[ヘルスコーチングの視線編]ヘルスコーチングの可能性を探る:「医療現場でのヘルスコミュニケーション」
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[ヘルスコーチングの視線編]2017年3月28日号
≫≫≫Author:里見将史
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この「ヘルスコーチングの視線」では、ヘルスコーチングのアプローチについて現場の方々の生の声をインタビュー形式でご紹介しています。
さて、今号では、医療の現場で患者さんのサポートはもちろん、看護師を育成する立場で活躍されている国立看護大学校の講師で看護師の藤澤雄太さんに医療現場でのコミュニケーションについてインタビューさせていただきました。
医療現場でのコミュニケーションの課題や動機づけのやり方などの患者さんとのコミュニケーション、そして看護師を育成する立場として学生に対してどんなヘルスコミュニケーションを大切に伝えているのかなどについて、ヘルスコーチングの視点でお聞きしました。
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---ヘルスコーチングの可能性を探る:「医療現場でのヘルスコミュニケーション」
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「不満の捉え方」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 コンディショニング研究会、海外 ウェアラブルデバイス動向など、13本
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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テーマ
ヘルスコーチングの可能性を探る:「医療現場でのヘルスコミュニケーション」
国立看護大学校 講師
看護師 藤澤雄太さん
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1、藤澤さんのこれまでの看護師としてご経験や専門領域などをお聞かせください。
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(藤澤氏)
看護師としては、循環器疾患や呼吸器疾患の患者さんが入院される病棟や集中治療室で勤務しました。
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2、藤澤さんが「コーチング」や「動機づけ面接」などいろいろなコミュニケーションを取り入れて実践されているのはどんな理由からですか?
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(藤澤氏)
看護師として患者さんの退院指導をしていたのですが、「こうすべき」という生活指導をしても行動を変えることができない患者さんが再入院してきていました。再入院する時は多くの場合病状が増悪した状態でしたので、自分の退院指導や患者支援の能力が不十分であり、その部分を高めなくてはいけないと思ったことがきっかけです。
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3、生活習慣病の患者さんの場合、治療はもちろん患者さんご自身の生活習慣を変えることが病気の改善はもちろん重症化を防ぐ意味でも重要な点になってくると思いますが、これまでの患者さんとのコミュニケーションでどんな点が課題だと感じていましたか?
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(藤澤氏)
課題としては2点あると感じています。
1つ目は、医療者と患者の関係に上下関係があることです。これは両者がこの関係性を作り出している可能性もあるのですが、まずは医療者がこの関係性を改善することを意識する必要があると思います。
2つ目は,患者さんの中から、行動変容することの意義を引き出すコミュニケーション技術が不十分であるということです。特に看護学の教育の中では、「コーチング」や「動機づけ面接」といったコミュニケーション法を学ぶ機会は極めて少ないと言えます。
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4、患者さんとのコミュニケーションで特に意識すること、注意すべきポイントはどんな点だと藤澤さんは感じていますか?
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(藤澤氏)
注意すべきポイントはいくつもあるとは思いますが、技術以前の前提として、相手は変わる力を持っている、という行動変容の可能性を理解することではないかと思います。
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5、患者さんの中にはなかなか「動機」をみつけられない方もいると思いますが、どんなことがポイントになってくると思いますか?
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(藤澤氏)
患者さんへの共感がどれだけできるのかが大切になると思います。
偏見やレッテル貼りをせず、患者さんの今の感情や価値観に焦点を当てて、どんな考えでいるのかについて正確に理解することがポイントだと思います。このプロセスにおいて、患者さんは動機に気づく可能性があると考えます。
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6、生活習慣の改善では「行動の継続、習慣化」がポイントになってくると思いますが、どんなアプローチ、サポート、声かけが必要だと思いますか?
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(藤澤氏)
先に述べましたように、ひとつはどのような考えで行動する必要があると考えているのか、あるいは、行動をしているのかを正確にこちらが理解するということです。
そのうえで相手から目標行動を引き出し、具体化させることが大切だと思います。どうしても医療者が患者にとって効果的であると考える目標を提示してしまいそうですが、その気持ちを抑えて、相手がやりたい、やれそうだと思う具体的な目標を作ってもらうことが必要だと思います。
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7、看護師を目指す学生さんに対して患者さんとのコミュニケーションではどんなことを意識して指導されているのですか?
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(藤澤氏)
患者さんの言動から、「きっと患者さんは今こういう気持ちなのだろう」と予測して、そこで理解をやめてしまうことが多いと思います。そうではなくて、本当に自分の推測通りであるのかを確認しながら、患者さんの感情や価値観を十分に理解する必要があること、またそのための方法について指導しています。
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8、これからの医療の現場でもヘルスケアのサービスでも「人」の存在が益々注目されていくと思いますが、今後医療の現場でのコミュニケーション、サポートはどのように変わっていくと思いますか?
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(藤澤氏)
今後は、医療の場が病院から地域にシフトしていきます。今までは、病院の中で医療者の指導に患者が従うような関係が強かったと思いますが、今後は医療者が患者さんの自宅に訪問することになります。患者さんが自分らしくある場所で、指導型のコミュニケーションはあまり効果的ではない可能性がありますので、より「コーチング」や「動機づけ面接」で用いられるコミュニケーションスタイルが求められると思います。
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9、行動の継続にフォーカスした「ヘルスコーチング」のコミュニケーションは、医療現場でどのように活かせると感じていますか?また、藤澤さんご自身としてどのように取り入れていきたいですか?
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(藤澤氏)
行動の継続は非常に重要です。そしてその前段階にある「行動の開始」も重要です。行動の開始の仕方によっては、継続が難しくなると思いますので、習慣化を目指すためにも、行動開始に向けた医療者の関わり方がまず鍵となるでしょう。
医療現場では、外来での診察、告知の場面、症状のコントロール、退院指導、クリニックでの生活指導での活用ができると思います。現在は、自分自身が「動機づけ面接」や「コーチング」を使ったり、普及する立場にありますので、これらの場面での活用方法を提案できればと思っています。
以上が、藤澤氏にインタビューさせていただいた内容です。
前回のこのメールマガジンの中でもご案内させていただきましたが、ヘルスコーチの手法を取り入れた事例等をご紹介するイベントが4月に開催されます。
『これからの健康経営を牽引するモバイルヘルス』
ヘルスケアITにて4月20日(木)A会場13:00より開催します。
13:00-13:30
モバイルヘルスの成功要因(海外事例紹介)
株式会社スポルツ 渡辺武友(mHealth Watch)
13:45-14:35
株式会社フジクラの健康経営による効果
株式会社フジクラ 浅野健一郎
14:50-16:20
動かない従業員を自ら行動させる!モバイルヘルスによる新たなアプローチ
モデレーター:渡辺武友、浅野健一郎
プレゼンター:ドコモ・ヘルスケア株式会社、帝人株式会社、ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社、キーウェアソリューションズ株式会社、株式会社ウィット
講演をご聴講されるには事前登録が必要になります。
上記3講演が一連のテーマとなりますので、3講演へのお申込みをお願いします。
来場登録を行い、セミナープログラムページより3講演にチェックを入れて「お申し込み」に進んでください。
人数制限があり、既に多くの方々にお申込みをいただいている状況ですので、お早めにお申し込みください。
セミナープログラム
来場事前登録
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「不満の捉え方」
不満を不足と置き換え、補足して解決に向かえ!!
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【3】今週の注目デジクリップ! <13クリップ>
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[1]ティップネス、「コンディショニング研究会」協賛のお知らせ【PDF】
コンディショニング研究会は“日常生活におけるコンディションを科学し、明日の向上を目指す”ことを目的として発足。昨年「全国コンディショニング意識調査」等を実施し、生活者におけるコンディショニングの重要性への認識を深め、今回の趣旨に賛同し協賛に至った。(2017/03/15)
[2]京都大学、歩き方と歩数の累積負荷が変形性股関節症の進行に影響
建内宏重 医学研究科助教、市橋則明 同教授らの研究グループは、患者一人一人の歩き方の違いに影響される一歩ごとの股関節への負荷と、日常生活や仕事による一日の活動量(歩数)とを掛け合わせた新たな指標である「股関節累積負荷」を考案し、変形性股関節症の進行との関係を調査した。(2017/03/15)
[3]北日本銀行、ケアプロ株式会社とビジネスマッチング契約を締結【PDF】
健康づくりを通じた地域の活性化を目的に、ケアプロ株式会社とビジネスマッチング契約を締結。ケアプロと提携する金融機関は、同行が初。(2017/03/16)
[4]日経デジタルヘルスより、ヘルスケア産業の最前線2017:「化粧」で高齢者の心のフレイル対策ー資生堂が約40年継続ー
資生堂は、1975年からボランティア活動として「身だしなみセミナー」を特別養護老人ホームで開催してきた。現在では事業化しており、科学的根拠に基づく「化粧療法プログラム」として提供。同社は、身だしなみセミナーを健康寿命延伸に向けた社会性や心のフレイル対策として行っている。(2017/03/16)
[5]リクルートメディカルキャリア、アルムと連携しICTを活用した「医療関係者間コミュニケーション」と「地域包括ケアシステム」推進サービスの提供を開始
リクルートメディカルキャリアとアルムは、両社それぞれの強みを活かした協働体制を構築し、2017年4月より複数の地域において順次サービス提供を開始。医療関係者間連携と地域包括ケアシステムの推進を目指す。(2017/03/17)
[6]日本ハム、機能性表示食品「Healthy Kitchen グリーンラベル減塩ロースハム、ハーフベーコン」新発売
グリーンラベルシリーズが機能性表示食品としてリニューアル。塩分30%カットのグリーンラベルシリーズに、血圧が気になる人に適した機能があるγーアミノ酪酸(GABA)を配合。(2017/03/17)
[7]三井住友海上火災保険、ココロとカラダの健康づくりを支援するサービス「ココカラダイアリー」の提供を開始【PDF】
スマートフォン向けアプリ「スマ保」の新コンテンツ。本サービスは、ストレス状態や歩数の測定、体重等の健康データ、食事内容の記録をとるもの。また、法人向け専用Webサイトでは、集計した従業員の健康データを閲覧できるため、健康経営の推進にも活用できる。(2017/03/21)
[8]第一生命保険、“健やかに生きる、幸せになる”をコンセプトに健康第一プロモートを始動【PDF】
本プロモートでは、一人ひとりに寄り添う伴走型の「健康増進サービス」を提供し、順次サービス内容を充実していく。第一弾スタートキャンペーンでは、スマホ専用アプリ「健康第一」を無料で一般公開し、お客さまの健康増進をサポートしていく。(2017/03/21)
[9]HBWキーパーソンに聞く、BASE PASTAをリリースしたBASE FOODの橋本舜氏にショートインタビュー
「主食をイノベーションして、健康を当たり前にする」というビジョンのもとに『BASE PASTA』を開発し、今年2月にリリースしたベースフード株式会社代表取締役 橋本舜さんにインタビューをさせていただきました。(2017/03/24)
[10]調査:患者の64%が健康管理のためにデジタル機器を使用
Humanaの健康管理企業Transcend Insightsのレポートによれば、患者の大多数は、高品質なケアを提供するためには、場所や種類を問わずに全ての医療健康施設が自分たちの完全な病歴にアクセス可能なことが重要ということが示されている。(2017/03/15)
[11]Google傘下のDeepMind、健康データを安全に追跡する技術を開発
DeepMindは、患者の健康データを安全に追跡するためにブロックチェーンに似た新技術を開発中。目的は、病院そして最終的には患者が、データがどこでどのように使用されているかをリアルタイムで把握できるようにすること。(2017/03/16)
[12]手首や胸に装着するだけ!大事に至る前に脱水症状を発見するウェアラブルデバイス
米ノースカロライナ州立大学のASSIST工学研究センターの研究グループでは、重篤な状態へと発展する前に、脱水症状を検出可能なウェアラブルデバイスを開発するプロジェクトが進行中。(2017/03/17)
[13]mHealthWatch注目ニュース:Salesforceを利用してメディケイド患者のケアコミュニティを提供
Mount Sinai Health Systemは、SalesforceのCRMプラットフォームを利用して、メディケイドの見直しと一緒に、2015年に創設された「Performing Provider System(PPS)」のなかで、メディケイド加入者の医療を管理している。(2017/03/27)
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