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海外健康ネットサービスの動向
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健康分野のネットサービスは日本でも90年代後半に開始以来、様々な取り
組みがなされ、今では会員が100万人を超えるサービスが現れるなど、
新たな発展ステージにきていると考えています。

そこで今回は、一歩先をいく米国の健康ネットサービスを5分野に分け、
それぞれの動向を整理することで、健康ネットビジネス全体を俯瞰します。

健康ネットサービス紹介の5分野は、下記です。

1.健康情報サイト
2.健康プログラム提供サイト
3.健康コミュニティサイト
4.健康動画コンテンツ配信サイト
5.健康記録サイト


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1.健康情報サイト
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■動向

健康情報サイトは、健康全般に関する知識・実践に関する情報を提供するサイ
トのこと。1998年にスタートしたWebMDがトップ企業。また、2002年
に設立しその後書籍とウェブを連動させ急速に拡大しているEveryday Health
に注目しています。

最近では成功者の体験を豊富に掲載したり、動機付けのためにダイエット後の
イメージ写真を作成するなど、よりアプローチが具体的になった健康情報
サイトが増えています。


■代表事例紹介:WebMD

・設立:1998年
・URL:http://www.webmd.com/
・売上:382億円(2008年)
・ターゲット:医師、健康に興味のある一般の人
・提供価値:
 権威医師の最新治療法がわかる(医師向け)
 信頼性の高い情報が幅広く見つかる(一般向け)

・サービス
ー医師向け健康、医療ポータルサイト
(全米の各分野の権威ある医師がコラムや最新治療法を紹介するサイトなど)
ー一般向け健康、医療ポータルサイト
ー企業向けコンテンツのライセンス販売
ー病院、医師向け書籍、雑誌出版

・収益源
ー医師向けサイト広告費(推定200億円)
ー一般向けサイト広告費(推定75億円)
ー企業向けコンテンツライセンス費(約89億円)
ー病院、医師向け出版費(16億円)

・ビジネスの特長
医師向けに有益な情報を提供するサイト運営を核に、近年ではそれらを従業員
の健康管理情報としてカスタマイズし企業に提案し新しい収益源を開拓して
います。


■その他企業、参考情報

・Everyday Health(100億円:2008年)
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/227.html
・RealAge(14億円:2007年)
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/215.html

・ダイエットの成功体験を売れる「Zodbod」
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/245.html
・自分の理想の姿が見られる「WeightView」
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/245.html


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2.健康プログラム提供サイト
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■動向

健康プログラム提供サイトは、目標やライフスタイルを入力すると、その人に
合ったプランを提示するサイトのこと。ダイエットセンタートップ企業の
「WeightWatchers」が展開するネットプログラムが最大、続いてeDietsです。

eDietsは1997年に設立し2004年は45億円の売上でしたが、その後、
24億円まで降下、現在は宅配企業と組み、リアルの商品との連動で新たな
活路を見出そうとしています。

また最近の注目はKeasです。ヘルスボルト、グーグルヘルスと連動し健康デー
タから様々なプログラムを提示し、飽きにくく健康行動が続きやすい点が特長
です。


■代表事例紹介:eDiets.com

・設立:1997年
・URL:http://www.ediets.com/
・売上:24億円(2008年)
・提供価値:様々なダイエットプログラムから選べる、成功者となり教えるこ
 とができる

・サービス
ーライフスタイルにあったプログラム提案
(プロフィール、食生活状況などを入力すると1週間ごとのミールプランを
 提案)
ーメンタープログラム
(プログラムを8週間以上継続した実績などがあるとメンターとして活動でき
 会員更新費が無料になる。また、ダイエットを継続できている体験を初心者
 に教えることで「自分自身のダイエットが継続できる強い動機」になって
 いる)

・収益源
プログラム利用料、宅配食販売

・ビジネスの特徴
ダイエットプログラムはPlanだけをサポートするものでしたが、数年前からダ
イエット食品の宅配を行っている。プランだけで終わるのでなく、PDCAを
確実に回し、ダイエット行動のプロセス全体をカバーしています。


■その他企業、参考情報

・WeightWatchers(ウエブプログラムの売上186億円:2008年)
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/208.html
・Keas
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/251.html
・過食に対するアドバイスを行う「ShrinkYourself」
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/220.html


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3.健康コミュニティサイト
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■動向

健康コミュニティサイトは、健康づくりという同じ目的において相互に学習
しながら成長していくサイトのこと。ダイエット、糖尿病など疾患ごとに分か
れたコミュニティだけでなく、健康分野のスタッフ同志のコミュニティもあり
ます。

最近では、コミュニティで集めたデータを解析することで新しい価値を提供
するとともに、データとして企業に販売する新しいビジネスも現れています。


■代表事例紹介:Sermo.com

・設立:2006年
・URL:http://sermo.com/
・売上:8.5億円
・ターゲット:医師
・提供価値:医師同士で様々な情報交換ができる

・サービス
ー米国No1の医師(開業医)向けSNSサイト
ー医師同士が情報交換したり、質問&回答を受けられるサービス

・収益源
医師の最新情報を得たい大手企業からの利用料


■その他企業、参考情報

・糖尿病患者向けコミュニティDlife.com(3.5億円)
http://www.dlife.com/
・データを企業に販売する「patientslikeme」(0.4億円)
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/230.html
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/231.html
・運動系コミュニティ「traineo.com」
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/191.html


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4.健康動画コンテンツ配信サイト
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■動向

健康動画コンテンツ配信サイトは、健康に関する動画コンテンツ配信で収益
をあげるサイトのこと。主に専門家、患者、生活者に対する健康教育として
用いられます。


■代表事例:HealthStream, Inc

・設立:1990年
・URL:http://www.healthstream.com/
・売上:51.6億円(2008年)
・ターゲット:病院の一般職員、医師、看護婦など
・提供価値:ネット上で資格取得に必要な知識が身につく

・サービス
ー病院(一般職員、医師、看護婦、救急医療専門家、放射線技師など)向けに
 CME用eラーニングコンテンツの配信
ーコンテンツは60コースと豊富

※CME(Continuing Medical Education)
米国の医療従事者(医師や検査技師など)に義務づけられる、継続的な医学
教育。免許・資格の更新時には、この受講証明が必要


■その他企業、参考情報

・健康コンテンツ配信A.D.A.M. (29億円)
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/80.html
・院内健康教育コンテンツ配信Healthvideo他
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/244.html


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5.健康記録サイト
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■動向

健康記録サイトは、健康づくりの内容や結果を記録できるサイトのこと。
食事、運動の記録を簡易にできる様々な工夫がみられます。また最近の傾向と
しては、単に健康の記録をするだけでなく、家族・社会・趣味などライフスタ
イルを含めた幅広い記録ができたり、記録結果から将来を予測するなど、記録
の価値化が見られます。


■注目事例:HealtheHuman

・設立:2007年
・URL:http://www.healthehuman.com/
・売上:0.1億円
・提供価値:社会とのふれあいの記録が残せる
・サービス
ー体重、食事、運動、サプリメント摂取などの記録
ー心の健康に影響の大きい職業経験、ボランティア経験、近所の人との交流
 などの社会的な健康づくりの記録ができる
ーPDFでプリントアウトし、見えるところに置くことに配慮する機能あり


■その他企業、参考情報

・ビジュアルフードダイアリーFigwee
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/236.html
・MyFoodDiary.com
http://www.myfooddiary.com/


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スポルツの視点
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■今回は、米国の健康ネットサービスの概況といくつかの代表・ユニーク事例
を紹介しました。その注目点をキーワードとしてまとめます。

・収益モデルの多様化
・テーマの細分化
・情報の整理と個別化提案
・サービスプロセスの範囲の見直し
・データの価値化
・健康教育(ヘルスエデュケーション)
・社会性を絡めた健康の位置づけ

■日本ではまだ米国のような事業規模に相当する健康ネットサービスは少なく
発展期にあると言えます。次回のメルマガでは、提供価値、ビジネスモデルなど
の観点から米国の健康ネットサービスの動向を整理し、今後の可能性を考える
予定です。


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