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2014.1.28
株式会社元気学校
代表取締役 校條 諭 氏

今回登場いただいた校條さんは、実は2006年にも一度インタビューさせていただきこれで2回目となる。才人応援企業というユニークなコンセプトを掲げ元気学校を運営し、現在に至っている。アンチエイジングの切り口を当初から打ち出し今その実態はどのように変化してきたか?今後の元気学校はどこに向かって行くのかを伺った。
プロフィール
校條 諭[めんじょう さとし]
株式会社元気学校代表取締役、NPO法人みんなの元気学校代表理事、ネットラーニング社外取締役、つながりのデザイン研究所取締役ほか野村総研、ぴあ総研を通じて、情報社会や消費者のメディア利用行動の研究に従事。2005年健康サービス会社元気学校を設立、2006年ノルディックウォーキングの専門サイトを開設。2012年足腰元気をスローガンとして介護予防を推進するNPOみんなの元気学校設立。
著書:『メディアの先導者たち』(編著、NECクリエイティブ、1995年)、『はたらく 高齢者の多様なはたらき方』(分担執筆、エコハ出版、2013年)

健康を実現する柱は「医食体笑」!

まずは再度元気学校のコンセプトや運営メニューを教えてください。
 
「社名のとおり、元気を生み出すさまざまなテーマについて学びの場を提供していくというのが基本コンセプトです。元気の素としていちばん重要なのが健康です。健康を実現する柱を「医食体笑」という標語で表しています。おわかりのように医食同源をもじったものです。食と運動(体)が2本柱で、それを支える安全ネットが医(医療)、そして全体をくるむのが笑(笑いや表現、コミュニケーション)です。現在は、「体」の分野の、特に「足腰元気」に重点を置いています。
 
運営メニューとしては、ネットメディア(ウェブサイト)の運営、セミナー・体験会の開催、ネットショップの運営、それにコンサルティングやサイト企画などの受託にわかれます。主な収入源は、物販および受託収入です。すべてを独自にはできないので、パートナー企業の力も借りています。
 
元気学校は2005年に設立しました。設立当初からしばらくは、アンチエイジングやメタボがメインテーマでした。それが近年は、ロコモに重点が移ってきています。
 
その大きな契機となったのは2006年の夏、信州で私がノルディックウォーキングと出会ったことでした。森林セラピーツアーのメニューの中に、森の中でのヨガやブナ林散策などと並んでノルディックウォーキングがあったのです。初めて体験して、これは必ず日本で普及すると確信しました。そこで、旅行から帰ってすぐにサイトの開設準備にとりかかりました。それが「ノルディックウォーキング・ネットワーク」です。
 
ノルディックウォーキングは、2本のポールを持って歩くのでウォーキングでありながら全身を使って効率のよい有酸素運動になります。街歩きや名所巡りと兼ねて仲間と楽しく健康づくりを追求できますし、メタボ対策にもうってつけの運動です。
 
一方、高齢化の進展とともに介護予防が社会的テーマになりつつありました。そんなときに、同じ2本のポールで歩く方法ながら、歩行に不安のある人向けの「ポールウォーキング」と出会ったのです。加齢などにより足が弱ってバランスが取りにくくなった人が、2本のポールを持つとバランスよく歩けるようになることがわかりました。
 
ごく最近のことですが、線維筋痛症という難病で2年間寝たきりに近い生活をしていた女性が、2本のポールでたちどころに歩けるようになったという出来事がありました。この女性は、全身の痛みによって筋肉がこわばり、体のバランスを取ることができなくなっていたのです。それが、ポールを持つことによって、あたかも動物の前足のようにバランスよく体を支えられて自由に歩けるようになりました。
 
難病の人は一見特殊なケースのように見えますが、実はロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)対策の典型的なモデルだと確信しました。歩行に支障が出ている多くの人たちのための歩行回復の方法を示唆していると思うのです。そういう人たちにとっては、ただ「歩く」というそれだけのことが大きな喜びなんです。
 
こうして現在では、健康や元気を生み出す幅広いテーマを意識しつつも、介護予防のためのロコモ予防、ロコモ対策が最も重要な取り組みテーマになっています。
 

元気学校への社会的ニーズの高まり!

「足元の現場を持つことと、広がりを持つことが重要だと思っています。そのために組織も拡充することとして、NPOを設立しました。
 
まず現場については、折々の単発のセミナーのほか、ノルディックウォーキングやポールウォーキング、体幹トレーニングなどの体験イベントを、都内や横浜などで多数開催してきました。NPO設立後は、2013年に「杉並ポール歩きの会」(杉ポという愛称で最近呼ばれていますが)を立ち上げて、スキー式フォームのフィットネスであるノルディックウォーキングと前方着地式の安定歩行法であるポールウォーキングの両方をカバーするユニークな特徴をもった会を運営しています。
 
このような地域密着の現場を持つことで、指導者や参加者たちと、面と向かう関係づくりができて、ミクロレベルでのニーズ把握が構造的にできます。
 
一方、元気学校の使命は、単に地域密着で活動をするだけにとどまらず、広く社会に対して発信ないしアピールしていくことにあります。ネットメディアを持つことはその重要な柱です。現在、協会やメーカーなどのサイトがいろいろありますが、いちばん中立的で有力なサイトに育っています。ただし、コンテンツの拡充や更新がなかなか大変なので、パートナーが欲しいと期待しています。
 
広がりのためのもうひとつの柱は、これから新事業として着手しようとしています。仮称「ライブネットスクール」です。
 
従来の学習もののライブ配信は、双方向と言っても講師側が学習者の顔を見ることができず、また、学習者が発言すると言ってもチャット式に一言コメントができる程度でした。それに対して、この構想では、ちょうどテレビ会議のように講師と学習者が相互に場を共有することができるというものです。しかも、あえて学習者も自宅ではなく、会場で参加するスタイルを中心に想定しているので、パソコンが使えない高齢者なども気軽に参加できます。この方式は、最近有名なビジネススクールがオンライン大学院と称して採用し始めて、おおいに意を強くしています。
 
ライブネットスクールでは、広く一般の人たち向けにロコモについて啓蒙する講座や、また、ポールウォーキングの指導者を目指すような中間的人材(それを私たちは才人と呼んでいますが)をターゲットにしたゼミのようなものから、まずは近々小さく始める予定です。さらに、このスクールでは、元気を生み出すテーマ全般に広げます。たとえば、脳の活性化、老親を元気に“育てる”法、シニアの社会参加・起業、IT活用などです。
 
以上のような事業の進展を踏まえて、組織的には2012年にNPO法人みんなの元気学校を設立しました。それまでも自称「非営利株式会社」といばって(?)いたのですが(単に儲かってなかっただけですが(笑))、地域で幅広い層の参加を得たり、自治体と連携していったりする場合に、NPOの立場の方が動きやすいことが多いからです。それで、ネットショップ以外のウェブサイトはNPOに移管しました」
 

そして元気学校は、、、!?

健康分野は過剰とも言える情報があふれかえっていますよね。
 
「スマホをこすればどんな情報でも出てくるような気さえします。しかし、本当に必要な情報がつかめなかったり、はやりの断片的な情報に振り回される消費者も少なくありません。クルマのナビと同じでナビに過度に依存していると、自分で地図を読むことができなくなってしまいます。
 
私はそういう風潮を「ナビ社会の指示待ち消費者」と呼んでいます。元気学校に参加する人には、個々の情報の位置づけを認識できるような座標軸、つまり判断基準を得ることができるようになってほしいですし、私たちもそれを支援するよう心がけてきました。
 
今年は、昭和24年生まれの人が65歳になります。これで団塊の世代の大半が介護保険証を持つことになります。これは、まさに「大介護時代」が近づいていることを予感させます。
 
大介護時代をいかに軽く乗りきるか、つまり、大量の寝たきりを発生させて重い社会負担の時代にするのか、そうではなく多くの高齢者が足腰元気で好きなところに出かけていける生活を送り、むしろシニア消費で経済も活性化するのかといった曲がり角に立っています。そのために、以上ご説明した活動を会社とNPOトータルの元気学校として取り組んでいきたいと願っております。
 
ひとつ付け加えれば、O2O(On to Off)リアル拠点の開設があります。仮称「ポールステーション」です。そこにはウォーキング用のポールが各種並べられていて、それを試用したり、歩き方を習ったりできます。また、「ライブネットスクール」のネット拠点としても位置づけ、そこを学びの場として受発信していくことが考えられます。商店街の空き店舗などを利用するなど、地域活性化にもつながるという夢を持っています」
 
現場コミュニティ目線でサービスを築き上げてきている校條さんのビジネスモデルは、B2Cではなく、今後きっと盛り上がるであろうBwithCになっている優れた事例として学ぶべきポイントはいっぱいあると思います。
 
 
元気学校公式サイト 


 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2014年1月21日]