[海外事例にみる企画ヒント編]フィットネス機器「Peloton」に325億円もの資金が集まるワケ
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[海外事例にみる企画ヒント編]2017年8月22日号
≫≫≫Author:脇本和洋
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「海外事例にみる企画ヒント編」をお届けしている脇本和洋です。
今回は、325億円の資金調達に成功したフィットネス機器「ペロトン」を取り上げ、「魅力的な価値」について考えます。
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---フィットネス機器「ペロトン」に325億円もの資金が集まるワケ
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「企業成長からお客様成功支援へ」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 プール内でのウェアラブルデバイス活用、海外 iPhone対応人口内耳など、14本
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>フィットネス機器「ペロトン」に325億円もの資金が集まるワケ
米国では様々な健康分野のベンチャーが存在します。しかし花開くのはわずか。今回はそんな厳しい環境を乗り越えてきている「ペロトン」を紹介します。
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1.「ペロトン」とは
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ペロトンは、自宅用エクササイズバイク(スピンバイク)を販売する企業。スピンバイクは有酸素だけでなく無酸素の激しい運動もできるバイクのこと。米国では、2006年ぐらいからこのスピンバイクを使い、暗がりの中でDJの音楽に合わせて激しく運動するスピンバイクスタジオが「心も満たす」として、ニューヨークやロサンゼルスで流行っています。
そこに目をつけて2012年に設立されたのが「ペロトン」。同社は後発だったがゆえに、「自宅から、最先端スピンバイクスタジオのクラスに参加し、エキサイティングな体験ができる」という価値で勝負しようと考えました。
・ペレトン(2分動画あり)
主な収益源は、自宅用エクササイズバイク機器(Spin Bike)の販売(約20万円)と
クラス受講の動画配信(月あたり約4000円)です。クラス受講の動画配信サービスがついているからこそ、バイクも高額で販売できているといえるでしょう。
●最新動向
2017年5月、325億円の資金調達に成功したと発表しました。
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2.「ペロトン」にお金が集まるワケ
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では、「ペロトン」にお金が集まるワケを考えてみましょう。
◆実績が上がってきた
2017年に入り、会員数は7.5万人を超えたとされ、機器とクラス受講の売上合計は年100億円を超えているとも予想されます。2012年にサービスが開始され注目はされていたのですが、ここにきて実績が出始めたことが、資金調達ができた一つの理由でしょう。
◆魅力的な価値づくりに成功
では、なぜ実績がでてきたのでしょうか。実績を作るには、顧客にとって魅力的な価値を作ることが出発点です。特に同社は機器が20万、月額4000円の課金モデルであり、魅力的な「価値」が必要です。
今までの自宅向けバイクは、まじめで単調で続けるのが難しいものでした。一方、スピンバイクのスタジオは先端的だが、普通の人が行くには敷居が高かったようです。
そこで、ペロトンは、ニューヨークの最先端スピンバイクスタジオで行われているクラス(11名の個性豊かなインストラクターが生みだす様々なテーマ性のあるエキサイティングなクラス)に、インターネットを通じて、「自宅」から毎日ライブで参加できるようにしました。
そして、コーチが参加者と同じバイクを使い、ライブならではの一体感を演出したり、参加者同士でコミュニケーションでき、順位をリアルタイムで競うこともできるようにしました。
つまり、「自宅から、最先端スピンバイクスタジオのクラスに参加し、エキサイティングな体験ができる」という魅力的な価値をつくったというわけです。
◆将来性
米国では自宅でのフィットネスには根強い人気があります。それだけ需要はあると予想されています。
一方、同社は会員が出張した時でもペロトンを使えようにと、ホテルなどB-Bへの展開を開始。米国ではホテルでフィットネス施設をもっている所も多く、B-B販売にも力を入れだしました。
また、リアルの施設はあくまでコンテンツ配信のためにニューヨークに1店舗だけ用意し、現時点では拡張する気はありません。固定費となるハード(店舗)は最低限にしています。
あとは、安定した収益を確保する継続課金モデルであることも、将来性を感じさせているのでしょう。
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3.「魅力的な価値」を作ることにまず力を入れたい
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以上のように、お金が集まるのには、いくつかの理由が考えられます。
その中では、「魅力的な価値づくり」が起点になると考えています。
では、なぜ日本ではこのような魅力的な価値が次々と生まれないのでしょうか。
本メルマガでは、今までもいくつかの失敗パターン(企画の進め方や心構えなど)を述べてきましたが、今回もありがちなパターンと対策を整理しておきましょう。
●価値のイメージがチームで共有できていない
「魅力的な価値」といっても、チーム内で統一したイメージがないため、議論が空回りするパターンです。対策は、複数の先進事例を通じて「魅力的な価値」とは何かを共有することです。例えば、魅力的な価値とは「『驚きがあり』『価値を聞いただけでお金をだしたくなる』ものである」といったように、チームで共有するのです。
●価値は、顧客に聞けば自然とでてくると思っている
価値を探るために顧客に様々なインタビューを行う。しかし、インタビュー結果と考察をみても、「魅力的な価値」が何なのか、見当たらないパターンです。インタビューは価値を考える情報収集の一つでしかありません。調査結果と同じ時間をかけて、価値の創造を検討しなくてはいけません。
●ターゲットにより価値の方向性が変わることを知らない
ターゲットと価値はセットで考えるもの。ターゲットごとに提供する価値の方向性があります。例えば、健康意識はあるも行動が長続きしない人には「○○しながら成果がでる」、健康意識が低く行動もあまりしていない人には「健康は意識させないで、結果健康になる」といった価値の方向性があります。
価値創造に成功するためには、乗り越えたいパターンがまだまだあります。引き続き本メルマガで紹介していきます。【脇本】
【バックナンバー:Pelotonの特集(2016年~2019年)】
【お知らせ:Pelotonの詳細解説の社内研修】
今回紹介したPelotonは、「モノ+サービス」で魅力的価値を実現し、急成長しています。立ち上げから現在までにどのような施策をとってきたかをチームで理解することは、フィットネスに限らず新しい健康ビジネスを創出するヒントになるはずです。
上記内容がわかる有料の社内研修(説明+レポート)をアップデート中です。ご興味のある方はお問い合わせください。
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「企業成長からお客様成功支援へ」
ビジネスコンセプトが大きくシフトしている過渡期に我々はいます。かつては自社都合でも成長できましたが、今後はいかにお客様の成功を支援するかが企業価値になっていきます。さて、これピンときましたか?
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【3】今週の注目デジクリップ! <14クリップ>
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[1]経営者JP、さまざまな切り口からエグゼクティブパーソンの意識・行動トレンドを追う「経営者JP総研 エグゼクティブ・ウォッチ!」調査を開始【PDF】
エグゼクティブ・ウォッチ vol.1は、エグゼクティブの「健康」「ダイエット」に関して意識調査を実施。エグゼクティブの6割(55.8%)は「ダイエットをしていない」など。(2017/08/01)
[2]アッヴィとシヤチハタ、「手洗い練習スタンプ おててポン」で夏から流行し始めたRSウイルス感染症を啓発
2歳までにほぼ100%の乳幼児が1度は感染するといわれているRSウイルス感染症の啓発を目的に作製。手のひらにスタンプし、スタンプした印影を石けんでしっかり洗い落とすことで、上手な手洗い練習を促す。(2017/08/03)
[3]FiNC、約1,200名の女性を対象にウォーキングに関する調査を実施
本調査で「意識的に歩いている女性」と「意識的に歩いていない女性」の明らかな違いや、女性が歩くことでポジティブな結果が得られることが判明。(2018/08/03)
[4]RIZAP、RIZAPのボディメイクを実践した医師が1,000名を突破【PDF】
満足度が9割を超え、医学的見地からも高い評価を獲得。さらに、2017年7月末時点で全国各地の提携医療機関数も140を突破。(2017/08/03)
[5]日経デジタルヘルス、デジタルヘルス事例:ウエアラブルによる高齢者の自立支援サービス、いよいよ販売開始
介護保険制度に対応した機能訓練を行える「モフトレ」。自立支援を専門で行うスタッフや専用施設を持たない施設でも、新たな人員や機器を補充する必要なく機能訓練を行うことができるのが特徴。(2017/08/07)
[6]NTTデータ経営研究所、働き方改革の取り組みと職場へのインパクトー働き方改革に取り組む企業は年々上昇し36.4%
働きやすい職場では「労働時間の減少・休暇取得のしやすさ・気持ちに余裕」、働きにくい職場では「収入減少・気持ちのゆとりのなさ・やらされ感の増加」が顕著。(2017/08/08)
[7]東急スポーツオアシス、業界初!プールでApple Watchなどが利用可能に!
「プール内でのApple Watch等のウェアラブルデバイス活用」を展開。安全面の関係上、プール内での使用は禁止していたが、Apple Watchを使用したいという要望・ウェアラブルデバイスの進化に伴い、安全面を考慮して展開する。(2017/08/17)
[8]メドピア、「MedPeer Healthtech Academy chapter4」を開催ー「遠隔医療」の“今”をつかみ“未来”をつくる<第2弾>ー
開催日は9月2日(土)。昨年8月に同じ「遠隔医療」をテーマにイベントを開催してから1年経った今、現場で見えてきた課題や今後に向けた期待などを参加者と共に議論する。
[9]日本BP社、ITpro EXPO 2017
開催日は10月11日から13日。今年はITpro EXPOとFACTORY 2017を中核とする既存6展をパワーアップする一方、「ビジネスAI」「ビジネスVR」「FinTech」「働き方改革」「デジタルマーケティング」の5展を新たにラインアップに追加。
[10]医療機器センター、「新規参入者のための医療機器規制ワークショップ」ビジネスモデルから見た規制対応!
開催日は、10月19日(木)。本ワークショップでは、製造から販売までを一貫して行うモデルを基本とし、製造委託や輸入する場合を対比しながら、また販売や修理といったことを規制の側面からの考え方や対応について検討していく。
[11]綜合ユニコム、レジャー&サービス産業展2017
開催日は、10月19(木)、20(金)。レジャー・サービス産業、集客事業の情報収集・発信を行なっている「月刊レジャー産業資料」による展示会。同時開催、シニア・健康・ヘルスケアフォーラムなど。
[12]Appleと豪Cochlerが提携して、初のiPhone対応人口内耳を提供
6月にFDAの認可を得たCochlearのNucleus 7 Sound Processorは、対応するiPhone、iPad、iPod touchの音を補聴器に直接送り込めるようになった。(2017/08/03)
[13]FitbitがMicrosoft『Cortana』をサポート、音声で記録の確認や更新が可能に
PCやスマートフォン上の「Cortana」からFitbitに記録したデータの確認や更新が行えるもの。腕に装着したFitbitのデバイスで「Cortana」を利用できるわけではない。(2017/08/04)
[14]Amazon、ヘルスケア部門を新設か-競合するMicrosoftの動向は
CNBCの報道によると、Amazonは秘密のヘルスケア技術チームを設置して、電子医療記録、バーチャル往診、「Amazon Echo」などのデバイス向け健康関連アプリケーションに取り組んでいるという。(2017/08/07)
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