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2008.05.26 KDDI株式会社 コンシューマ事業統括本部 コンテンツサービス企画部長  竹之内 剛 氏

ワンセグ(モバイル機器向けの地上デジタル放送)や音楽配信、決済機能など、携帯電話はもはや単なる音声端末ではなく、日常生活に欠かせないものへと進化してきた。ナンバーポータビリティー制度(MNP)がスタートしたことをきっかけに、携帯電話事業者は、いかに手放しづらい存在になるかを課題に、独自の新サービスを展開している。 熾烈な競争を極める中、2008年1月のサービス開始以来、4か月で10万人を超える会員が参加し、注目を集めているのがKDDIが提供する『au Smart Sports』だ。今回は本サービスの企画を統括する竹之内さんにサービスのコンセプトや特長についてお聞きした。
竹之内 剛[ たけのうち つよし ]
コンテンツビジネスを創世記より担当しており、今年は『ライフスタイル戦略』を強力に推進する。『au Smart Sports Run&Walk』を自ら試しているうちに、ランニングが一番の趣味に。

ライフスタイルに合わせた携帯サービスを展開

『au Smart Sports』は携帯とPCを使ったスポーツサポートサービス。第一弾の『au Smart Sports Run&Walk』は、専用アプリと専用サイトで構成され、携帯電話のGPS機能によって、ランニングやウォーキングのペースサポートや移動距離、消費カロリーなど確認することができる。無料で利用できるライト会員と、月額105円のベーシック会員(2009年1月31日まで無料キャンペーン中)がある。 メインターゲットは、20代後半から30代前半の女性。通話やメールなどは頻繁に利用するが、携帯に備わっている他の機能やサービスを活用していないことから、あえてこの世代の女性をターゲットにしたサービスを企画したという。 「この世代の女性は向上心があり、そのための自己投資にも積極的。特にヨガやランニング、ウォーキングなどスポーツを通じて自分を磨きたい人も多いです。今回の企画は社内では「ライフスタイル戦略」と呼んでいるのですが、携帯の機能を押し付けるのではなく、ユーザーの好みやライフスタイルに合わせて、サービスやコンテンツを提供できないかと考えたのが出発点でした」と竹之内さんは話す。 2007年にアディダスとのコラボレートでランニング支援プログラム『adidas GPS RUN』のプロモーションを行ない、手応えを感じたことも、企画立ち上げの理由となった。

スポーツへのイメージを変え、おしゃれで楽しいものに

PCや携帯電話、ワイヤレスシステムを使ったスポーツ支援サービスは、すでに他社でも行なわれているが、『au Smart Sports』はターゲットをより意識し、ファッション性(おしゃれ感)を重視している。サポートサービスの第一弾として、スポーツ初心者でもすぐに始められるよう、ウォーキングやランニングを選んだ。 「スポーツというと汗臭い、つらい、というイメージが強く、興味があっても踏み出せない女性が多くいます。また、いままでのスポーツ支援サービスは、中級者以上または男性向けのものが多く、自分磨きのためにスポーツを始めてみようといった女性は、ちょっと使いづらいところがありました。そこでおしゃれに、初心者でも楽しく続けられるように……という思いを込め、『au Smart Sports』というネーミングにしたのです」 しかし、健康や体型への関心は女性やスポーツ初心者に限ったことではない。当初から男性の利用も見込んでいたが、実際にサービスを開始してみると、メタボリック対策に運動を始めた中高年や、ベテランランナーの利用も多いという。ヘルスケアビジネスのターゲット設定においては、女性が火付け役になることが多いが、本サービスでもその傾向にある。

「Fun Run」をコンセプトに、初心者向けのサポートを充実

ランニングを始めようにも、どのぐらいのペースで、どんな風に走ればいいかわからない。そんな女性のために『au Smart Sports Run&Walk』は「Fun Run」をコンセプトに、さまざまな工夫を取り入れている。 無料会員メニューのペースメーカーモードでは専用アプリ『Run&Walk』でペースを設定すると、バーチャルトレーナーが走り方をアドバイス。毎日、異なるトレーニングメニューでステップアップしていくので、初心者でも簡単に始めることができる。有料会員専用メニューのパーソナルトレーナーモードでは、プロランナー・谷川真理さんがレベルに合わせ、走り方の基本からレベルアップまで丁寧に指導する。 「また、運動の記録を携帯やPCに自動保存したり、ほかのランナーの走った履歴を見ることができるから、モチベーションのアップにつながります」と竹之内さんは話す。

携帯だからこそできる、サービスの特長

『au Smart Sports』は、携帯の機能をフル活用したサービスを提供している。 「いままではワークアウトをするのに、飲み物や財布、携帯オーディオプレイヤー、携帯電話を持っていく必要がありました。でも、いまや携帯電話だけを持っていけばいい。音楽を聴きながら走り、ケータイでスポーツドリンクを買えるわけですから」 「その場で携帯から専用サイトにアクセスすればリアルタイムで、どこでどのくらいの人が走っているのかがすぐにわかります。さらに、ウォーキングやランニングをしている最中に距離、タイム、速度、消費カロリー、地図の確認もできる点が大きな特長です」 また、『au Smart Sports』はPCサイト『Run&Walkサイト』も展開している。 「PCサイトでは、携帯サイトでは実現できないようなコンテンツやサービスを提供しています。みんなが走る距離を合算して、月までの到達距離を目指す『月 ×Run&Walk』という企画や、都道府県別に登録者がどのくらいいるのかなど、自分以外にもワークアウトを楽しんでいる人がいることを意識できるような内容を心がけています」

今後の展開

20代後半から30代前半の女性を意識してサービスを始めたが、今後はターゲットを広げていきたいと竹之内さんは話す。また、フルマラソンなど長時間にも対応できるような省電力化や、ユーザー同士のコミュニティ機能の強化などを進めていきたいという。 「初心者の女性が一歩踏み出して、スポーツを楽しむというのがコンセプトなので、かなり障壁を下げて、“歩くところから始めよう”というところからスタートしています。でも、男性や中級レベルの人にとっては物足りなさがあったんですね。ユーザーのレベルや目的に合わせてアプリを進化させたり、ターゲットを広げていくことを考えています。」

■取材を終えて

ライフスタイル戦略を通じて、ライフスタイルをより意識した携帯の新しい使い方を提案。差別化されたサービスとなっている。携帯電話の機能の進化とともに、『au Smart Sports』から今後どのような健康支援サービスが生まれるか楽しみだ。