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【先進事例分析】投資金額600億円をかけた健康・医療ポータル出現
      「Revolution Health(レボリューションヘルス)」

      ー 健康行動の『つながり』を大切に考える ー

         不満をいかにして解決しているか?

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「健康・医療ポータル」は、健康医療に関する総合的な情報をもち、
健康医療情報を調べる際の玄関(ポータル)となりうるサイトをさします。

日本ではヘルスクリック、ヤフーヘルスケア、米国ではWEBMD、MSN Health
などがその代表格です。

米国では、WEBMDが圧倒的なシェアを占めていましたが
ここにきて、約600億円という投資金を使い、
この市場に参入する企業が現れました。

それが2007年1月に参入した「Revolution Health」。
その後、ユーザー数も好調に増えている模様です。

そこで今回は、

・「Revolution Health」が提供する新しい価値
・ビジネスモデルの工夫

について考えます。


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Revolution Healthの概要
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■企業概要

・運営企業:Revolution Health Group LLC.

・サイトURL:http://www.revolutionhealth.com/

・設立:2007年1月

・事業コンセプト(表記)
Your home for health and balance(ヘルス&バランスのための拠り所)

・ミッション(表記)
Revolution Health helps people take control of their health
so they can live their very best
(ベストな生き方ができるよう個人の健康管理をサポート)

・経営陣
AOLの共同創始者Steve Case氏が、会長とCEOを兼務。
法人向けソフトウエア企業経営で実績をもつTim Davenport氏が社長。
また、共同出資者として、Netscape社の元CEO、Jim Barksdale氏、
HP社の元CEOのCarly Fiorina氏、元国務長官Colin Powell氏など
米国の財界・政界の著名人が揃っていることでも注目を浴びている。

・業績
2007年12月の同社発表によるとRevolution Healthは、
月間ユニークユーザー数、1200万人以上、月間ページビュー2億以上を
達成。世界第2位の健康情報資産を持つサイトとなったと述べている。

・サービスの概要:
個人向け健康・医療のポータルサイト。最新の医療情報・オンラインツール
やプログラム(125種類以上)、専門医検索・患者同士コミュニティ、
専門家のアドバイスサービスなどを無料提供(個別アドバイスは有料会員制)


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健康・医療ポータルサイトに対する生活者の不満
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「Revolution Health」が提供する新しい価値は何か?

を考えてみたいと思いますが、その前に中心利用者層と思われる主婦層に、
日本の代表的な健康・医療ポータルサイトをいくつか見てもらい、
不満点を聞き、その声を5つに整理してみました。

<主な不満点>

1)健康の「知識」だけに偏り、具体的な「行動」に移せる内容が少ない
2)専門性の高いテーマ型ポータルサイトが数多く存在する中で、個別テーマ
 ごとの内容は薄くなる健康・医療ポータルサイトは使わない
3)患者や体験者などの「生の声」が少ない
4)情報が多すぎて自分に合う情報を見つけるのに時間がかかる
5)行動して、うまくいかないときの情報が少なすぎる
 (うまくいく前提での情報が多い)

インターネットが普及し始めた頃は、幅広いテーマの健康知識を無料で見る
ことができるだけでも価値があったでしょうが、それが当たり前になった今、
生活者の不満は数多く生まれ、それに日本の健康・医療ポータルサイトは十分
対応できていない、そう見ることができるでしょう。


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「Revolution Health」が提供する新しい価値
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では、今回注目した「Revolution Health」は、上記の不満(特に1ー3)に
どの程度対応しているのでしょうか。

■不満1への対応)具体的な「行動」に移せる内容が少ない

自分が知りたいテーマ(ダイエット・高血圧・糖尿病など)で検索して、
基礎知識が得られるのは当然のことですが、
「Revolution Health」には、知識だけでなく「行動につながるヒント」
が数多くあります。

例えば「ダイエット」では、以下のような具体的な行動につながりやすい
情報を提供しています。

・プログラムの評価情報:
ウエイトウォッチャーズやアトキンスダイエットなど有名プログラム
16種類の内容・サポートレベル・費用などを比較解説している。
http://www.revolutionhealth.com/healthy-living/weight-management/choose-diet/weight-watchers

・ダイエット方法の選び方:
ライフスタイル別に5種類のタイプを提示。外食が多い人、運動する時間が
ない人など、自分に合いそうなダイエット法をアドバイスしている。
http://www.revolutionhealth.com/healthy-living/weight-management/what-type-of-dieter/

・各種健康プログラム:
フィットネス・ダイエット・糖尿病患者向け・ストレス緩和・アンチエイジン
グなどをテーマに、「行動に移す」ことを促すことを狙いに、以下のような
コンテンツを保有しています。

・個別の食事&運動プラン
・情報カスタマイズ可能なマイページ
・To-Doリストつきのメールニュース
・個別アドバイス
・オンラインツール


■不満2への対応)「個別テーマ」ごとの内容は薄くなる健康・医療ポータル
         サイトは使わない

「Revolution Health」では、信頼と実績のある複数の医療機関
(MayoClinic.com、Cleveland Clinicなど)のコンテンツが、
深い内容で提供されています。

※コンテンツ提携先一覧
http://www.revolutionhealth.com/about/content-sources

また、各トピックの症状別解説・治療方法・日常生活のヒントなどは、
科学的裏づけに基づいた深い内容となっています。
http://www.revolutionhealth.com/conditions/


■不満3への対応)患者や体験者などの「生の声」が少ない

「Revolution Health」には、現在以下の4種類のコミュニティがあり、
同じ悩みをもつユーザー同士の交流や情報交換ができます。

1)個人&専門家のブログ
2)テーマ別100種類上の掲示板
3)目標達成グループ(新コンテンツ)
4)ライブチャット

1)の個人&専門家のブログでは、自分のブログページを持つことができ、
日々の日記や健康管理の様子を書きながら、他のユーザーと交流することが
できます。

またサイトの医療専門スタッフによるブログは、10種以上を超えており、
栄養士・小児科医など専門家の書いた記事を読むこともできます。

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ビジネスモデルの工夫
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一方、気になる同サイトのビジネスモデルですが、

・広告費
・会費(一部)
・販売手数料
が柱になっています。
これは、他の健康・医療ポータルサイトと変わりません。

ただ、表にはでていませんが、同社が狙っているのは

・医療健康データの集約による、プラットフォーム化ビジネス

と推測しています。具体的には様々な記録ツールを生かし、
莫大な量の個人の医療健康データが集まることで、データ解析した情報
として、企業にマーケティングデータの形で販売するビジネスモデルです。


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これからの健康・医療ポータルに求められるもの
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■生活者の不満に的確に対応している「Revolution Health」。
そこから見えてくるヒントは何でしょう。

キーワードとして今回は、

・「健康行動の『つながり』を大切に考える」

という点をあげたいと思います。

具体的には、不満1の「具体的な『行動』に移せる内容が少ない」ことへの
同社の対応に見られるよう、「知識から行動に移せる」ことを重視している点
です(健康オンラインショップdrugstore.comとの提携により商品を紹介して
もいます)

日本の健康業界が抱える課題のひとつに、

・健康行動の「つながり」を無視した、単一商品・サービスの提供

というものがあります。この課題に対する解決事例として参考になります。


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