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[海外事例にみる企画ヒント編]2018年10月16日号
   ≫≫≫Author:脇本 和洋
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こんにちは。脇本和洋です。
 
2019年度の健康経営銘柄、健康経営優良法人の認定にあたり、申請受付がはじまる時期になっています。本年も、健康経営銘柄、健康経営優良法人ともに数多くの応募があるものと予想しています。
 
健康経営の概念は、もともと1992年に米国のRobert H. Rosen氏が提唱したものです。発祥国である米国の先進企業の取り組みを見ておくことは、今後日本の健康経営を発展させる上でも参考になるはずです。
 
今回は、先進事例として「Johnson & Johnson」の健康経営をとりあげます。
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---「健康経営企業(米国)の取り組み」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「ウェルカムキット」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 睡眠報酬制度、海外 Fitbit動向など、10本
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>健康経営企業(米国)の取り組み
 
 
[海外事例にみる企画ヒント編]では、今までに海外の健康経営に関して、サービスプロバイダーの事例を紹介しました。今回は健康経営を実際に行う企業を紹介します。
 
・バックナンバー
[海外事例にみる企画ヒント編]
健康経営のサービスプロバイダーを紹介(2017年4月、2018年3月)
 
 
【今回の切り口】
 
1.米国の健康経営の評価団体
2.受賞企業「Johnson & Johnson」の取り組み
3.日本での健康経営の捉え方
 
 
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1.米国の健康経営の評価団体
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米国では、優秀な健康経営企業に対し表彰を行う2つの団体があります。
 
●CHAA(Corporate Health Achievement Award)
米国職業環境医学会が行う表彰。「Corporate Health Achievement Award」という名前の表彰です。近年では、Erickson Living、American Express、Johnson & Johnsonなどが受賞しています。1997年から実施されており、最も代表的な表彰です。過去の受賞一覧はこちら
 
●KOOP AWARD
HealthProjectという団体が行う表彰。医師として有名だったKOOP氏の名前に由来し「KOOP AWARD」という名前の表彰です。近年では、McKesson、O’Neal Industries、BP Americaなどが受賞しています。こちちも歴史があり1994年から実施されています。過去の受賞一覧はこちら
 
今回は、代表的であるCHAAを2度受賞しており、また多くのメディアで健康経営の代表事例として語られることも多い「Johnson & Johnson」をとりあげます。
 
※Johnson & Johnson
医療機器、医薬品などを販売するグローバル医療メーカー。175か国以上に製品を販売し、全世界で約12万人の従業員がいます
 
 
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2.受賞企業「Johnson & Johnson」の取り組み
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CHAAを受賞した企業は、受賞時にプレゼンテーションをしており、その際の資料が公開されています。この資料を読み解いた内容を紹介します。
 
●同社の健康経営の位置づけ
 
受賞した当時の売り上げは6兆円を超えていましたが、さらに売上を向上させるという目標がありました。(経営目標が明確)
 
そして、この経営目標を実現するためにマーケットシェアの維持、新製品開発スピードを高めるという、2つの経営戦略がありました。(経営戦略が明確)
 
また、患者を幸せにするというミッションをもつ同社にとって、そもそも社員が健康でないと、戦略を実行する際にも説得力がないことに気づいていました。
 
 
そして、同社はこの経営戦略を実施する上での「あるべき人財像」を「心身ともに十分に健康で仕事にとことん熱中し、人生を楽しみ尽くすこと」(Have the healthiest, most engaged workforce for J&J - allowing for full and productive lives)と設定しました。(あるべき人財像が明確)
 
同社は、この「あるべき人財像」を実現する手段として健康経営を位置づけます。
 
 
●健康経営の施策と評価
 
実際の健康経営の施策は、主に4つで構成されています。
 
・Mental Health & Well-Being
メンタル相談、カウンセリング、コーチング、ヨガ瞑想教室などで心を整える
 
・Healthy Lifestyle Programs
生活カウンセリング、デジタルヘルスコーチング、歩数チャレンジ、人生のミッションを明確にし自分のもつエネルギーを使うことを学ぶ
 
・Occupational Health & Disease Management 
健康相談センターなどリアルの場を通じて健康づくりの相談にのる
 
・Health Education & Awareness Programs
ファミリーヘルス、健康記録、ニュース、掲示板、乳がんデイなどで、健康への気づきを高める
 
また、同社では健康経営の評価を重視しています。プレゼンテーション資料を見ると、各プログラムごとの参加率、継続率、疾病リスクにおいてローリスクの人の割合などが会社ごと、事業部門ごと、事業場ごとに一目でわかるようにしています。
 
当然のことながら、あるべき人財像である「心身ともに十分に健康で仕事にとことん熱中し、人生を楽しみ尽くすこと」がどの程度向上したか自体も、評価測定していると想定されます。
 
 
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3.日本での健康経営の捉え方
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健康経営銘柄やホワイト500などで表彰されている日本の健康経営企業。
 
しかしながら、健康経営の目的は「社員が健康になること」「ブラック企業でないことを示すこと」「世間の流れだから」といったあいまいな理由で取得を目指す企業も多かったのが2017年までの流れといってよいでしょう。このステージを健康経営の第1ステージと呼んでいます。
 
そして今、日本の健康経営は、第2ステージに向かっています。第2ステージでは、Johnson & Johnsonにみるような位置づけで健康経営を行います。以下の1から4のステップです。
 
【健康経営の第2ステージ】
 
●ステップ1:経営目標の明確化
●ステップ2:経営戦略の明確化
●ステップ3:あるべき人財像(人財要件)の明確化
●ステップ4:健康経営の企画/実行/評価
 
まず、自社の経営目標、経営戦略をおさえます(ステップ1、2)。そして経営戦略が生まれた背景を想定しつつ、その中からあるべき人財像の要件を明確にします(ステップ3)。
 
あるべき人財像が明確になれば、行うべき健康経営の施策も検討することができます。(ステップ4)
 
実際に、2018年の日本の健康経営銘柄の受賞企業をみても、フジクラやリンナイのように、あるべき人財像をつくりあげる手段として健康経営を位置づけ、経営によいインパクトを与える企業も現れています。
 
この第2ステージで大切になることとして、企業により経営戦略も違うので、あるべき人財像も変わるということがあります。そして、人財像が変われば、当然行うべき健康施策の優先度や内容も変わってきます。
 
つまりこれは、他社が効果の出た健康経営の施策だから自社も取り入れようとは、簡単にはいかなくなるということです。
 
健康経営では、「経営によいインパクトを与えるかどうか」を考えておくことが大事です。いよいよ日本でも、健康経営の第2ステージを作っていく段階になっています。
 
 
【お知らせ】健康経営の第2ステージに向かって
 
スポルツでは、健康経営の第2ステージに向かう企業を支援しています。まずは情報交換からいかがでしょうか。
 
 
【ご参考】健康経営のビジネス動向を発信しています
 
弊社サイト「mhealth Watch」には、健康経営の特集コーナーを設置しています。国内海外の動向やキーマンへのインタビューも掲載中です。ぜひご覧ください。
 
・mhealth Watch「健康経営コーナー」
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「ウェルカムキット」
 
どのようなサービスであれ、お客様の購入時点でのコミュニケーション(接触)品質がその後の利用継続率に影響していることは明確です。つまり、ウェルカムの気持ちと具体的な関係性をどれくらい実践できているか?の勝負になります。その一連の対応をウェルカムキットと言いたい。これをどれだけアップデイトできるか?
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <10クリップ>
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[1]オムロン ヘルスケア、オムロン メッシュ式ネブライザ NE-U100/NE-U150
ネブライザは、薬液を細かい霧状に放出して肺や気管支に到達させる、ぜん息や気管支炎の治療器。吸入の準備が簡単で手入れがしやすい新構造の薬液ボトルを採用。(2018/10/03)
 
[2]東レ、腰痛対策の機能性ズボン「腰囲周当」の本格販売について
中腰作業や重量物取り扱い等、日常的に腰に負担がかかる職場で働く人に向けて、腰に不安を抱えず安心して働くための機能性ズボンをユニフォームメーカーや商社等を通じて販売。(2018/10/03)
 
[3]JTBとNTTドコモ、地域観光促進サービス提供開始
ドコモ・ヘルスケアが提供している観光地をバーチャル散歩できる歩数計アプリ「歩いておトク」の利用者をJTBが企画したリアル観光ツアーに誘致し、地域観光を促進することを目的とした「地域観光促進サービス」の提供を自治体向けに開始。(2018/10/03)
 
[4]日経デジタルヘルスより、デジタルヘルス事例:「加齢臭に次ぐ大きな発見」資生堂が“ストレス臭”
ストレス臭を2-3分嗅ぐと疲労や混乱を感じやすいことが分かった。そこで同社は、ストレス臭の対策として、臭い成分を包み込んで目立たなくさせる独自の「STアンセンティッド技術」を開発。この技術を用いた製品を2019年春に発売する。(2018/10/03)
 
[5]NEC、週休3日を可能とする介護短日勤務制度を導入
あらかじめ設定した週の1日を不就労日とし、当該曜日は勤務しないことを認める制度。本制度は、家族の介護をするために勤務日の短縮を必要とする全従業員を対象とし、当該介護事由が解消されるまでの本人の申し出た期間利用できる。(2018/10/04)
 
[6]損保ジャパン日本興亜ひまわり生命、ポータルサイト「TOKYO WALKING MAP」と「リンククロス アルク」が連携【PDF】
同社は、同じSOMPOホールディングス傘下である損害保険ジャパン日本興亜株式会社が包括提携した東京都との「ワイドコラボ協定」に基づき、健康増進分野での連携を行う。(2018/10/09)
 
[7]CRAZY、日本初「睡眠報酬制度」を導入
科学的なアプローチで睡眠の改善に取り組むエアウィーヴの協力のもと、健康経営を推進する福利厚生制度の一貫として社員の睡眠に対し報酬を支払う日本初の「睡眠報酬制度」を導入。(2018/10/09)
 
[8]MIT、ヘルスケアITプロジェクト『J-Clinic』をスタート
MITとサウジアラビアの社会起業組織Community Jameelが、ヘルスケアITプロジェクト『Abdul Latif Jameel Clinic(J-Clinic)』をスタート。AIの医療分野への進出を加速する。(2018/10/09)
 
[9]『mHealth Watch』注目ニュース:女性と家族の健康プラットフォーム『Maven』、2,700万ドルを獲得
Maven Clinicは、家庭を持つ女性を健康面より支援する組織。Maven Clinicのサポート範囲は、不妊症対策から妊娠産後、復職のための育児支援までと、働きながら子供を持つ不安を解消するような支援を行なっている。(2018/10/09)
 
[10]『mHealth Watch』注目ニュース:Fitbitの新しいヘルスコーチングサービス『Care』
今回注目するのは、Fitbitがハードウェアの販売からヘルスケアに重点をシフトして、ヘルスコーチングサービスを開始するというニュース。「機器(リストバンド)」に「人」を組み合わせたサポート、そして「ヘルスコーチング」をベースとしたアプローチは、今後日本でも多くなっていくと思われます。(2018/10/15)
 
 
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