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海外ユニーク事例編:米国健康業界の上場企業の決算状況

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米国では毎年この時期になると、上場企業の決算が発表になります。

スポルツでは、毎年6月に過去にメルマガで特集した数多くの健康業界の
上場企業の売上、ビジネスモデルの変化などをチェックしています。

そこで今回は、メルマガの紙面の都合上、テーマを「ダイエット」に絞り、
上場企業4社の業績と最新動向を紹介します。

今回紹介するのは、下記ダイエット企業です。

 A. ニュートリシステム(食品販売)
 B. メディファスト(食品販売)
 C. ウエイトウォッチャーズ(ダイエットセンター)
 D. イーダイエッツ(ネットプログラム販売)


※注1:売上は1ドル100円で換算。

※注2:各事例について初めてお聞きになる場合、事例について補足説明が
    必要と思いましたので、各事例の最後にバックナンバーURLを記載
    しました。必要に応じてご覧くださいませ。


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A. ニュートリシステム(食品販売)
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■企業名:NutriSystem,Inc.
http://www.nutrisystem.com/

■設立:1972年

■サービス:ダイエット食品宅配サービス

■サービス特長
・1日5食セットのカロリー計算済みダイエット食品を提供
・1か月集中プランで短期間で痩せる(1か月分の食事が送られてくる)
・無料電話カウンセリングによる心のケアがある
・競合と比べ価格が安い

■提供価値
・早く、簡単に、安く痩せることができる

■売上:2007年をピークに売上が伸び悩む

・2006年:566億円
・2007年:777億円
・2008年:686億円
・2009年:525億円
・2010年:510億円

■営業利益率:10%(2010年)

■最新動向
安さと圧倒的な告知量により2007年までは業績好調であったが、
低価格競争がはじまり、2008年から売上低迷。その打開策として、商品
ラインナップに冷凍食品を加える(NutriSystem select)、糖尿病の人向けに
ダイエット期間を少し長めにした食品(NutriSystem D Program)を加え
サービスを強化するも、苦戦は続いている。

■コメント
ここ2年の同社の打開策は、「提供価値は変えずサービスを広げるもの」と
なっている。短期間で痩せるのは大きな価値だが、その後のリバウンドも
大きいと予想され、購入のリピートが生まれにくい。

短期間でやせた人のその後のフォローをどうするか。つまり「ダイエットプロ
セス全体」をどう捉えるかが価値づくりの課題になっているといえる。


・参考バックナンバー
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/226.html


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B. メディファスト(食品販売)
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■企業名:Medifast, Inc
http://www.medifast1.com/

■設立:1980年

■サービス:ダイエット食品宅配サービス

■サービス特長
・体重減だけでなく体重維持食品を提供する
・体重維持食品にはプログラム(日常生活の工夫を記載)をつける
・同社の食品を利用しダイエットに成功した人をヘルスコーチとして育成し、
 ダイエットのゴール設定、ノウハウを一般の人に教えるしくみをもつ

■提供価値
・成功者からのアドバイスを受けながら減量だけでなく、体重維持できる

■売上:順調に売上を拡大している

・2006年:74億円
・2007年:83億円
・2008年:110億円
・2009年:169億円
・2010年:257億円

■営業利益率:12%(2010年)

■最新動向
ヘルスコーチを通じた売上は、同社の売上の65%をしめる。
(2007年では30%)。
ヘルスコーチを通じた販売を伸ばすため、「Take Shape for Life」という
専門サイトを大幅に強化している。

■コメント
「成功者を通じたノウハウ付きの食品販売」がここ数年の業績好調の背景に
ある。体重を維持するだけでなく、ダイエットが成功したら「ヘルスコーチ」
になれるという、「ダイエットの先」の価値を提案している点に注目したい。


・参考バックナンバー
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/207.html


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C. ウエイトウォッチャーズ(ダイエットセンター)
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■企業名:Weight Watchers International, Inc
http://www.weightwatchers.com/

■設立:1963年

■サービス:ダイエットセンターの運営

■サービス特長
・ポイントプログラム(ポイント内なら何を食べてもよいダイエット法)を
 提供し「賢い食事選択法」を教える
・ポイントプログラムを確実に実行できるよう、ポイントプログラムにより
 ダイエットに成功した人がリーダー(司会)を務める「ミーティング」を
 定期開催
・ポイントプログラムを確実に実行できるよう、ポイント計算済の食品を販売

■提供価値
・一生役立つ「食事選択のノウハウ」を身につけることができる

■売上:2009年で下降するも、2010年で再び上昇

・2006年:1233億円
・2007年:1497億円
・2008年:1536億円
・2009年:1398億円
・2010年:1452億円

■営業利益率:27%(2010年)

■最新動向
2009年、ポイントプログラムをリニューアルする。
また、iPhone向けアプリを開発し、ネットサービスを拡充させている。
2010年には、ウエイトウォッチャーズセンターという小売店を2店舗出店、
医師向け販売を強化するために医薬品メーカーとの提携も行った。

■コメント
同社の提供価値は、ポイントプログラムがスタートした1997年から一貫して
おり、他の追随を許していない。ここ数年はネットサービスも拡大させ、
その価値をさらに実現している。

長く続けられるダイエットには、自分で食事を正しく選べるようになることが
本質であると同社は考えた。「ダイエットの本質に迫る」提供価値は何かを
考えることの大切さがわかる。


・参考バックナンバー
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/222.html


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D. イーダイエッツ(ネットプログラム販売)
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■企業名:eDiets.com, Inc
http://www.ediets.com/

■設立:1996年

■サービス:個人向けダイエットプログラム販売サービス

■サービス特長
・食事プログラム(自分の生活スタイルを入力すると、それに合った1日の
 食事メニューを推奨)を提供する
・食事プログラムには同社オリジナルプログラム、低GIプログラム、地中海式
 ダイエットプログラム、カスタマイズプログラムの4種類から選べるように
 する
・ダイエット食品の宅配サービスも行い、プログラムの実行を支援する

■提供価値
・自分のライフスタイルに合った食事メニューを知り、それを購入できる

■売上:2006年から下降をたどる。2010年でやや上昇。

・2006年:49億円
・2007年:30億円
・2008年:24億円
・2009年:18億円
・2010年:24億円

■営業利益:16億円の営業赤字(2010年)

■最新動向
2006年から2009年にかけて、ダイエットプログラムの利用者が急速に
減り、売上が低迷。その後「食品販売」を開始した。また、当初は11種類
あったダイエットプログラムを4つに絞っている。巻き返しに懸命である。

■コメント
ダイエット希望者にとって、自分のライフスタイルに合った食事メニューを
提案してもらえるというのは、価値があり参加者もいた。しかし、提示される
メニュー数が必ずしも豊富でないこともあり、リピートが続かなかったことが
売上低迷の原因として考えられる。

提供価値の目のつけ所はよいが、それを実現するサービス提供がうまくいって
いないと見ることができる。


・参考バックナンバー
http://www.healthbizwatch.com/hbw/global/contents/204.html


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スポルツの視点
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■今回は、米国健康業界の上場企業の業績を見た中から、ダイエット企業4社
 を紹介しました。

■業績好調な、メディファストと、ウエイトウォッチャーズに共通する点
 として、サービスプロセスが長く(減量だけでなく維持、さらにはその後の
 こと)、「顧客が参加していること」があります。

■一方、業績向上に苦労しているイーダイエッツ、ニュートリシステムでは、
 サービスプロセスが短く(イーダイエッツは当初プランだけ、ニュートリ
 システムは減量するだけ)、「顧客は参加していないこと」があります。

■これらの比較から、ダイエットビジネスにおいては
 「サービスプロセスの幅」、「顧客参加」が成功のキーワードになると
 考えています。


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