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2009.11.09 株式会社NTTドコモ 法人事業部 ソリューションビジネス部 モバイルデザイン開発室 担当課長  堀口 賞一 氏

保健指導や健康管理を継続的に支援するサービスとしてNTTドコモ「ウェルネスサポート」を 2009年6月よりスタートした。このサービスは体重体組成計・血圧計などの健康機器や、携帯電話内蔵の歩数計より取得したバイタルデータなどを携帯電話を通してウェルネスサポート・サーバ(バイタルデータ収集基盤)に収集する。各保健指導機関やヘルスケア関連企業は各々が提供する健康サービスと収集されたバイタルデータなどを連携させることでより効果的なサービスを効率的に実現できるというものだ。この「ウェルネスサポート」の構想からリリース、そしてその推進をご担当されているNTTドコモの堀口課長に背景や今後について伺った。
堀口 賞一[ ほりぐち しょういち ]
1991年NTT入社、2000年からNTTドコモ。近距離無線技術を用いたモバイルサービス、ソリューションの企画、開発に従事。現在、健康市場におけるICT活用に興味を持ち「ウェルネスサポート」サービスを立ち上げ、ビジネス展開中。肥満予防健康管理士の資格を持っている。

健康をテーマに携帯電話ができることは何か?

プロジェクトのスタートは2007年10月に遡る。2008年4月より始まる特定健診・特定保健指導事業を視野に入れて健康をテーマに携帯電話ができることは何か?どんなサポートが可能なのか?について、まず既存の健康機器メーカーや健康サービス事業者へのヒアリングから始めたという。 「既存の健康サービスの課題に関していくつかのメーカーがコメントしてくれたのは、パソコン利用を基本に展開されている健康サービスは、気軽さや継続性に課題があることです」 ここに携帯電話による気軽さが貢献できるのではとの可能性を見出す。 一方、サービス事業者(ウェブサイトなどにて様々な健康情報や記録機能やコミュニティなどを提供している)へのヒアリングでは健康サービスを充実させるために、顧客の日々の健康情報を如何に集めるかという課題があり、この部分をNTTドコモが提供することにより、より良いサービス構築に貢献できるという確信を得た。 携帯電話は単に通話機能だけでなく日常生活をサポートすることも役割であり、その中で「健康」は重要なテーマである。そこで健康サービス事業全体の意向に応えるサービス構築から着手したのが「ウェルネスサポート」である。 報道発表後、問い合わせは多く「健康増進を進めたいという企業がとても多いと実感している」という。

FeliCaPlugの登場、連動可能な健康機器増加に期待

この度、CEATEC JAPAN2009で発表した健康機器の測定情報を携帯電話に瞬時に転送できるFeliCaPlugの存在は注目だ。小型、低コスト、低消費電力により、これまで困難だった健康機器への搭載が可能になる。そして、これを内蔵した健康機器が普及することによって、多くの生活者が簡単に健康機器データを携帯電話に記録蓄積できる可能性が広がる。 ここで現時点でのウェルネスサポート・パートナー企業を紹介しておく。 ◆ウェルネスアプリ対応健康機器(2009年9月現在) オムロンヘルスケア:体組成計・血圧計 タニタ:体組成計・血圧計 A&D:身長体重計 ◆パートナ企業のサービス(2009年9月現在) 旭化成ライフサポート:「げんき!食卓」 NTTレゾナント:「gooからだログ」 NTTアイティ:「ヘルスダイヤリー」 オムロンヘルスケア:「健康達人Pro・ウォーキング達人」(予定) コナミスポーツ&ライフ:コナミスポーツクラブ(予定) タニタ:「からだカルテ」(予定) ダブリューエム:「ウォーキングポイント」(予定) ベストライフプロモーション:PHRサービス「ヘルスアップWeb」(予定) ウィングスタイル/カシオ情報機器:ソーシャルワークアウトサービス「Fit Smart」(予定) NECモバイリング:健康手帳「Cナビゲーター」(予定) これらのリストを見ていただければ、そうそうたるメンバーであり、現在の日本において健康サービスで先行する企業ばかりであることに気づく。

健康になりたいニーズと健康にさせたいニーズのマッチング

「お話をいろいろな方としていると、生活者を健康にさせたい方(医療関係者、自治体や企業で保健事業に関わる方)のニーズも強いですし、個人でより健康になりたい方も多くなっていると感じています。健康市場の拡大には、「健康にさせたい方」「健康になりたい方」この2つのニーズに気軽に応えるサービスが必要であり、両サービスが両立しながら、両サービスが両輪となり健康市場を盛り上げていかなければならないと思っています」 「各健康機器メーカーが独自の技術で作り上げた測定データをドコモが中立的な立場で標準的なフォーマットに変換し、標準的なしくみで運用できるようになったことは大きな価値があると思います。また、時には緩衝材的な立場で、「お客様とお客様をつなぐ」という意味からもキャリアであるドコモがやるべきサービスではないかという思いがだんだん強くなってきています」

IT活用健康サービス市場という新しい市場の幕開け

ITを活用した健康管理がより気軽に多くの生活者が使えるようになることによって「健康管理」に対するとらえ方が変わっていく可能性があるのではないだろうか。 「自分の健康を気軽に日々チェックしながら管理していく、そのためには自分の健診データや日々の健康データを自分で管理できるインフラが整っていくべきです。今は個人の健康データを事業者が管理するしくみになっていますが、将来的には個人が管理できて、それら健康データを用いて、いろいろなサービスを必要に応じて適切に受けていくことでより広がりが出てくると思います」 また、IT技術は携帯電話だけで完結するものではなく、リアルコミュニケーション場面とも連動していくべきだと言う。 「トライアルをやって感じたことは、ユーザは技術を求めているのではない」との認識のもとユーザ視点で使い勝手のいいユーザインターフェイスを設計してきたとのことだ。サービスが運用され、参加者が増えていくことで様々な課題も見えてくるはずだが、新しい価値観が根付くまで時間が必要である。IT活用健康サービス市場が今後どのような成長をしていくか注目を続けたい。 [ 取材日:2009年10月22日 ]