[ヘルスコーチングの視線編]ICTヘルスコーチングの事例紹介1「オンラインパーソナルヘルスコーチングプログラム」
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[ヘルスコーチングの視線編] 2015年11月24日号
≫≫≫Author:里見将史
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前回は、「ヘルスコーチング × ICT」をテーマに、ヘルスコーチングをICTと組み合わせて展開する時のポイントをご案内しました。
対面や直接のコミュニケーションが基本であったヘルスコーチングですが、ヘルスコーチングの要素を切り出してICTと組み合わせることで、様々な形で「ヘルスコーチング」のアプローチが可能になります。
そこで今回から数回に分けて、「ヘルスコーチング × ICT」で私が実際に運用してきた事例を示しながら、その中から見えてきたことを解説したいと思います。
まず1回目の今回は、1対1のヘルスコーチングをオンラインだけで提供する「オンラインパーソナルヘルスコーチングプログラム」の事例をご紹介します。
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---ICTヘルスコーチングの事例紹介1
「オンラインパーソナルヘルスコーチングプログラム」
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「ヘルスジャーニー」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 新サービス、海外 ワークショップ・アプリ動向など12本
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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【テーマ:ICTヘルスコーチングの事例紹介1「オンラインパーソナルヘルスコーチングプログラム」】
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1.オンライン完結型の1対1のヘルスコーチングの仕組み
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ヘルスコーチングの基本は、個別性、パーソナライズなのですが、実際に個別性、パーソナライズを提供するとなると1対1での対話が必要です。
しかし、1対1の対話形式を実現しようとすると対面が基本になってきてしまい、サービスの拡がりが難しくなってしまいます。
その課題を解決する手段として、ICTとの組み合わせが有効に機能します。
1-1、メールとウェブを組み合わせたヘルスコーチング
ウェブやモバイルを活用したヘルスコーチングでは、テレビ電話やチャット形式のテキストやメールによるコミュニケーションなどを活用したコミュニケーション方法があります。
私が実際に提供しているのは、メールとウェブページを組み合わせたパターンとチャット形式のテキストのやり取りとウェブページを組み合わせたパターンです。
1-2、メールとウェブページのそれぞれの役割
メールやチャット形式でのテキストのやり取りについては、基本的にコミュニケーション、連絡ツールとしての機能、役割という位置付けになります。
メールやチャット形式でのテキストのやり取りと組み合わせて提供するウェブページの役割は、利用者自身の振り返り、ヘルスコーチからのフィードバックなど、対面でのコーチングでいう定期的な「セッション」と同じ位置づけになります。
そのため、メールやチャット形式でのテキストのやり取りでは、情報提供やティーチング的アプローチなど日々の取り組みに対するアプローチが中心です。
逆に、ウェブページを通したコミュニケーションでは、ある程度の期間をまとめた取り組みに対するアプローチになります。
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2.具体的なコミュニケーション
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では、メールやチャット形式でのテキストのやり取りとウェブページを通したコミュニケーションでは、具体的にどんなやり取りをして、どのように「ヘルスコーチング」のコミュニケーションをしていくのか、具体的な点をご紹介したいと思います。
2-1、メールやチャット形式でのテキストのやり取り
メールやチャット形式でのテキストのやり取りの基本は、以下のようなことを具体的に提供していきます。
・関連情報、参考情報の提供
・目標に向けてやること(行動)の意識づけ
・毎日の振り返りやその時の視点や質問
など
直接的な対話形式のヘルスコーチングと比べてICTを組み合わせることで、コミュニケーション頻度、接触頻度を増やすことが容易になります。
また、情報内容とタイミングを組み合わせて効果的に提供することも可能になります。
2-2、ウェブページを通したコミュニケーション
ウェブページを通したコミュニケーションでは、以下のようなことを具体的に提供してきます。
・メールやチャット形式でのテキストでやり取りなどの情報をもとにヘルスコーチからのフィードバック
・一定期間に対する自己評価
・変化の気づき、発見
・次の期間に取り組むべく行動(アクション)の設定
ウェブページを通したコミュニケーションでは、ヘルスコーチは利用者に対して個別にフィードバックを提供していきながら、利用者自身の振り返りや自己評価、変化の気づきなどを促すために、あえて入力してコーチ側に伝えてもらいます。
一方的な情報提供だけでは利用者の気づきが生まれていきません。
そのため、ヘルスコーチングでは利用者自身で気づいたことや発見したことは、言葉として身体の外に出す作業によって、双方向のコミュニケーションにしていきます。身体の外に言葉として出すことは自分の中での気づきや考えの整理につながっていくのです。
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3.減量を目的としたオンラインパーソナルヘルスコーチングプログラム
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上記で説明した仕組みで、実際に減量を目的とした3ヶ月間のオンラインパーソナルヘルスコーチングプログラムを提供しています。
このプログラムの目的は、一時的な減量ではなく継続出来る方法を身に付けて自分一人で実行可能な方法を見つけることです。
3ヶ月間のプログラム中で、最初の1ヶ月半は、減量に向けた行動(アクション)の中で、どれが自分に合っているのかを探す期間として位置付け、1週間に1回ウェブページでコミュニケーションを通したフィードバックを提供します。
そして残りの1ヶ月半は、最初の1ヶ月半で見つけた自分に合っている減量に向けたスタイルや行動(アクション)を習慣化、定着化するための期間と位置付けて、2週間に1回のウェブページを通したコミュニケーション頻度に落としてサポートします。
そして、メールやチャット形式でのテキストのやり取りについては、3ヶ月間を通して2日に1回のペースでコミュニケーションを継続的に行っていきます。
3-1、平均2.0キロ以上の減量と終了2ヶ月後でも全員が取り組みを継続
この3ヶ月間のプログラムでは、平均2.0キロ以上の減量結果になっています。減量体重の結果だけみると、大きな減量幅ではないように感じるかもしれません。
しかし、ヘルスコーチングは行動変容を支援することが目的です。
そのため、減量の数値も重要なポイントですが、この3ヶ月間のプログラムでは、3ヶ月後に利用者が行動を継続して、リバウンドしない方法を見つけることを基本にコミュニケーション、リレーションをあらかじめ設計し、実際のコミュニケーションでも、その部分を意識したスタイルで提供しています。
その結果、終了時のアンケートでは全員がこのプログラムで身に付けた減量にむけた取り組み、行動(アクション)を続けていけるという自信を持って終わりをむかえています。また、終了後2ヶ月後の時点でも、継続して取り組んでいることがわかっています。
この結果からもわかるように、ヘルスコーチングの基本である行動変容をサポートすることは、対面でなくてもオンライン、ICTだけの提供でも十分可能なのです。
3-2、ICTヘルスコーチングの基本はやはり設計が重要
ヘルスコーチングはコミュニケーション技法なので、対話、コミュニケーションの中で効果的に作用するものなのですが、ヘルスコーチが対面で会話しなくてもヘルスコーチングの要素をICTサービスに組み込むだけでも、利用者に対してヘルスコーチング的なアプローチが可能です。
その際ポイントになってくるのが、ICTのどの機能をどのようなタイミングで活用して、どのようにコミュニケーションをとっていくのかという設計が重要になってきます。
ヘルスコーチングでは、個別性、パーソナライズが基本的なアプローチですが、減量プログラムとしての基本的なシナリオは定型化して設計し、個別対応、パーソナライズする部分はフィードバックの時だけなどというふうに、全体設計と個別対応の部分的な切り分けを明確に整理しておくことによって、ICTでのシステム化などが可能になり、サービスとしての拡大が考えられるようになってくるのです。
今回はICTヘルスコーチングの事例として、オンラインパーソナルヘルスコーチングプログラムをご紹介しました。
ヘルスコーチングは対面や電話などの直接的なコミュニケーションが基本ですが、ヘルスコーコーチングのコミュニケーションの中でICTを活用できる部分、置き換えられる部分とヘルスコーチが直接コミュニケーションが必要な部分を明確にすることでオンラインパーソナルヘルスコーチングプログラムが十分可能なのです。
次回は、ヘルスコーチングの展開事例の2回目としてコミュニティスタイルのヘルスコーチングの事例とその中から見えてきたことをご紹介する予定です。ご期待ください。
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【ヘルスコーチングのサポート】
今回ご紹介したオンラインパーソナルヘルスコーチングプログラムに関しては、まだ日本でのサービス事例は私が知る限りでは、弊社がサポートした事例のみだと思います。というのは、「ヘルスコーチング」をヘルスケアサービスの視点で捉えて設計できる専門家が存在していないためです。
私は2006年にコーチングの資格を取得し、健康ビジネスの領域に応用できないかと検討してきた中から、ヘルスケアサービスのポイントとコーチングのコミュニケーション技法の中からヘルスコーチングとしての要素を整理し確立しています。ヘルスケアサービス領域を熟知し、且つヘルスコーチングの要素を整理している唯一の専門家として、オンライン、オフラインを含めてヘルスケアサービスにヘルスコーチングを組み込むための企画、設計はもちろん運用を数多く実施しています。
ヘルスケアサービスの活用や運用についてサポートしていますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「ヘルスジャーニー」
より健康な自身を楽しみながら体験的に成果を上げていく旅にお客様を連れていくというアプローチ「ヘルスジャーニー」が貴社のサービスラインにありますか?
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【3】今週の注目デジクリップ! <12クリップ>
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[1]キャノングローバル戦略研究所、2015年医療・介護改革の深層【PDF】
地銀協月報2015.10の特集「地域医療・介護の現状と将来展望」にて。世界が注目する日本の高齢化の行方など。(2015/11/10)
[2]日本気象協会とポーラ、美容アドバイスサイト「美肌予報」を開始
日本気象協会の気象データと、ポーラが持つ肌データをマッシュアップし、美肌を左右する気象情報をもとに地域ごとの肌変化を予測。美肌ケアのポイントや生活習慣・食事のアドバイスなどを随時提供。(2015/11/12)
[3]ハウステンボス、「ハウステンボス・サテライト H2 クリニック博多」開院ー「健康と美の王国」ハウステンボスとの連携を開始【PDF】
ハウステンボス・サテライト H2 クリニック博多は、最先端テクノロジーに精通した医師によるハイスペックなMRIやNBI内視鏡という超早期診断が可能な最先端システムを導入。(2015/11/13)
[4]ニッセイ基礎研究所、研究員の眼:「高齢者」やめませんか 「高齢者」の再定義こそ高齢者からの支持獲得への近道【PDF】
一口に高齢者といっても60代-85歳以上まで30年以上の年齢差があり、戦前・戦中世代と団塊世代とでは過去の生活体験や価値観はそれぞれ異なる。多様な高齢者を一括りに高齢者市場として捉えることは、現役世代に置き換えれば20代-50代までの親子ほど歳の離れた世代を一纏めにして眺めているようなものではないだろうか。(2015/11/13)
[5]総務省、「クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会 報告書」及び意見募集の結果の公表
同懇談会で取りまとめられた報告書(案)に対し意見募集を行ったところ、13者から38件の意見の提出があった。その結果も踏まえ「クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会 報告書」を取りまとめた。(2015/11/13)
[6]健康コーポレーション・ライザップ・ソフトバンク、ヘルスケアとICT領域における新サービス共同開発の合意に関するお知らせ
今後は3社それぞれが展開する事業を活用した「ヘルスケア・プラットフォーム」を開発し、これをベースにさまざまなヘルスケアサービスを提供していく。詳細はIRリリース11月16日参照。(2015/11/16)
[7]健康・医療戦略推進本部、第14回 健康・医療戦略推進会議 開催
議事は、「次世代医療機器開発推進協議会の開催について」の一部改正について、など。(2015/11/17)
[8]Food Connection、Food Guide講座2015 第3回「外国人の食生活と健康事情の今ー世界最大の食と栄養会議・展示会から読み取る最新情報ー」
開催日は12月5日(土)。10月に開催されたFNCEでのセッションや展示会の内容をふまえ、近年欧米を中心にトップアスリートの間でも注目されているグルテンフリー、その他海外で注目されている健康食品や健康情報など、外国人の食と健康事情を理解するための最新情報を伝える。
[9]mHealth Summit 2015:Games for Health Day
Games for Health Dayは、健康とヘルスケアの改善を目的とした最先端のビデオゲーム利用に焦点を当てた一連のディスカッション、ラウンドテーブルはもちろんのこと、個人でも参加体感できる実践的なワークショップが特徴。(2015/11/11)
[10]アレルギーや喘息防止に!お部屋の“空気の質”をモニターする『Awair』
家庭やオフィス内の“空気環境の質”をチェックする5つのセンサーを備えている。温度や湿度のほか、空気中に含まれる二酸化炭素や揮発性有機物質、塵のレベルを正確に測定し、空気の質を点数化して表示する。(2015/11/12)
[11]Fitbit、第3四半期で通算販売が約3,000万台に達し、180名近くの従業員を採用
第3四半期において480万台を販売し、4億9百万ドルの売上を記録。前年対比168%増。第3四半期終了時点で2009年に最初の端末を発売して以来フィットネストラッキングデバイスの通算販売台数が3,000万台に到達しようとしている。(2015/11/16)
[12]調査:スマホユーザーの58%がフィットネスや健康アプリをダウンロードしている
NYU Langone Medical Centerがアメリカ国内のスマホ所有者を対象に調査。約52%のユーザーは、運動をトラッキングする目的で健康アプリをダウンロードし、その一方で47%は食事のトラッキングを望んでダウンロードしている。(2015/11/17)
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