「体験情報共有型」患者コミュニティ「patientslikeme」(その2)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【先進事例分析】
───────────────────────────────────
「体験情報共有型」患者コミュニティ「patientslikeme」(その2)
ー Progress share、Solution share、Life-value share
という3つの価値を提供 ー
───────────────────────────────────
前号では、「体験者・成功者」の声がウェブ上で時系列、定量的に整理され、
ソリューション型の情報発信をしている点に注目が集まっている
コミュニティ事例として「patientslikeme(ペイシャンツ ライク ミイ」の
概要を紹介しました。
今号では、同サイトのビジネスモデルとともに、患者にとっての価値を
考えてみます。
※バックナンバー(前号):
「体験情報共有型」患者コミュニティ「patientslikeme」(その1)
http://www.healthbizwatch.com/mailmagazine/unique/229.html
.........................................................................................................
「patientslikeme」の概要
.........................................................................................................
■運営企業:PatientsLikeMe, Inc.
■サイト名:patientslikeme.com
http://www.patientslikeme.com/
■企業(サイト)設立:2004年
■ミッション
患者同士の助け合いで、日々を充実して過ごしてもらうこと
(Patients healping patients Live better every day)
■注目度
・Business 2.0 Magazineが選んだ「世界を変える15社」に選出(2007.7)
・Ars Electronic Websiteの「community」カテゴリーで最高技術賞を受賞
(2008.9)
・FierceHealth ITで健康IT分野の最高イノベイティブ賞を受賞(2007.4)
■ベンチャーキャピタル
CommerceNet、Omidyar Network、Collaborative Growth & Seed LLC、
Invus, LPの4社。直近では、Collaborative Growth & Seed LLCが2007年5月に
5億円を投資。
.........................................................................................................
同サイトのビジネスモデル
.........................................................................................................
現在のところ、patientslikemeの収益は、参加者が記入したデータを定量的に
分析し、そのデータを販売することが中心です。
主な販売先(Data Sharing Partner)は下記となっています。
■製薬企業
Avanir Pharmaceuticals、Novartis Pharmaceuticalsという米国を代表する
製薬企業が契約。
■NPO機関
Accelerated Cure Project、Myelin Repair Foundationが契約。
MS(脱髄疾患の一種)で発生する症状の対策を研究する国が運営するNPO。
■研究機関
Forbes-Norris Pacific ALS Centre、Penn State Milton S. Hershey Medical
Center、The University of Wisconsin が契約。ALS(筋萎縮性側索硬化症)を
25年研究している機関医療の現場と研究機関の橋渡しをする。
■医療機器メーカー
具体的企業名の記載はないが、数社が契約している模様。
ビジネスモデルのその他の特長として、ALSの場合、米国の患者数の約3分の1
が同サイトに登録をしており、ALSを研究開発する企業側から見れば、なんら
かの形で同サイトとの接点を模索したくなるビジネスモデルになっています。
※Data Sharing Partner一覧
http://www.patientslikeme.com/about/partners
.........................................................................................................
患者にとっての価値
.........................................................................................................
同サイトがターゲットとしているような難病患者(及びその家族)
の不安としては、下記が予想されます。
●今後の進行(症状の変化)が読みにくい不安
●依然治療法が確立されてなく、効果的な治療法がわからない不安
(様々な意見を参考にしたい)
●家族としてどのように情報収集したらよいかわからない
●励ましあえる自分と同じ境遇の人(家族)が近くにいない
同サイトは、患者一人ひとりが、自分のデータ(症状、対策、周辺症状)を
時系列的に記録することで、定量分析されたデータとしてオープンに
なり、それをコミュニティ参加者が見ることができるというものです。
これにより上記の不安を解消するだけでなく、将来への期待感をもたせる
3つの価値を提供しているといえます。
価値1)Progress share(プログレスシェア:進行の共有)
他の患者の症状の変化(ステージ)がヒストリー形式でわかり、患者にとって
今後の進行を予想でき(先読みでき)、本人、家族として準備ができる。
価値2)Solution share(ソリューションシェア:効果的な対策の共有)
他の患者の対策を総合的に、定量分析結果としてわかり、成果の確率をあげる
いろいろな方法がわかる(学びと気づきがある)。
価値3)Life-value share(ライフバリューシェア:人生観の共有)
患者同士で知り合える工夫があり(年齢別、居住地別などで検索ができる)、
その後の人生をどう捉えるかが参考になり励まされる。
.........................................................................................................
スポルツの視点
.........................................................................................................
■同サイトでは、患者のデータは研究機関にも送られ、研究データとして今後
の人のために役立つようになっています。これにより人のためになっている
貢献感がうまれ、そのこと自体が生きがいにつながる工夫もしている点にも
注目です。
■すでに日本でも健康コミュニティは数多くでてきていますが、情報交換
(情報を流しあう)だけのものから今後は一歩進んで、参加者全員からの情報
を、編集し意味あるメッセージとして発信するコミュニティ、
つまり「情報価値レベルの高いコミュニティ運営」が必要になると考えます。
■そうした意味でも、今後の健康コミュニティを考える上で、
・Progress share
・Solution share
・Life-value share
という3つの情報価値をあげる方法は、新しい切り口になるとはいえないで
しょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━