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[海外事例にみる企画ヒント編]2019年2月19日号
   ≫≫≫Author:脇本 和洋
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こんにちは。脇本和洋です。
 
健康行動の継続手法の一つであるヘルスコーチング。
2011年頃からオンラインを絡めたヘルスコーチングサービスが米国で開発され、今も進化を続けています。
 
今号では、数あるヘルスコーチングサービスの中から投資家が注目している事例を3つ紹介します。
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---投資家が注目する「ヘルスコーチングサービス」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「モノの価値シフト」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 ウェルネス貯金、海外 Fitbit動向など、8本
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>
投資家が注目する「ヘルスコーチングサービス」
 
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進化をとげる「オンラインヘルスコーチングサービス」
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今号では、オンラインを使ったヘルスコーチングにフォーカスします。
まずオンラインヘルスコーチングが出始めた2011年当初から展開している「Lark Technologies」を紹介。そして、その後の進化の形として「Virta Health」と「Vida Health」を紹介します。
 
 
【今回の切り口】
 
事例1.AIコーチがリアルタイムでアドバイスする「Lark Technologies」
事例2.医師とコーチが協力して手厚くコーチングを行う「Virta Health」
事例3.リアルコーチをサポートするためにAIを使い、1対1で手頃な価格での提供を目指した「Vida Health」
 
 
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事例1. AIコーチがリアルタイムでアドバイスする「Lark Technologies」
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■企業名:Lark Technologies, Inc.
 
■設立年:2011年
 
■資金調達:34.7億円(2019年1月時点)
※Joyance Partners、Fenox Venture Capitalなど10社が投資
 
■売上:10億円
 
■概要:高血圧管理、糖尿病管理、糖尿病予防、ウエルネス全般(睡眠改善やダイエットなど)、という4つのテーマごとにAIがコーチングするサービスを提供しています
 
■顧客
・高血圧や糖尿病といった生活習慣病患者とその予備軍(B-C)
・企業の福利厚生や労務担当者、保険企業(B-B)
 
■特徴
AIコーチングとは、学習機能をもったAIがコミュニケーションをとるというもので、リアルの「人」は存在しない形です。
 
例えば、血圧が異常に高い場合、AIコーチが危険と判断し即時にかかりつけ医に連絡をするようアドバイスします(アラートを出す)。また、昼食に不適切な食事をとった場合には、簡単な注意を行います。多めに運動した場合、「今日は平均値よりもずいぶんたくさん運動しましたね!」とリアルタイムに褒めます。
 
同社は近年、遺伝子検査サービスを提供する23andMeと提携し、遺伝子検査を受けた人には遺伝的特徴に基づくAIコーチングを提供しています。
 
 
■価格
・月額19.99ドル(B-C)
 
■参考>サービス動画(約3分)
 
■コメント
Lark Technologiesは、2011年設立後AIコーチングを武器に注目を浴び、2015年-2016年には、数多くの受賞を受けてきました。しかし、売上は現在も10億円程度でとどまっており、当初描いた成長はまだ遂げていません。
 
同社のAIコーチングは、不適切な行動をした時に注意したり、アラートを出すこと、簡単に褒めることが多く、患者の主体性を引き出す本来のコーチングの部分が弱いです。
 
同社が思ったように成長しない中、「リアルの人」と「オンライン」を融合させ本来のコーチングを行う「Virta Health」や「Vida Health」といった事例に投資家の注目が集まっています。
 
 
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事例2.医師とコーチが協力して手厚くコーチングを行う「Virta Health」
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■企業名:Virta Health Corp
 
■設立:2014年
 
■資金調達:82億円(2019年1月時点)
※Venrock、Caffeinated Capitalなど14社が投資
 
■売上:非公開
 
■顧客
・企業の福利厚生や労務担当者(B-B)
・糖尿病II型患者(B-C)
 
■概要
医師とコーチがデータ共有しながら患者を見守り、糖尿病の薬やインシュリンの量を減らすこと(リバース効果)を目指した食事指導サービスを提供しています。
 
■特長
同サービスはオンラインで専用アプリとモニタリング機器を使い、医師のバックアップとヘルスコーチによる栄養指導を通してケトン食療法(低炭水化物中心の食事)の実践をサポートします。
 
申し込むと、専用アプリと連携した体重計や血圧計、血糖測定器、ケトン体試験紙などが郵送されます。そしてアプリでケトン食について動画コンテンツなどで学習しながら、食習慣を変えていきます。こうした体質改善はコーチと医師のモニタリングのもとに慎重に行われます。
 
患者は定期的に体重や血圧、血糖値、血中ケトン体の数値などを測定し、データはアプリを通して同社の医療チームやコーチと共有されます。そして、栄養と行動変容の専門であるコーチが食事などに関する細かい指導や励ましを与えるとともに、医師は服薬量やインシュリンについての指示を出します。
 
 
■価格
・同社はB-B(企業向け)が中心で、B-B向け価格は公開していません
※現在拡大中のB-Cの場合、入会金500ドル(測定機器代金含む)、月額370ドルです。この価格から想定するに、同サービスは企業向けでも生活習慣病の重篤化予防、マネジメント向けを狙っていると考えられます。
 
■参考>サービス動画(約3分)
 
■コメント
同社は2017年37億円、2018年45億円の資金調達に成功しています。注目の背景には、「医師とコーチが連動した手厚いコーチングで確実に成果を出すこと」があります。
 
同サービスは企業向けが中心で、1対1でコーチングを手厚く提供するものです。
次に紹介する「Vida Health」は、一般向けで、手頃な価格で1対1のコーチングを受けることができるものです。
 
 
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事例3.リアルコーチをサポートするためにAIを使い、1対1で手頃な価格での提供を目指した「Vida Health」
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■企業名:Vida Health, Inc
 
■設立年:2014年
 
■資金調達:23億円(2019年1月時点)
※Canvas Ventures、The Valley Fundなど13社が投資
 
■売上:非公開
 
■顧客
・生活習慣病患者とその予備軍(B-C)
・企業の福利厚生や労務担当者(B-B)
 
■概要
生活習慣病を中心に腰痛や、禁煙など様々なテーマでヘルスコーチングサービスを提供しています。幅広い分野に対応するため、管理栄養士、睡眠指導士、理学療法士といった多様な資格を有する数百人のコーチが登録されています。
 
■特長
同サイトに申し込むと、目標や指導スタイル(スパルタタイプなど)、コーチング可能な時間帯といった条件や好みに応じて、自分の好きなヘルスコーチを選べます。
 
コーチはその人に合わせた日々のアクション(18時までに家族と夕食をとる、1日5000歩歩く、薬の記録をする、食事の記録をつける、9時にスマホの電源を切るなど)を調整作成する手伝いをします。
 
運動や食事などの日々のアクションは、提携している様々なアプリやデバイスを通じて、自動で記録できるしくみになっています。
 
コーチは日々のアクションができているかを定期的にチェックしたり、見直すことを支援するとされています。コーチとのやりとりは、定期的に電話やビデオ通話、チャット式で行われます。
 
 
■価格
・月額75ドル
 
■コメント
通常1対1で行うと高コストになり、同社のように月75ドルで提供することが難しくなります。パーソナル感を出しながらも、低コストで行う工夫が必要になります。
 
同社は、その工夫を様々行っていますが、その一つにAIの機械学習機能をデータ解析に利用している点があります。成功者の様々な属性や行動データをAIで解析することで、患者にとって最も成果が出る運動や食事のアクションを導き出します。
 
コーチはAIが導いたアクションを参考に、自らの経験を照らし合わせ、患者にアドバイスをしていきます。つまり、成果を上げるためにコーチがすることの下準備の一部をAIが行っているわけです。そしてコーチ一人あたりで担当できる患者数が増え、その結果手頃な価格でサービスを提供することに貢献しています。
 
■参考>サービス動画(約3分)
 
 
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今後のヘルスコーチングサービスのポイント
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今号では、投資家が注目しているオンラインヘルスコーチング事例を3つ紹介しました。今後のヘルスコーチングサービスのポイントを2点あげてみます。
 
 
●人を感じさせつつ、コストを下げ適切な価格で提供すること
 
今回紹介した事例では、事例3の「Vida Health」がヒントになります。コーチが指導する下準備としてAIを活用し、コーチの指導の効率化を図ります。AIだけでなく、様々な技術や仕組みを使い、リアルの人を感じつつもいかに適切な価格で提供できるかが勝負になります。
 
 
●テーマを拡大させて、収益拡大を狙うこと
 
「Lark」は生活習慣病など4つのテーマ、「Vida Health」では生活習慣病、腰痛、不安症など12のテーマで、ヘルスコーチングを展開しています。一つのテーマで成功したら、それをいかに横展開していくかがポイントになっています。Vida Healthはこれを「condition-focused solutions」と呼び、明確な戦略に位置付けています。
 
【脇本和洋】
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「モノの価値シフト」
 
モノはかつて成果の単位であったのに対して、今や価値共創のためのツールという位置付けに価値シフトしている。
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <8クリップ>
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[1]日経デジタルヘルス、インタビュー:最強の布陣で「健康のバリューチェーン」を作る
LINEとエムスリーは、オンライン医療事業を目的とした新会社「LINEヘルスケア」を共同出資で設立した。医療分野への参入の狙いや今後の計画について、LINEヘルスケア代表取締役でLINE執行役員の室山真一郎氏に聞いた。(2019/02/05)
 
[2]ロート製薬、独自の社内通貨で従業員の健康づくりをサポート!健康コイン「ARUCO(アルコ)」を導入
本取組では、従業員の日々の歩数や非喫煙など健康的な生活習慣の実施状況に応じて独自の社内通貨を付与する。獲得コインは同社運営のカフェ等でのヘルシーランチチケットや健康に関する社内セミナーへの参加等、従業員の心身の健康づくりにつながる幅広い用途で利用可能。(2019/02/07)
 
[3]はるやま商事、「活動量計ポケット付き i-Shirt(アイシャツ)」新発売【PDF】
胸ポケットの内側にタニタの活動量計「カロリズム スリム AM-122」に対応した専用のスナップボタン付きポケットをプラスした、ビジネスパーソンの健康づくり推進シャツ。(2019/02/07)
 
[4]ニッセイ基礎研究所、健康寿命が延びたら国の医療費を削減できるの?
保険研究部・ヘルスケアリサーチセンター 准主任研究員 村松容子氏。本稿では、長寿化、生活習慣による危険因子と寿命や生涯医療費、国の医療関連費の関係についての代表的ないくつかの見解を紹介。(2019/02/07)
 
[5]フィノバレー、三井物産・日本IBMと取り組む共通ポイントシステム「ウェルネス貯金」が実証実験を開始
「ウェルネス貯金」は、三井物産が中心となって食品メーカーや自治体、薬局、病院などと組み実現する共通ポイントプログラム。消費者のウェルネスを応援する参加企業が提供する商品やサービスに「エール」というポイントを付加し、消費者のウェルネスを応援する。(2019/02/08)
 
[6]日本ケロッグ、“働き方改革”をシリアルでアシスト!オフィス向けシリアル販売サービス「オフィス ケロッグ」スタート
シリアルの喫食拡大に向けたオフィス向けソリューション。先行モニター企業における従業員満足度は93%。本サービス導入プランでは「オフィスシリアルスターターキット」を提供。(2019/02/08)
 
[7]協会けんぽ、健康経営(R)普及推進セミナーを開催
開催日は2019年3月8日(金)。第1部:健康経営にコミット!!「RIZAP」が提案します(RIZAP株式会社)、第2部:健康企業宣言のすすめ(全国健康保険協会東京支部)。
 
[8]『mHealth Watch』注目ニュース:Fitbit、新デバイス『Inspire』で健保と企業福利分野に進出
ここ数年、Fitbitは法人向けに力を入れています。コンシューマ市場で絶対的な認知を獲得してきたFitbitは、その優位性を活かしてすでに1,600社への導入を果たしました。次なる打ち手として法人市場向けの『Inspire』をリリースしました。(2019/02/18)
 
 
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