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2014.5.1
株式会社クラブビジネスジャパン
代表取締役 編集長 古屋 武範 氏

古屋さんには2005年の年末に一度インタビューをしている。当時は、翌年のフィットネスビジネストレンドについて解説をいただいた。その後フィットネス産業も様々な環境変化を経験しながら今に至る訳だが、メディア社としての同社も様々なチャレンジを展開し、規模も拡大してきている。日本のフィットネスはどうなっていくのか?いくべきなのか?を伺った。
プロフィール
古屋 武範[ふるや たけのり]
株式会社クラブビジネスジャパン代表取締役社長。『フィットネスビジネス』編集発行人、『サービス革新』編集発行人。1985年早稲田大卒。同年セノー株式会社入社。'95年編集長として、フィットネス業界の経営情報誌『クラブマネジメント』創刊。'97年フィットネス業界のポータルサイト[フィットネスオンライン]開設。2000年社団法人日本フィットネス産業協会理事就任。同協会調査研究委員会委員長。'02年セノー株式会社を退社し、株式会社クラブビジネスジャパン設立。『フィットネスビジネス』(IHRSA刊『クラブビジネスインターナショナル』提携)を創刊。'05年フィットネス業界専門の求人サイト[フィットネスジョブ]開設。'06年インストラクター・トレーナーのキャリアマガジン『NEXT』創刊、フィットネスクラブのメンバー向けマガジン『LIVe』創刊。'07年ウェブ事業を統括する株式会社フィットネスオンラインを設立。同社の代表取締役に就任。IHRSAアンバサダー。テレビ・ラジオへの出演、新聞・雑誌への記事掲載、司会・講演・寄稿・執筆等多数。

ニーズあるとこころにメディアあり!

以前に比べ同社のメディアが増えている。まずはじめに、それぞれの役割を伺った。
 
「もともとフィットネスクラブの経営層に向けた経営情報誌『フィットネスビジネス』を刊行していました。このメディアは、どうすればフィットネスクラブの経営を通じて利益と顧客満足を最大化できるか、というテーマに対して重要な情報をわかりやすく、そしてタイムリーに提供することを目的にしています。
 
『月刊NEXT』は、トレーナーやインストラクターのキャリア支援のための情報誌(フリーマガジン)です。求人サイトの[Fitness Job]ともリンクして、フィットネス施設の求人ニーズとトレーナー・インストラクターの求職ニーズのマッチングを図っています。
 
『LIVe』は、フィットネスクラブの現会員さまと会員予備軍のためのフリーマガジンです。フィットネスクラブや公共スポーツ施設はもちろんのこと、スポーツショップや大型SC内のスポーツ用品売り場などにも置いていただいています。
 
当社の場合、各誌それぞれをターゲット・メディア化させ、各読者層のニーズに対応したコンテンツを都度丁寧にまとめてタイムリーに提供していますから、いずれも大変ご評価いただけています」
 
 
ウェブサイトも積極的に展開している。フィットネス業界総合情報サイトの[フィットネスオンライン]をはじめ、物販サイト、求人サイトと[GYMCO(ジムコ)]という口コミサイトをスタート。この[GYMCO]が生まれた背景と現在の運用状況などを伺った。
 
「私たちのミッションは、フィットネス×情報という切り口のサービスを、既述した各利害関係者に提供してお役立ていただき、生活者がフィットネスやスポーツ、クラブライフを通じて豊かな人生を送れるようにすることです。[GYMCO]は、このミッションの実現に直接寄与するサービスです。
 
生活者が自分に合うフィットネスクラブを見つけたいと思った時に、立地やアイテムなどの条件から簡単にそれを見つけ出せる便利な『フィットネスクラブ検索サイト』です。お客さまだけでなく、フィットネスクラブの方も(集客につながるので)大変喜んでいただいています」
 

ヘルスソリューション&ピープルビジネス

直球の質問だが、日本のフィットネス業界の課題は何だろうか?
 
「今のフィットネスクラブ、とりわけ総合型クラブのビジネスモデルは機能不全に陥っていると思います。誰を顧客にして、その顧客にどんな価値を提供したいのかがものすごく曖昧になっているので、まずはここをはっきりさせ、それから自社の強みを活かしたバリューチェーンの再構築を目指すことが大事だと思います。
 
そこでは総合型クラブが本来持つ強みを活かすことも大切です。広さや大きさ、アイテム・サービスの豊富さ、定期的に再投資できることなどを活かさない手はないでしょう。ここで小さいクラブができない魅力をつくるのです。
 
それからもっとお客さまを大切にしなければいけません。初期定着に取り組むクラブがありますが、これはお客さまからしたら当たり前のことです。在籍が長くなればなるほど顧客ロイヤルティが高まり、顧客生涯価値が高まるような運営をすべきです。その実現には、経営者がサービスデザインとその実行に強く関与していかないといけません。ですが、今のフィットネスクラブの経営者の多くは、そこから逃げているか、わかっていないため間違った経営をして悪循環に陥ってしまっています。
 
また、成長していくために、新業態・新サービスの開発にも当然取り組まなければいけないのに、そこへの取り組みが悠長です。過去の経験を捨て、ゼロベースで考え、もっと積極的に取り組むべきです。提供サービスについていえば、お客さまの目的に着目して、フィットネスだけでなく、スポーツや栄養、睡眠、生活習慣といったところにも価値あるアドバイスが提供できるようにしなければいけないでしょう。
 
このビジネスは、ヘルスソリューションビジネスであり、ピープルビジネスでもありますので、人と人とのつながりをつくるサポートをすることも大切になります。ここも課題といえますね」
 
 
古屋さんが注目している国内外の事例モデルをいくつか伺った。
 
「これだけ生活者の求めるニーズが多様化してきているので、戦略軸をどこに置くかがとても大切になります。そういう点からすると、対象顧客の求めるベネフィットをきちんと定めて強固なモデルを構築しているクラブが、今伸びていますし、そこに一番注目しています。
 
例えば、経験価値に軸を定めたモデルでは、米国のイクイノックスやデビッド・バートンが挙げられます。日本ではTIPNESS MARUNOUCHI STYLEやオアシスラフィールが挙げられるでしょう。
 
成果に軸を定めたモデルでは、アメリカで今急展開されているマイクロジム業態やブティックスタジオ業態を挙げることができます。前者はクロスフィット、後者はバーメソッドが代表です。日本では、R-body projectやトータルゴルフフィットネスが挙げられるでしょう。利便性に軸を定めたモデルということでは、米国ではエニタイムフィットネスやエリプスフィットネスが挙げられるでしょう。
 
日本では、カーブスや、ティップネスが展開しているファストジム24が挙げられます。バリューに軸を定めたモデルでは、米国のエクスペリエンスフィットネスやライフタイムフィットネスが挙げられます。日本ではゼクシスがこのポジションにあたるでしょう。
 
この中で私がモデルとして最も注目するポジションは、利便性に一番の軸を置きながらもサブの軸として成果にも少し立脚したモデルです。カーブスやDr.ストレッチなどが典型と言えるのかもしれません。対象とする生活者が通いやすい場所にあって、そこで『たった一つの価値』の実現のために絞り込んだサービスで勝負していく業態です。
 
異業種サービス業で今、『スマートエクセレンス』というモデルが着目されていますが、これに似ています。スーパーホテルやQBハウスなどがこのモデルをとる業態としてよくケースとして取り上げられていますが、一つの機能だけはエクセレントなレベルまで引き上げ、ほかは業界標準レベルかそぎ落としてしまうというものです。その代わり、価格はリーズナブルとなります」

新メディアへの要請

『サービス革新』という新メディアもスタートしているが、メディアの意図することはどんなことなのだろうか?
 
「日本は世界の中でも課題先進国と言われています。その課題を解決し成長していくには、日本のサービス産業に従事するプレイヤーの生産性を向上させていく必要があると思います。そこには、サービスイノベーションとサービスグローバリゼーションが欠かせないでしょう。
 
サービス×イノベーション×グローバリゼーションにかかわる有益な情報を、サービス業に従事する経営層に提供して、この国の成長を後押ししたいと考えたのです。また、この編集過程を通じて得られるナレッジは、フィットネス関連のメディアのコンテンツ力を高めるのにも寄与するのではないかとも考えました。実践に取り組みながら、、編集者自らも学びを深められるところにも着目したわけです」
 
 
最後に、今後同社が手がけて行きたい方向性やプロジェクトアイデアなどを聞いた。
 
「フィットネス関連の利害関係者に、ネット関連のサービスを拡充して貢献していきたいと思っています。特に、スポーツ・フィットネス施設の関係者、トレーナー・インストラクターの多くに貢献できる新しいサービスを考えています。
 
また、個人的には60歳をメドに、リアルなスポーツ・フィットネス施設の運営をしてみたいと思っています。先日、ドイツで活躍している岡崎選手が11部リーグのオーナーになったというニュースを聞いて、先を越されたかなと思ったのですが、日本でもどこか地方の体育館の指定管理者になって、子どもから大人までが楽しめる『週末フットサルリーグ』をつくり、スポーツを生活文化にしていく取り組みをしたいと思っています。
 
私の頭の中には、土曜日か日曜日に、フットサルを街のみんなと一緒に楽しみ、アフタースポーツでBBQをしながらビールを楽しんで、夕方、家族そろってみんなで帰路につくといったイメージが浮かんでいます」



取材後記:
絶えずアグレッシブな古屋さんの活動とその姿勢には多くのファンがいるしボクも共感しています。BBQ誘ってください!!
 
 
 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2014年4月28日]