーチングプログラムを提供する。
●サービスの流れ
まずコーチとこれまでの経緯(糖尿病の種類、状況)と、糖尿病と上手に付き合う上での課題点や改善点、目標などを探ります。
同社のコーチは糖尿病療養指導士(Certified Diabetes Educator)で、専門的な知見に基づいた指導を行います。
コーチは主に、
・食事
・運動
・モニタリング
・服薬管理
・体調管理での課題克服
・心疾患といった更なるリスクの軽減
・ストレスマネジメント、不安の解消
といった7つの視点で患者を助けるため、その人に合ったプランをデザインします。
具体的には
・電話やメールによるアドバイス、励まし
・専用プラットフォームを介してウェビナーなどの教育系コンテンツを紹介
・場合によっては課題点を克服するためのグループディスカッションを提案
など、複数のチャネルや手法を使ったコーチングを行います。
●サポート範囲:食事+運動+服薬+メンタルヘルス
●効果
同社はヒューマンタッチ(人間味のある)の側面がないと、学び、動機付け、フォローアップ、強化といった患者に必要なサポートは根付かないと考え、1対1のコーチングを重視しました。その結果、服薬アドヒアランス率が20%増加したと報告しています。
【コメント】
まとめると、糖尿病患者が「食事+運動+服薬+メンタルヘルス」が継続できるよう、パーソナライズしたプランと、人による見守りがあるサービスと言えます。
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2、Day-by-Day
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●サービス提供企業:Vida Health
●採用する製薬企業:AstraZeneca UK Limited
●対象疾患:心臓病
●サービス開始:2015年
●サービス名:Day-by-Day
●サービス概要:過去数か月の間に心臓発作を患った患者や介護をしている患者家族向けに、発作後リハビリ生活のコーチングを提供している
●サービスの流れ
1.アプリをダウンロードし、登録する
2.コーチを選ぶ
3.基礎的な情報についての質問フォームに回答する
4.電話でコーチと話し合い、課題や目標を設定する
5.基本的に週2-3回電話でコーチと話し、それ以外はメールで毎日やり取りをしながら、服薬管理、運動、食事といった健康管理を学ぶ。
6.不安点、ストレスといったメンタル面でのサポートをしてくれる
●サービス期間:30日
●サポート範囲:食事+運動+睡眠+服薬+メンタルヘルス
●サービス特徴
・コーチは服薬管理、食習慣、運動といった健康維持のためのトピック、記事といった情報コンテンツを送ってくれる
・リハビリでの不安やストレスをコーチが聞き、ストレスマネジメントしてくれる
・運動、歩数、睡眠、食事をスマホで記録する
・他の患者、介護者の体験談などが読める
●効果
デューク臨床研究所が行った臨床研究では、被験者として患者10人がDay-by-Dayコーチングを受けたところ、8人(80%)が継続して心臓リハビリプログラムを受けたいと回答しました(通常、心臓病患者のうち25%しかリハビリプログラムへの意欲を見せない)。
【コメント】
まとめると、心臓病患者が「食事+運動+睡眠+服薬+メンタルヘルス」が継続できるよう、パーソナライズしたプランと、記録、人による見守りがあるサービスと言えます。
特に、同サービスは、「介護者」へのコーチングまで行う点が特徴です。
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3、Next IT Healthcare
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●サービス提供企業:Next IT Corp.
●企業概要:ユーザーと会話ができるAI(人工知能)を使ったバーチャルコンシェルジュサービス“Alme”を提供している。同サービスは、旅行会社、保険企業、通信会社などで顧客の窓口といった対話型の業務で活用されている。
●サービス名:Next IT Healthcare
●採用する製薬企業:Teva Pharmaceutical
●対象疾患:特に限定されていない
●サービス開始:2014年
●サービス概要:
AIによる「バーチャルヘルスアシスタンスサービス」を提供。医師の処方通りに服薬できるよう、患者をアシストする。
→デモ動画はこちら
●サービスの流れ
同サービスで大切にしているのは、単なる服薬管理プラットフォームではなく、人の「ぬくもり感」を加味した服薬支援です。
・服薬支援:単なる服薬通知ではなく、ラインのチャットのような形式で「バーチャルヘルスアシスタント(VHA)」とやりとりを行います。たとえば、今日の服薬の様子、服薬していないならすぐ薬を服用できるか、無理なら後で服用できるかなどをやり取りできます。
・食事支援:服薬支援と同様に「バーチャルヘルスアシスタント(VHA)」とやりとりを行います。たとえば、食事する前に写真を送ります。するとそれにコメントをしてくれます。
●サポート範囲:食事、運動、服薬
●効果:現時点では公開されていない。現在効果を検証しているものと思われる。
【コメント】
同サービスはサイトを見る限り発展段階であり、これからさらに進化すると思われます。現段階でまとめると、患者が「食事+運動+服薬」が継続できるよう、AIによる「簡易な見守り」があるサービスと言えます。
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「服薬継続」のキーワードは「パーソナライズ」・「人」
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米国での最新の服薬支援の動き、いかがでしたでしょうか。
スポルツでは、健康行動の継続支援を「継続ドライバ」として8つの要素でまとめています。
参考>「継続ドライバって何だ?」(日経デジタルヘルス)
医療業界・健康業界ともに、今回3つの事例で紹介したよう
・ヘルスコミュニケーション(人)
・パーソナライズ
という要素に、トレンドが向かっています。この2つの要素をいかに絡ませていくかが、今後の服薬支援のカギになるとは言えないでしょうか。
【脇本和洋】
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「継続ドライバ」活用ワークショップ(社内研修)
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スポルツ独自の考え方である「継続ドライバ」を理解いただき、実際にケースにあてはめ「使えるようになる」ことを目標にしたワークショップのご紹介です。
出張ワークショップ(社内研修)形式でも行っています。
●健康・医療業界での成功のカギ「継続支援」を磨くための「継続ドライバ」活用ワークショップ【4月12日開催】
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ヘルスコーチングの検討なら
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スポルツでは、人を感じる、人が寄り添うヘルスケアサービスとしてすでに「ヘルスコーチング」のサービスを展開しています。今回紹介した3つの事例にも共通するパーソナル感、人による見守り・ぬくもりを重視したものです。
詳しくは以下を是非ご覧ください。
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「バランスからイノベーションは生まれない!」
バランンスの取れた計画にイノベーションは絶対生まれない。極度な偏りや、錯覚、思い込み、こだわりにこそその芽は隠れている。
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【3】今週の注目デジクリップ! <14クリップ>
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[1]ネオマーケティング、全国の4月から新生活を迎える20歳-59歳の男女400人に聞いた「新生活と食生活に関する調査」
ネオマーケティングが実施した調査結果によると、生活環境に変化がある際65%が食生活の乱れが気になると回答。特に20代は79%が食生活の乱れが気になることがわかった。若い年代ほど環境の変化がある際の食生活の乱れが気になる様子。(2017/03/06)
[2]コニカミノルタ、PMSなどに悩む女性に向けた健康管理サポートソリューションを事業化へ
月経周期によって精神的・身体的不調を感じる女性が自身の症状に気づき、対処方法を自己選択するサポートを行う、体調記録アプリを軸とした月経前の体調変化予測・改善支援サービス。月経に伴う体調変化を正しく理解し、女性が活躍する社会の実現を目指す。(2017/03/07)
[3]東京都、「健康と保健医療に関する世論調査」結果
保健や医療に関する情報の入手方法は「テレビ」が78%「インターネット」と「SNS」が50%。保健医療対策に関する要望では「夜間・休日診療や救急医療体制を整備」が51%で最多、など。(2017/03/07)
[4]エムティーアイ、「ルナルナ」×「ドゥーテスト」の共同妊活サポートプロジェクト発足【PDF】
夫婦のための妊活サポートプロジェクト“Hand in Handプロジェクト”を発足。第一弾アクションとして、世界で一番あたたかい取扱説明書「THE MOST LOVING INSTRUCTION MANUAL」と題したプロジェクトムービーを公開。(2017/03/08)
[5]パナソニック、病院・施設向けリハビリナビゲーションシステム「デジタルミラー」の機能を拡充
ミラーと映像を組み合わせ、トレーニング・計測・個人別データ管理が1台でできるリハビリナビゲーションシステムの機能を拡充し「デジタルミラー Ver.5」として出荷を開始。今回のバージョンアップでは、サイネージ機能を追加。(2017/03/10)
[6]セコム、NTTドコモの「ドコモIoT/LPWA実証実験環境」にパートナー参加
セコムの「安全・安心」に関わるサービス、そしてNTTドコモの実証実験環境と運用ノウハウを融合させて、セキュリティ、見守り、設備の維持・保守といったサービス領域で、実用化に向けたさまざまな可能性を試行していく。(2017/03/13)
[7]アイセイ薬局、アイセイ薬局30店舗でドコモ・ヘルスケアと共同テストマーケティング【PDF】
女性向けアプリと連動した健康関連商品の店頭販売スキームの構築を目的に、テストマーケティングを開始。第1弾として、株式会社生活の木が提供するアロマトリートメントオイルやハーブティーなどの商品プロモーションを開始。(2017/03/13)
[8]経済産業省近畿経済産業局、「中小企業における健康経営のススメー健康経営の実践に役立つ事例集ー」を作成
本事例集では、近畿地域の中小企業による具体的な健康経営の実践事例を広く紹介するとともに、健康経営の実践に活用できる製品・サービス及び支援制度等の情報を提供することで健康経営に関心を持つ中小企業の取組みを支援する。(2017/03/13)
[9]日経テクノロジーオンライン、「数年後のあなたの容姿は?IoTで健康意識高める決定打」2026年の健康サービス:将来の自分の見える化で動機付け
調査レポート「テクノロジー・ロードマップ 2017-2026<医療・健康・食農編>」で「健康状態のスコア化/可視化」を執筆した奈良県立医科大学 産学官連携推進センター 研究教授の梅田氏は、これからの10年間で将来の自分の容姿をアバターで可視化することが当たり前になっていき、健康管理サービスの継続性の問題を解決する決め手になると見ている。(2017/03/13)
[10]ITpro、「社員が健康でないと恥ずかしい」、テルモが活動量計でメタボ対策
テルモは、体温計や血圧計といった一般向け健康管理製品の販売、医療機器や医薬品も幅広く手がけている以上「そもそも社員が健康でないと恥ずかしいし、テルモが成長するには社員が健康でないといけない」(広報室の橋本淳史氏)として、2014年度から本格的に健康経営を実施している。(2017/03/14)
[11]Withings、Nokiaブランドに今夏統合へ
Withingsは、2017年夏をめどに体組成計、活動量計、スマートHDカメラを含む製品群をNokiaブランドに統一すると発表。Nokiaブランドのスマートデバイスは2017年夏より販売開始。(2017/03/09)
[12]2016年のウェアラブルデバイス出荷は25%増-Fitbitが首位維持
IDCが世界ウェアラブル市場に関する最新レポートを公開。スマートウォッチやフィットネストラッカーなどウェアラブルデバイスの2016年第4四半期の出荷台数は前年同期比で16.9%増加し、過去最高の3390万台に達した。2016年通年の出荷台数は25%増の1億240万台となった。(2017/03/10)
[13]アルツハイマー病および認知症のスクリーニングに役立つアプリ『CANTAB Mobile』
Cambridge Cognition Holdingsは、認知障害の初期段階を検出する機器「CANTAB Mobile」がFDA(米国食品医薬品局)の501(k)認可を取得したことを発表。「CANTAB Mobile」は、誰でもどこでも実施可能な10分程度のポイント・オブ・ケア・テスト。(2017/03/14)
[14]mHealthwatch注目ニュース:エムティーアイ、ルナルナ通信Vol.30「職場での婦人科検診制度について」
「ルナルナ」が多くの利用者に継続的に使われている理由のひとつが、今回の「ルナルナ通信」でわかるように、利用者の声、意見にしっかりと耳を傾け、把握している点にあると思う。(2017/03/21)
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