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2008.01.08 ヘルスコンサルティング・インク 代表取締役  芝田 竜文 氏

高齢者の増加、生活習慣病対策など予防医療への関心が高まってきた現在、さまざまな商品・サービスが登場してきている。しかし、一律のサービスでは対応しきれないユーザーや自分の状況に合わせたカスタマイズ・サービスを求めるユーザーも多く存在する。 トレーナー・インストラクターとして19年以上の実績を持つヘルスコンサルティング・インク代表取締役 芝田竜文氏は、以前より施設運営者やユーザーから望まれていた『個人別トレーナー派遣指導』を国内で本格的にスタートするため2001年に同社を立ち上げた。今回は『個人別トレーナー派遣指導』を中心に、同社が考える個人指導のあり方をお聞きした。
芝田 竜文[ しばた たつふみ ]
1990年大阪YMCA社会体育専門学校卒業後、某大手ホテル内ヘルスクラブでトレーナーの経験を経て、関連の新規開業のホテルでヘルスクラブマネージャーとしてクラブの運営・管理に携わる。2001年HEALTH CONSULTING INC.設立 (アメリカスポーツ医学会HFI・日本YMCA同盟FI・上級体育施設管理士・応急手当普及員)

一律のサービスでは対応できないユーザー層がいる

健康への関心の高まりもさることながら、現実にはもっと深刻な問題に直面している方々もいる。皆と同じように運動をしたいが、施設に通うのに付き添いが必要であったり、ひとりでは着替えができないなど、個人の努力だけでは補えない人。また逆に、一般的な運動指導だけでは自分の目標を達成できないアスリート(アマチュアも含む)なども一律の指導では対応できない。 「今でこそ健常者の方の健康意識(予防意識)が高まってきましたが、中高年を中心に運動をしたいが自分のからだの状態、環境的にもどうやって良いかわからない、誰に相談したら出来るようになるのか教えて欲しいとの相談を受けてきました。以前はそのようなサポートを受けられる施設や団体はありませんでした」と芝田さんは話す。

ユーザー個人にあった「個人別トレーナー派遣指導」

個別のユーザーから相談を受ける以外にも、運動施設運営者などから「必要とするユーザーには個別指導を提供してあげたいが、サービスとして導入するのは現状では難しい」との話も聞かされていた。以前より個人それぞれにあったトレーニング指導を実現したいと考えていた芝田さんは、2001年10月にヘルスコンサルティング・インクを設立し、個人や団体、施設へのトレーナー派遣を中心とした事業をスタートした。 同社が提供する『個人別トレーナー派遣指導』はパーソナルトレーナーが自宅に来て指導してくれると言った運動指導だけに留まらず、まず健康診断や形態・体力測定、アンケートをもとに、個人の目的、健康状態、生活習慣、体力レベル、既往歴、職歴、家族歴などの個人情報を、本人が明示可能な限り収集する。それを総合的に評価判断し、リスクファクターを抽出・理解した上で、その人にとって運動することが有益であるかを見極め、ドクターや栄養管理士と共に医学的、科学的に安全で効果的かつ楽しい運動プログラムと食事などの栄養指導を提供する。無論、診断・治療行為は決して行わない。 ここまで徹底した分析によりプログラムを作成するので、そのユーザーだけにあったオンリーワン・プログラムが提供される。 また、芝田さんはサービス提供と同時に、トレーナーの地位向上が、より良いサービスを提供するためにも重要な位置付けとなるとも考えている。 「サービスを提供する側であるトレーナー、またサービスを受けるユーザーも、それぞれに接し方を誤解している人は多いです。まずトレーナーは接客業であることを意識すべきです。『先生』と呼ばれて偉ぶるのでなく、そのユーザーのために問題は何かを追求し、謙虚に勉強し、そして解決する。ユーザーもトレーナーと真摯に向き合い、問題を解決していける関係性を築いていかなければなりません。そのためにもトレーナーとは何なのか、どのような存在であるべきなのかを、若いトレーナー達に指導しています」

ユーザーもスタッフもコミュニケーションがカギ

現在、首都圏で80名程のパーソナルトレーナーが登録し、活躍している同社では、ユーザーへより良いサービスを提供するためにも、同社とトレーナー間のコミュニケーションを蜜にする役割として、専門のコーディネイターが各施設などを定期的に訪問し、日々現場で発生する問題、相談を一緒に解決するために動いている。 「コーディネイターは全員、元トレーナーや施設管理経験者です。普通なら見落としかねない問題も彼らの経験を活かして吸い上げてきます。それを社内で検討し、解決策を導き出すのです。その情報を各地に派遣されたトレーナーにeメールを使って情報の共有を図ったり、一緒に議論しています」と芝田さん。 これにより、個別に活動するトレーナーのモチベーション、質を高めている。同社はまずスタッフへのコミュニケーションを大切にし、スタッフもそのようにユーザーと接していけるように指導を行っている。

提供すべきは「生きがい」と「感動」を共有できること

より専門性の高いサービスへの要求が増える中、最終的に提供すべきは「生きがい」と「感動」を一緒に共有できることだと考える芝田さん。 「運動は辛いものではなく、楽しく気持ちの良いものであることを伝えたいのです。適度な運動を続けることでこんなにからだは軽くなり(自信が付く)、まだまだいろんなことにチャレンジできる(意欲的になる)と感じて欲しいですし、その過程を一緒に経験していきたいと思っています」 どんな条件のユーザーでも、最後に辿り着きたい、導いてあげたい目標を明確に持ち指導にあたれば、必ず満足してもらえると信じてこの事業に取り組んできたという。

今後の展開

益々需要が伸びる個人別トレーナー派遣指導。生活習慣病が気になる中年層がパーソナルトレーナーを要望してくることは、まだ少ないとのことであるが、今後、特定保健指導の枠組みではカバーしきれない領域もあり、個別指導が必要とされることが予測される。 「今は率先して特定保健指導に参入しようとは考えていません。しかし、個別指導でなければ解決できない問題もあるはずです。今後は状況を見て、そのような要望が来たときにどう応えられるかを考えていこうと思っています」と芝田さん。 これからは企業からの相談が増えることも想定していかなければならない。それに応えるためには、今以上に増加する派遣トレーナーとのコミュニケーションをどのように行い、質の高いサービスを提供していくのか、検討していかなければならないことは多い。

■取材を終えて

「まだまだ道半ばです」と語る芝田さん。終始、落ち着いたやさしい口調でお話いただいた。いろいろな可能性が広がる健康市場ではあるが、「基本は個人個人にあったプログラムで生きがいと感動を得てもらうことが弊社の提供すべきサービスです」と、明確な目的意識を持って事業に取り組んでいる姿勢に、サービスへの安心感を得られる取材となった。 [ 取材日:2007年12月14日 ]