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2013.7.26
株式会社プログレッシブF97
代表取締役 岩切 誠 氏

ファンクショナルトレーニングがフィットネス業界で注目を集め始めているが、まだ導入期であることも確かだ。そのような中、ファンクショナルトレーニングを核としたジムが2012年7月におそらく国内でも珍しいばかりか大田区仲池上という住宅街の中にオープンした。創立者岩切さんに戦略とコンセプトを伺った。
プロフィール
岩切 誠[いわきり まこと]
1987年「日本たばこ産業株式会社」に入社。JTの新規事業として「スポーツクラブトリム」の運営に5年間関わる。20年在籍後、フィットネス業界に転職。店舗マネージャー、教育ディレクター、新規事業室長、事業部長を歴任し、2012年3月退社。フィットネス業界の「新しくも正しいビジネスモデル」を確立するべく「株式会社プログレッシブF97」を設立。2012年7月に東京都大田区に『fitbox FunC』をオープンさせる。ViPRナショナルトレーナー。

認知率は0%。今までの常識を疑うことから

「認知率は0%でした」と話す岩切氏。ジムの前に立ち、道行く近隣住民に気軽に声をかけても誰ひとり地域の人はファンクショナルトレーニングのことを知らなかったという。フィットネス業界のマーケティングはいかに間違っているかも合わせて感じたとのこと。
 
通常のジムオープンでは対象商圏内にチラシを配布し、◯◯%オフのキャンペーンを実施するのがほとんどだが、岩切氏はこれを誰も幸せにならないシステムと思っており、あくまでも中身での勝負を始め11ヶ月にして単月黒字に漕ぎ着けた。
 
なぜこの立地にしたのかを聞くと
「今までのジム立地のルールであれば駅周辺になりますが、これまでフィットネスに参加していなかった20-40歳くらいの現役主婦を考えたコンビニエンス性で住宅街立地にしました」とのこと。
 
ファンクショナルトレーニングは、一般的なフィットネスクラブで行う筋力トレーニングではなく、日常生活や好きなスポーツ・アクティビティを楽しむ場面で、より快適に動ける体づくりに主眼が置かれているという。
 
fitbox FunCでは、短時間で高効果が期待できるトレーニングを提供すると同時に、ジム内ではベビーカーを持ち込んでのトレーニングや5才からのお子様と一緒のトレーニング提供など運動機会の少ない女性をサポートするシステムも日本初導入している。
 
注目が集まるにつれ、業界関係者が同地を訪問し一様にするコメントは「不便ですね」だが、「それはあなたにとっての不便であって、我々のカスタマーにとってはなんら問題がないですよ!主婦の何%が駅を使うのですか?」と返すという。
つまりこのジムは今までのフィットネス業界の常識を疑い、新たな成功フォーマットを創出する挑戦でもあることがわかる。
 
筆者は新たな可能性を育てていくという視点が鮮明だと感じた。子育て世代の主婦がトレーニングをし、自分が体得してかつ体の動かし方を子供にも教えるシーン。かなり望ましい!
 

自分が売りだ!

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一番聞きたかった質問をぶつけてみた。
『なぜ?ファンクショナルトレーニングなのか?』
 
「前職で公共施設の運営を担当したとき、一発勝負で参加者を楽しませる必要性を感じたのがきっかけです。その目的で探し、出会ったのがファンクショナルトレーニングでした」
 
会員制フィットネス施設であれば会費は2ヶ月分くらい前払いされ、複数回の施設利用の中で満足を確保すればいいという考え方が成立した。しかし、公共施設は一回単位で参加者が料金を払うのでその時が面白くなければ来なくなるという見方が背景にあったのだという。
 
それと、岩切氏独特のフィットネス業界への問題意識として、トレーナーが商品として成立していることの必要性を強く感じていたことも、ファンクショナルトレーニングというトレーナーの技術が提供するトレーニング品質に直接影響する領域に向かわせた一因とも感じた。
 
「このジムはボクが売りなんです!と言えるモデルをつくりたかった」と言う。
 
ファンクショナルトレーニングは、マシントレーニングと違い道具を使うものであっても動きの自由度が高い。お客様の動きをどれだけ見えているか、そして目の前で楽しませ、きちんと効果を上げるところまでをコミュニケーションドライブできなければならない。
 
サービスの特性のひとつである価値の「生産」と「消費」が同時進行している正にパフォーマンスをトレーナーとお客様と一緒に創るということなのだと思った。正にトレーナー品質がものをいう領域だ。
 
 
岩切氏は以前こんな経験があったという。
「20代後半のインストラクターをやっている部下が結婚するので退職するというのですね。結婚して食っていけるだけの収入が得られるか不安になったのでしょう。トレーナーが自分の能力を発揮して、お客様を満足させ、かつ持続性あるビジネスモデルとして成立させなければならないと思っています」
 
『ボクが売り!』のジム、スタートしてまだ1年だがかなりの手応えを感じている様子。fitbox FunCの今後も目が離せないですね。
 

 
インタビュー後記:
岩切氏の姿はフィットネス業界のイベント会場なので何度か拝見していたこともあり、今回のインタビューでも初めてではないほど親近感を持ちながら話を伺った。でも、あとで考えるとこれも岩切マジックなのかもしれないと感じている。お客様と日々面と向かってその日最高のフィットネスパフォーマンスを引き出す岩切氏はそのセッションを既に1,000以上こなしてきているのだ。きっとここから「ボクが売りです!」トレーナーが何人も育っていくはずだ。

 
[取材日:2013年7月19日]