YS_photo.png

2015.4.22
デジタルヘルスコネクト / Digital Health CONNECT 
城野 洋一 氏

医療・ヘルスケアに関する課題が毎日報道されている中で、この業界でのイノベーションへの挑戦をする企業は限られていた。医療・ヘルスケア関連市場は急成長しているにもかかわらず業界特性を知る環境が十分でないことも原因だと考えられる。
 
そこでスタートしたのがデジタルヘルスコネクト(略称:DHC)。
 
DHCは、医療・ヘルスケアビジネスの関係者と事業意欲の高い人たちとの出会いの場において業界課題に対する議論を活性化させ、そこから生まれた事業アイデアを実現するためにスタートしたインフォコム株式会社が主催するプログラムだ。この「デジタルヘルスコネクト」の企画運営をしている城野さんにその手応えを伺った。
プロフィール
城野 洋一[しろの よういち]
日商岩井(現双日)において約12年間情報通信、テクノロジー関連分野の国内外の事業企画、事業開発を行う。1999年にベンチャーキャピタル「Entrepia」を米国にて共同創業し副社長に就任、2002年に日本法人の代表取締役に着任する。2006年社外取締役を務めていたビジネスサーチテクノロジの代表取締役に就任、検索システム提供会社のトップ企業の一つに育て上げる。2014年9月よりヘルスケアITにおける新規事業創出プログラムの検討を開始、デジタルヘルスコネクトを立上げる。

まだ、日本では確立されていないヘルスケア領域のインキュベーション

1999年から国内のヘルスケアビジネスに刺激をと米国にてどんどん立ち上がっていたヘルスケアの新ビジネスモデルを紹介する情報配信を始めたのが本メルマガである。
 
我々はベンチャー先進国とも言える北米圏でのビジネスインキュベーションのあらゆる知恵やチャレンジなどを羨ましく思ってきたし、その気持ちは当時の多くの国内ヘルスケアビジネスチャレンジャーとも共有してきた。
 
実は一般的なICTベンチャーとは違い、米国においてもヘルスケア領域のインキュベーションの成功事例は決して多いとは言えない。しかしながら、様々なチャレンジが次々と絶え間なく行われている。
 
この海外事情を知るインフォコム社から、日本でも社外の知恵を巻き込んだ新規事業育成などのインキュベーションができないかとの打診を城野さんが受けたのが昨年の夏頃だという。
 
「私も国内のヘルスケア領域の活動分析をはじめ、米国で先進的活動をしているROCK HEALTHやBLUE PRINT HEALTHを訪問してインタビューしてきましたが、ヘルスケア領域に特化しているスタートアップのエグジットは多くなく、まだビジネスモデルとして結果が出せるようになっているとは言えない状況であることを確認してきました。日本でやってもおそらく時間はかかるだろうと感じました。
 
しかし、何か始めないと何も出てこないだろうということで、まずは割り切って人とアイデアが集まってくる仕組みづくりに集中しましょう、例えば今まで会えなかった人や今まで無かったような支援が集まってくる仕組みをつくりましょうということになりました。
 
その中でまずは定期的にセミナーをしましょう、2つめにビジネスプランコンテストを開きましょうというカタチが決まったのが10月末でした。3月末に一区切りをつける前提だとすると、コンテストを3月に実施とすると11月から告知を始めなければということで急ピッチで作業が進み今まできたという感じです」
 
なんと約4ヶ月ちょっとで告知からビジネスプランコンテストのファイナルまでドライブしたことになる。
 
ほぼ同じタイミングで他社さんもオープンイノベーションを仕掛けられ始めている。
 

答えがでていないから面白い!

「真剣にこの状態(日本に医療健康業界の現状)をなんとかしなければならないと考えている方がいて、その方々が最近連携をしたり新しい動きが出てきていると感じています。今こそ変化が起こっていくタイミングではないかと思います。
 
ただ、勉強すればするほどこのヘルスケア領域の難しさも分かってきています。
ITやテクノロジー系の競争原理が働かないとか、規制とか制度の積み重ねもある中でそれを単純に壊すということでは解決ができないし、予防未病領域もビジネスモデルの答えが出ていない。
 
でも課題の大きさとか、国内で市場が毎年拡大している領域は他にはないわけです。ここで今後何かが起こるということは間違いない。今が本当のその知恵競べや幕末のちょっと前のタイミングなのではないかと思います。まだ、少し大変かもしれませんが大きな変化に結びつくと思うのです」
 
今回のビジネスプランコンテストの運用上の特徴として、参加者はレクチャーを受けながら自分たちのプランを磨いていくプロセスでメンター役を置いた。
 
「参加者から他人に指摘されるとか、他人に意見を言ってフィードバックをもらうとか、これらは起業に向けたプロセスで役立つという意見ももらえました。今回の参加者はレベルも高く、それなりに自分の領域でやっていける方々ばかりだったのですが、そうであればあるほど一緒に悩みを共有してもらったり、第三者的に意見してほしいというニーズが明確になったのです」
 
ここでメンターを勤めたのは実はインフォコムの社員。
彼らは起業の経験がある訳ではないがビジネスはしっかりと進めている人たちで、そういった枠組みでメンターが機能したことはとても価値のあることだと思われる。
 
「第一フェイズは終了し、第二フェイズとしては最終的には事業が起こる、市場が出来るようにしていきたいし、新たに起業をしたい人がどんどん飛び込んで来てくれるようにしていきたいし、本当のヘルスケアのベンチャー、スタートアップマーケットをつくっていきたいですね」
 
今年度は領域を絞った角度でできないかと企画中とのこと。このヘルスケア領域での新たなマーケット・ビジネスモデルづくりに意欲を持つ企業やビジネスパーソンと積極的議論もしていきたいという。
 
 
 



取材後記:
実は小生もこのコンテストの審査員として参加させてもらったのでプロジェクト展開のスピード感覚を知る一人でもあります。
城野さんたちが始めたこの起こりは一筋の流れから波になっていく予感があります。ヘルスケア関係者大注目のプロジェクトです。
 
 
 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2015年4月15日]