───────────────────────────────────
●ビジネスモデル事例【健康B-Cビジネスモデル紹介(その4)】

       ~ ホームテストキットの可能性 ~
───────────────────────────────────

 米国では、日本のように企業や自治体が集団で健康検診を実施する
習慣はなく、多くの人が近くの医療機関で定期的に検診を受けたり、
ホームテストキット(家庭で行う検査キット)を活用し、健康チェック
を行っています。

最近では、この「ホームテストキット」の販売が好調で、業界誌
BestReviewによると、その販売高は今年度末に28億ドル(約3,600億円)
を上回ると予想されています。また、FDA(米国医薬食品局)承認済み
のキットが約500製品にのぼり、小売店や薬局、オンラインで広く販売
されています。

今回は米国事例をヒントに、日本においての「ホームテストキット」の
可能性を探ります。


.........................................................................................................
【ホームテストキットとは】
.........................................................................................................

「ホームテストキット(At-Home Test Kits)」は、妊娠検査キットの
ように検査から結果判定までがリアルタイムでわかるものから、自宅で
検体(血液・便・尿)を採取後郵送し、検査機関(医療機関)から郵送
で検査結果を受け取ることのできる製品全般までを指します。

今まで、医療機関に足を運び検査を受けていたことと同様の内容が、この
「ホームテストキット」を活用して可能になるわけですが、そのメリット
としては以下が考えられます。

●時間節約
 忙しい米国のビジネスマンや主婦などにとって、定期検査のために病院に
 行き、長時間待たされる必要がない
●診療コスト削減
 加入している保険の種類によるが、病院で検査を受けるより安い
●プライベートの確保
 エイズ検査など人に検査を受けることを知られたくない場合に、プライバ
 シーが守られる
●検査データを継続的に自ら管理できる
 例えば、糖尿病患者は血糖値データを定期的にチェックする必要があるが
 、そのデータをサイトを利用し継続的に管理できるなど、付加価値を持つ
 検査キットもある


.........................................................................................................
【事例紹介】
.........................................................................................................

米国には、多くのホームテストキット販売企業がありますが、「キットの
幅広さ」、「サイトとの連動を図る」という視点で2つの事例を紹介します。

■その1:Home Health Testing ~ガン・エイズ・肝炎など幅広いキット~
http://www.home-healthtesting.com/
(サイト設立:1995年 運営:AbDiagnostics社)

Home Health Testingは、ガン・糖尿病・アルツハイマー病など、20種類
以上の「幅広い」検診キットを販売するサイト。運営企業のAbDiagnostics社
の売上は、ここ数年30%ベースで増加しています。サービスの具体的な
流れは、以下のとおりです。

例)糖尿病検査キット(BioSafeR Cholesterol Test)の場合

(1)ユーザーがオンラインで購入申込み
(2)キットを郵送で受け取り
(3)自宅で採血、台紙に張りつけて検査機関に郵送
(4)データ検査機関にて採血サンプルを解析
(5)検診結果を郵送で受け取り

上記の検診キットの価格は39.95ドルで、検診結果受け取りまでの期間は、
検診データ郵送から約5日間となっています。


■その2:Body Balance  ~サイト連動で「個別」にキット提案~
http://www.bodybalance.com/
(サイト設立:1995年 運営:Great Smokies Diagnostic Laboratory )

Body Balanceのターゲットは「なんとなく調子の悪い女性」で、ホルモン
バランス・不眠・ストレス・骨そしょう症など計8種類のキットを販売して
います。

特徴は、ユーザーが健康状態をサイトでチェックできる「Health Check」
の提供にあります。年齢・身長・体重・血圧などのプロフィールや運動・
食事・喫煙・睡眠などの生活習慣、仕事や家庭に関する質問にオンライン
で回答。その後、「個別」のライフスタイル改善のアドバイスとお推め
のキットが紹介されます。

・「Health Check」
http://www.bodybalance.com/hra/start.html

サービスの流れはHome Health Testingとほぼ同様ですが、サンプルと
して「唾液」を送付する場合もあります。また検診結果は、7~10日後に
オンラインのPDFファイルで受け取るしくみです。
(価格:一律59.95ドル)

・「骨そしょう症」の検診結果レポートの例
http://www.bodybalance.com/osteo/report.html


.........................................................................................................
【ホームテストキットの可能性】
.........................................................................................................

米国のホームテストキット市場が好調な背景には、以下が考えられます。

●セルフケア意識の高さ
 自らの健康状態をデータで管理し、積極的に健康管理を行う意識が高い
●医師・病院の積極的な受け入れ
 市場の伸びに押される形ではあるが、診療の一つのツールとしてホームテ
 ストキットを患者に薦めている
●キットの信頼性が高い
 FDAが許認可制をとり、またクレームの多さや重大な欠陥が見つかったキ
 ット情報を公開するサイトもある

一方日本でも、「セブンドリーム」や「kizuite net.com」などホーム
テストキットを扱う企業が増えつつあります。ただ、現状としては、

●キットの信頼性に関わる情報が少ない
 ユーザー側としては、自分でキットをうまく使えるか、結果はどこが判断
 するのか(医療機関や検査データ会社の信頼性)がまずは気になります。
 これらの情報はまだ少ないのが現状でしょう
●医師・病院が積極的には薦めていない
 医師がホームテストキットを使ったデータの信頼性にまだ懐疑的であり
(特にユーザーがうまくキットを使えるか)、積極的には薦めていない

ことなどが考えられます。

しかし今後は、医療負担の増大などの影響を受け「セルフケア意識」が
日本でも確実に高まると考えられ、「ホームテストキット」は魅力的な
市場に成長する可能性があります。また、この市場は食品メーカー、
健康プログラム販売企業、健康系のポータルサイトなどとの連携により
更に広がっていくとも考えられます。

サービスを展開する上では下記が重要なポイントになります。

●ホームテストキットで問題のなかった人への対応
 特に問題がなかった人でも、ホームテストキットを利用した人はセルフケ
 ア意識の高い人といえます。正しい生活習慣や今後必要となる検診につい
 てアドバイスを提供するしくみが必要と思われます。

●サイトとの連動
 サイトを使って、長期に渡って継続的にデータを管理できるだけでなく、
 定期的にオンライン/オフラインでの検診を促す「リマインダーメール」
 の送付などが必要でしょう。


【参考事例】

・セブンドリーム
http://www.7dream.com/find/a07a/198/
自宅でできる健康診断「コンビニ検診」。ガンなど全19種類。

・kizuite net.com
http://www.kizuitenet.com/
採血による総合Web検診。オンラインでデータ管理機能あり。


【参考情報】

■米国在宅検査キットのオンライン販売が好調
http://www.chcf.org/healthcurrents/view.cfm?ItemID=19689

■米国「ホームテストキット」の基本知識
http://www.labtestsonline.org/understanding/index.html

───────────────────────────────────