旅と健康

今村貴幸 スポルツエグゼクティブアドバイザー

 以前、私の後輩(健康運動指導士)と話をしている時に、現在の日本は至れり尽くせりで、非常に便利な世の中になってきていて、それはそれで非常に良いことなのですが、それが一方では不活動につながり生活習慣病などの健康を害する一要因となっている。しかし、一度便利さを知ってしまえば、昔の生活に戻ることは難しい。という話をしていて、じゃあ、何か体験的に出来ないかと考えていたら、ヘルスツーリズムに出会いました。

 最近、ヘルスツーリズムという言葉を良く目にします。ヘルスツーリズムとは、「医学的な根拠に基づく健康回復や維持、増進につながる観光のこと(JTBヘルスツーリズム研究所)」、とあります。日本では昔から疲れた身体や病気を癒す為に、温泉地に滞在する湯治という風習があります。草津の湯や有馬の湯などは代表的な湯治湯とされ、ほかにも日本全国に分布しています。

 一方、英語のsportの語源を探ると、ラテン語のDeportareにたどり着くといわれています。Deportareは、De(away)とportare(carry)の合成語で、もともと「ある物をある場所から他の場所へ移す」ということを意味し、そこから「心の重い、嫌な、塞いだ状態からそうでない状態へ移す」つまり「気晴らしをする、楽しむ、遊ぶ」という事を意味するようになり、その後その言葉はフランスへ伝えられ、更にイギリスで伝わった後16世紀にsportとなって今日に至っています。つまり、運動・スポーツとは非日常活動のひとつとして考えられます。

 旅行も運動もどちらも非日常的な活動になります。これらの非日常的な環境に移動することや活動をする事によって、精神的リラクゼーションやリフレッシュなどが身体の機能を回復させる一助となっているのではないでしょうか(病は気からですから)。
適切な運動そのものの活動は、生理学的、生化学的に身体を良い方向へ変化させることは多くの研究で分かっています。

 現在ヘルスツーリズムは、その潜在的な市場規模は約4兆円とも言われ、新たにヘルスツーリズムが実証研究をしている「抗疲労・癒し」ビジネスは12兆円ともいわれている。ヘルスツーリズムのビジネスチャンスは大きいのではないかと考えます。

 健康志向の高まりが言われてから久しいのですが、運動や旅行などの非日常的な活動のコラボレーションは多くの可能性を持っていると思います。

 これまでに、ヘルスツーリズムとしては多くの企画が行われている。例えば、森林浴ツアー、タラソセラピー、ダイエット・シェイプアップツアー、医療機関と提携した健診ツアーやアンチエイジングなど。

 これからは、高齢者ならではの体験型ツアー(例えば、子供の時の生活に近い体験ツアー)や仲間作りツアー(例えば、グループワークを体験できるツアー)などが出来ないかと考えています。

また、個人的には、同じ病気を持っている維持期の患者さん(例えば心臓病)を集い、ウォーキングやハイキングなどのツアー(実際に私が所属している病院ではドクターや看護師の方たちと一緒に1日ハイキングを行っています)が広く行われたら良いと思うのですが。