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[海外注目企業の継続支援編]2016年11月15日号
          ≫≫≫Author:脇本和洋
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こんにちは。脇本です。
 
デジタルヘルスは、デジタル単独でなく専門家が絡むことで新しいサービスを提供する「パーソナルヘルス」という時代がきています。
 
前号までで、「Ginger.io」「TrainerMD」「Mindoula」といったパーソナルヘルスの事例を紹介しましたが、今回は2015年設立のベンチャー「Farewell(フェアウェル)」を紹介します。
 
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---ウェルコーチがICTを使って支援する「Farewell」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「常識を疑え!」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 オンラインダイエットプログラム、海外 近未来的ウェアラブルプロジェクトなど、7本
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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テーマ:ウェルコーチがICTを使って支援する「Farewell」
 
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「Farewell(フェアウェル)」について
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■運営企業名:FareWell, LLC
 
■FareWellの由来:共同創設者であり、メインの出資者でもあるDavid Perry氏は、元気だった父親が40代以降何度も心臓発作に苦しめられるのを見てきた。それで自分も心臓発作のリスクがあると意識し、定期的に運動で体調管理を行ってきた。
 
しかし父親が倒れたのと同じ40代になった頃からコレステロール値が高くなり、T. Colin Campbell医師が書いた本を読み、野菜中心の食事法を実践。その結果、疾病リスクを大幅に減少でき、体調が非常に良くなったという経験から食物の生産、加工、消費の在り方に強い関心を持つようになった。それ以来、同氏は食物と健康に関連した事業に取り組むようになり、その一環として同社を設立した。
 
■設立:2015年
 
■実績(以下のアワードを受賞)
・850万ドルの資金調達に成功(2016年6月)
 
■経営メンバー:共同創設者のDavid Perry氏は微生物を利用して病原菌への耐性を持った農作物の開発を行うIndigo Agriculture社を経営している。別の共同創設者でありCEOでもあるKevin Allelbaum氏はヘルスケア産業と従来の消費者をつなぐ事業にずっと取り組んできた起業家。もう一人の共同創設者Georgi Maule-ffinch氏はDavid Perry氏の妻であり、夫婦でプラントベース・ダイエットの愛好家である。
 
※同社はサービス提供をスタートして間もないため、同社サイトからの情報は限られます。以下の分析情報はスポルツの推測も含みます)
 
 
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「FareWell(フェアウェル)」の事業コンセプト
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それではまず、事業コンセプトを見ましょう。
 
■ターゲット
・糖尿病予備軍や慢性疾患のリスクが高い人でやせたい人
 
■提供価値
・シェフの作った「おいしい」菜食料理を食べてやせる
 
■メソッド(ダイエット法)
プラントベース・ダイエット(菜食ダイエット)に基づいた食事法。色彩豊かなフルーツや野菜の他、ヒラマメ、エンドウ豆といった豆類、全粒穀物、マッシュルーム、ナッツ/種子類といった食べ物を中心とする。加工食品や動物性食品は極力取らないようにすることで余分なカロリー摂取を極力抑え、減量効果を期待できる。
また自然食に含まれる豊富な食物繊維、植物性蛋白質、抗酸化物質などにより、糖尿病、心臓疾患、高血圧、腎疾患のリスク軽減を期待できる。
 
■サービス
・メソッドに基づいた食事法によるホンモノの変化(Real Change)は、コーチングを含むリアルタイムで支援してくれるサポートツール(Real-Time Tools)があって初めて実現するという考えに基づく。
 
・ヘルスコーチからのサポートを受けながらプラントベース・ダイエットに基づく食事法を実践する
・期間は16週間
・ケアチームはヘルスコーチ、医師、シェフ、セラピストで構成される
 
 
■費用
・125ドル/月
 
 
【解説】
 
事業コンセプトで注目したいのは、提供価値です。
 
菜食を中心とした食事では、
 
・おいしくない
・飽きる
 
といったことがありました。
 
そこを、菜食をおいしく食べさせてくれるシェフと組み、
 
「シェフの作った『おいしい』菜食料理を食べてやせる」
 
という「新しい価値」を創造しています。
 
レシピはシェフJoanne Gerrard Young氏が考案しています。同氏はホリスティック栄養士、またローフード(加工されていない生の食品)シェフとして活動し、the Healing Cuisineというローフード料理やデトックス・プログラムなどの食事指導を行う教室を運営しています。利用客の中には、スーパーモデルや俳優などのセレブも含まれています。
 
※Joanne Gerrard Young氏とHealing Cuisineについて
 
 
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サービスの流れ
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では次に、具体的なサービス内容を見ましょう。
 
■ステップ1.PCまたはスマホで申込み、体重、身長、病歴といった基本的な情報を入力する
 
■ステップ2.専用マイページを開設する。Wi-Fiでデータを自動送信する体重計が郵送され、セットする
 
■ステップ3.担当ヘルスコーチと目標を設定し、健康状態やライフスタイルに合わせて実行しやすいよう調整された一週間分のミールプラン(苦手な野菜でもおいしく食べるレシピ、飲料名などが記載されていると想定される)を毎週受け取る。スマホでショッピングリストも受け取り、それに基づいて買い物をすることで余分な買い物を防ぐ。また、できる限り自宅で食べるようにする。
 
■ステップ4.日々の食事の状況、体重、水分の摂取量、運動などを記録する。摂取カロリーへの意識を高めつつも、カロリー計算をする必要はない。
 
■ステップ5.2週間に一度、電話でヘルスコーチと話し合い、進捗状況の振り返りや目標達成の妨げになっている点などを話す。また高カロリーの食事とは何かを学び、プラントベースで低カロリーの食事を自分で選択できるスキルを磨く。
 
 
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ヘルスコーチのすること
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同社のヘルスコーチはWellcoachという健康分野のコーチの資格を保有するだけでなく、管理栄養士、統合衛生学の学位取得者、糖尿病療養指導士といった様々な専門資格も持っています。
 
そうした資格を生かし、以下のようなことを行っていると予想できます。
 
・目標と食事プランが本人のライフスタイルにマッチするように助ける(たとえば、外食の多い人の菜食食事の仕方など、ライフスタイルの特徴に合わせて実行しやすい行動をいっしょに見つけていく)
 
・問題の克服を助け、本人がプランについていけるよう具体的なアドバイスを与える
 
・レジリエンス(折れない心)を育て、自分は失敗要因を克服できるという自信を与えることでセルフエフィカシー(自己効力感)を高める
 
・新しい食習慣を受け入れられるよう、モチベーションを最大限引き出す
 
 
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同社のヘルスコーチがもつ資格「Wellcoach」とは
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同社のヘルスコーチはWellcoachという資格を持っています。
少し解説しましょう。
 
●資格認定:Wellcoaches Corporation
 
アメリカ医学会(ACSM)の協力のもと、2002年に設立された健康分野のコーチ養成学校。年間約1,200人のコーチを養成し、これまで1万人以上のコーチを輩出してきた。
 
●取得プログラム
Core Coach Training Programというプログラムを習得する。これはアメリカ医学会(ACSM)が承認しているコーチ養成プログラム。
-18週間のオンラインクラス(毎週1回、90分の授業を聞く。全18回)、または4日間の集中合宿コースがある)
-同プログラムを終了した後、さらに筆記試験、スキル評価などといった最終試験を受け、合格者が有資格者となる。
 
●プログラムの主な学習内容
-コーチの役割の定義
-スキル習得とコーチングプレゼンスについて
-思いやりと共感を伝える
-セルフ・エフィカシー(自己効力感)を構築する
-夢とビジョンを構築する
-アンビバレンスを克服するためにモチベーションを引き出す
 
 
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「FareWell(フェアウェル)」にみる継続支援のポイント
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同サービスは、メソッドを実践していくためにどんな点を工夫して継続支援をしていると言えるでしょうか。
 
今回もスポルツの考案した「継続ドライバ」
に対応させてみましょう。
 
 
●ヘルスコミュニケーション
専門性のあるコミュニケーションにより継続を支援すること。本事例では、コーチングと食事・栄養に詳しいコーチがICT(記録データ)を活用し、2週間に一度、直接話す機会があります。
 
●パーソナライズ
カスタマイズにより健康行動を自分ゴト化し、継続を支援すること。本事例では、ヘルスコーチは一人ひとりに合ったメソッドの実践方法を見つけるための支援をしていると予想されます。
 
●モニタリング
健康行動・結果の記録により自己効力感を上げ、継続を支援すること。本事例では、スマホアプリを用いて、食事記録をとり、その記録をコーチとともに振り返ります。
 
 
【解説】
継続ドライバは、ターゲットに合わせて使うことが大切です。同事例のターゲットは、糖尿病予備軍や慢性疾患で知識はそこそこあるも、今まで一人ではなかなか痩せることができなかった人です。こうした人にはヘルスコミュニケーション、パーソナライズといった「人的」で「手厚い」印象のある継続ドライバが適しています。
 
 
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新しい価値の創造をまず第一に
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今回の事例いかがでしたか。
 
・「シェフの作った『おいしい』菜食料理を食べてやせる」という新しい価値の創造をしている
 
・シェフと組み、メソッドを確実なものにしている。
 
・継続支援に対応するスタッフは単なる栄養士でなく、コーチングのノウハウを身につけている
 
・コーチとの話し合いは、2週間に一度だが、直接話すことで見守り効果をあげている。
 
といった特徴があります。
 
つまり、
 
・新しい価値の創造
・メソッド(新しい価値を実現する方法)
・継続支援サービス(コーチング)
 
をしっかりと企画している事例と言えますね。
 
サービス開始後間もないので、今後どのような拡大をしていくか、見守っていきたいと思います。
 
 
【今号のまとめ】
 
□サービスを細かく検討するより、一言でいえる「新しい価値の創造」をまず検討すべき。
 
□新しい価値を創造したら、それを実現するためのメソッド、さらに継続支援サービスを検討する。
 
□ヘルスコーチングは米国では普及している手法であり、日本でもその課題を捉え、応用を考えたい。
 
 
 
<ご案内1>
本メルマガ内でも紹介した「継続ドライバ」を学び、使えるようになることを目標にしたワークショップのご案内です。
 
●ワークショップ:継続ドライバ活用ワークショップ
2016年11月30日(水)15:00-18:30
 
 
<ご案内2>
継続支援の中でも、本事例のような人とICTを使ったヘルスコーチは、今後注目したいですね。スポルツで、この分野に特化し研究、応用しているディレクターが里見将史です。企画・導入に関しての支援をしています。
 
●人を感じる、人が寄り添うヘルスケアサービス「ヘルスコーチング」
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「常識を疑え!」
 
顧客も気づかなかった課題を解決することがイノベーションだとすると、常識の枠だけで思考行動していては新しいことは起こせない。時には常識を疑おう!
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <7クリップ>
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[1]アシックス、第6回神戸マラソンでウェアラブルデバイスを使用した実証実験を実施
本大会に出場するランナーを対象に、ウェアラブルデバイスを用いてランナーの現在地やランニングペースを計測および通知するサービスや、前方を走るランナーによる後続のランナーへのリアルタイムコーチングなどの実験を実施する、など。(2016/11/02)
 
[2]順天堂大学、日本初のインフルエンザ調査用iPhoneアプリ「インフルレポート」を開発
インフルレポートは、質問項目と測定項目とを組み合わせインフルエンザに関する重要な科学的疑問の解明を試みることを目的としている。また、得られたデータからインフルエンザ予防や治療に便利な情報を利用者にフィードバックすることで利用者の健康管理にも貢献できるように設計されている。(2016/11/02)
 
[3]デジタルヘルス事例:スコットランドのデジタルヘルスがすごい!遠隔医療に注力、欧州を代表するイノベーション拠点に(日経デジタルヘルスより)
「NHS 24」と呼ぶ公的機関を通じ、スコットランド全域に遠隔医療・介護サービスを提供できる体制を整備。スコットランドでは既に8万人を超える患者が、行政府の支援を受けた遠隔医療・介護の開発プロジェクトに参加しているという。(2016/11/02)
 
[4]RIZAPイノベーションズ、サボると料金が上がる?オンラインダイエットプログラム「RIZAP ONLINE」提供開始
遠隔での食事指導をメインとする新サービス。5万6千人以上の累計会員数を誇るRIZAPの基本メソッドとRIZAP独自のダイエットを挫折させない仕組みを掛け合わせた最強のオンラインダイエットプログラム。(2016/11/04)
 
[5]オムロン ヘルスケア、慶應義塾大学病院の「Apple WatchとCareKitを活用した患者ケアの臨床試験」に通信機能搭載の血圧計と健康管理アプリ「OMRON connect」が採用
本臨床試験を通じて、病院から家庭での生活を見守ることによる診療の質の向上、安心感の提供とともに、多様なウェアラブルデバイスと家庭用医療機器と連動することで、将来の遠隔診療の可能性などが検証される。(2016/11/07)
 
[6]研究:近未来的なウェアラブルプロジェクト『Sarotis』が斬新!
「Sarotis」では、柔らかな独自の流体ヒドロゲルインターフェイスがユーザーの体を包み、周囲の状況を空気や液体の出し入れによる伸縮でユーザーに伝える。(2016/11/08)
 
[7]mHealth Watch注目ニュース:音楽、通話、運動量測定とマルチなスマートメガネ『Vue』
『Vue』にはカメラはなく、その代わり日常的に使える機能が満載。もっとも頻繁に使いそうなのが、音楽の機能。骨伝導のスピーカーを搭載していて、耳をオープンにしながらスマホの音楽が聴ける、など。(2016/11/14)
 
 
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