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2013.12.10
一般社団法人 オールアルビレックス(オールアルビレックス・スポーツクラブ)
菅野 文宣 氏

2020年の東京オリンピックが決まり、スポーツへの注目度がアップすることは間違いないが、それが一過性で終わるのか、文化として根付き成長するのか見守りたい。そんな中、今年新潟に『地域文化としてのスポーツある生活』を切り口としたスポーツクラブが産声をあげた。代表理事である菅野さんにその方針と今後について伺った。
プロフィール
菅野 文宣[かんの ふみよし]
一般社団法人オールアルビレックス 代表理事
新潟アルビレックスランニングクラブ 理事
アメリカ、ロンドンへの留学を経て帰国後、2007年大手広告代理店に入社し、クリエイティブディレクターとして従事。2012年新潟に渡り、新潟医療福祉大学に勤務。“子ども達のスポーツの可能性を広げるための仕事”をと、2013年一般社団法人オールアルビレックスを設立。“ライフステージに応じた正しい運動・スポーツを提供する”ことを理念に、子ども達が様々な運動・スポーツを経験できるオールアルビレックス・スポーツクラブを運営している。

スポーツ選択のミスマッチを無くしたい!

まず最初にクラブ設立の背景を伺った。
 
「私達のクラブは、ジュニアを対象としたスポーツクラブです。子どもがスポーツを始める理由は、2つしかないと思っています。1つが“友達がやっているから”。2つ目が“親の意向”です。
 
正しく私も“友達がやっているから”という理由で小学生からバスケットボールを始め、大学まで続けました。高校ではインターハイにも出場することができ、充実したスポーツライフを送ってきましたが、自分にバスケットボールが向いていたかというと、そうではなかったと思います。向いていたのなら、今頃新潟アルビレックスBBの選手として活躍をしていたかもしれません(笑)。小学生当時、しっかりとした指導者のもと、様々なスポーツを体験できたり、その中で“何のスポーツに向いているか”を指導者が判断できる体制が整っていたならどうだったでしょうか。自分に合ったスポーツを選択できた可能性があったのではないかと思います。私のようなミスマッチになってしまう可能性を極力減らしたい。そんな想いのもと、クラブを設立しました」
 
クラブのコンセプトについて聞いた。
 
「“だれもが、だれとでも、いつでも、いつまでも。ライフステージに応じた正しい運動・スポーツの機会を提供し、スポーツに満ちた明るく豊かな地域社会の実現を目指します”これが弊社の理念です。中でも、“ライフステージに応じた正しい運動・スポーツの機会を提供する”ことに重きを置いて、クラブを運営しています。
 
ライフステージに応じた正しい運動の仕方・方法、それぞれのスポーツによって独自の指導方法があるにも関わらず、日本では未だ間違った指導方法が満盈しています。
 
スポーツ少年団ではボランティアの方々が指導者として、学校のクラブ活動では素人の先生が顧問として指導されているところもあり、しっかりとした理論のもとに指導が行えていません。私自身も中学の部活(バスケットボール)では、テニス経験者の先生が顧問を努められており、練習メニューは自分たち自身で考えていました。ただその先生はバスケットボールを一生懸命勉強され、負け試合には一緒になって泣いてくれ、人間的な成長を促していただいた先生でした。恩師と呼べる先生の一人です。だからこそ、その先生に専門的な知識があり、しっかりとした指導を受けられていたらと、今でも思います。そんなギャップやミスマッチを埋めたい。そのような想いがクラブのコンセプトとして表れています」
 

子供の可能性を広げていく!

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次にクラブの特徴について伺った。
 
「クラブでは、コーディネーショントレーニングと呼ばれる運動神経の向上を目的としたトレーニングを行っています。基本的な身体の動かし方や運動神経の向上を図り、サッカーやバスケットボール、野球、陸上など、各アルビレックスプロチームのスクールへのステップアップを目指します。つまり、子ども達一人ひとりに合ったスポーツを見つけてもらう、または機会を与えてあげることをコンセプトに活動しているのです。いわば、スポーツを始める前の登竜門的な役割や存在でしょうか」
 
 
子供の時に自らの身体能力の可能性を広げるステップがあるというのはとても魅力的だし、ぜひ広めていっていただきたいメソッドだ。しかし、それを推進する課題もあるだろう。
 
「課題は、指導者の育成です。まだ立ち上げたばかりということで、十分な指導者の確保ができていません。現在、クラブのプログラム監修を行っていただいている新潟医療福祉大学のスポーツ学科の学生やアップルスポーツカレッジというスポーツの専門学校からインターンやアルバイトという形で、お手伝いをしていただいています。彼らはスポーツ指導という専門家の卵です。学校と連携し、その学生達をどう育てていくかが一つ鍵になるのではないかと思います」
 
 
さて、2020年東京オリンピックをどう捉えているか?
 
「“新潟から東京オリンピックへ!”という道筋が明確になったと思います。現在は“クラブからサッカー、バスケットボール、野球など、各アルビレックスのスクールへ”というステップアップを図れますが、それ意外にもスポーツの種目はまだまだたくさんあります。今後は、学校などでは取り組むことが少ないマイナースポーツのスクール化を図り、子ども達の可能性をより一層広げていきたいと思います。そして、スクールから東京オリンピックへ出場する子どもを育てることが今後の目標の1つです。さらには、東京オリンピックのプレ大会として、例えば新潟の潟を取り“ガタリンピック”のようなスポーツイベントを各アルビレックスと協力してできればいいですね」
 
 
今後のビジョンについて伺った。
 
「まずは1店舗目の会員数を増やすことが第一で、今後は新潟県内での多店舗化を目指します。現在、サッカーのアルビレックス新潟は、シンガポール、スペイン、カンボジアといった国々でチームを運営しています。クラブも国内だけでなく、東南アジアを中心とした海外にも、私達の運動理論を持って進出していこうと思います。さらには、抽象的な表現にはなりますが、クラブ理念に掲げている通り、“スポーツに満ちた明るく豊かな地域社会の実現”を目指すための取り組みを行うための空間、時間、仲間を提供し続けたいと思います」
 
 
菅野さん自身は2020年には何をされている予定だろうか?
 
「ビーチテニスというスポーツをご存知でしょうか?現在私は、テニスとバドミントンを掛け合わせたようなスポーツである“ビーチテニス”というスポーツを行っています。ヨーロッパでは大変人気のあるスポーツです。日本ではまだまだマイナーなスポーツではあるのですが、オリンピックの正式種目にも選ばれる可能性があるのです。もしかしたら、日本代表として出場しているかもしれません(笑)。」
 
 
最後に、健康ビジネス・スポーツビジネス業界の方々へのメッセージなどあればぜひ!
 
「“スポーツに関わる仕事で起業を”と、学生時代から考えていました。新卒から広告代理店に勤務をして、今年会社を立ち上げました。そういう意味では、健康・スポーツビジネス業界に関して言うと皆さんのほうが大先輩です。という訳で、メッセージというよりも、皆さんには様々ご教授をいただきたいほどですが、健康・スポーツに携わる我々で、スポーツに満ちたよりよい社会の実現に向けて、共に頑張っていきましょう」
 
 
最初に菅野さんにお会いして他のフィットネス業界の方々とは違う印象を強く持った。今やフィットネス産業そのものは成熟産業となり、ビジネス戦略用語が飛び交う業界でもある。
率直に言うと菅野さんに感じたものは「志」。
HBWとしてもここに期待している。


 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2013年12月4日]