[ヘルスコーチングの視線編]ヘルスコーチングの可能性を探る:インタビューから見えてくるキーワード『ティーチングとコーチングの違い』
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[ヘルスコーチングの視線編]2017年8月29日号
≫≫≫Author:里見将史
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「ヘルスコーチングの視線」では、ヘルスコーチングのアプローチについて現場の方々の生の声をインタビュー形式で紹介しています。
今回もインタビューを振り返ってみて、気になるキーワードをピックアップして紹介したいと思います。
本日のキーワードは、「ティーチングとコーチングの違い」です。
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---ヘルスコーチングの可能性を探る:インタビューから見えてくるキーワード『ティーチングとコーチングの違い』
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「提供側視点の課題」
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 母子手帳アプリ、海外 非侵襲型睡眠モニタなど、11本
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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<テーマ>
ヘルスコーチングの可能性を探る:
インタビューから見えてくるキーワード『ティーチングとコーチングの違い』
ヘルスコーチングの基本的なアプローチは、健康に向けた行動変容を支援することを中心に据えて寄り添うアプローチです。
ヘルスコーチングは、これまでの「教える」「指導する」アプローチではなく、目標に向かって行動を自走できるように寄り添うところが、これまでとは大きく異なるコミュニケーションです。
「ヘルスコーチング」は、本当の意味での「行動の継続」に向けたアプローチなのです。
前回、このメルマガの「ヘルスコーチングの視線」編のインタビューでご紹介した「あすけんブレイン・コンディショニングプログラム」ですが、このプログラムでは「“自ら”行動を継続すること」に焦点を当ててヘルスコーチングの考え方を取り入れてメールサポートをしています。
前回のインタビューの中で、「あすけんブレイン・コンディショニングプログラム」のメールサポートをする管理栄養士さんが特に気を付けている点、意識していることとして「無理はさせないためのメンタル面のフォロー」とコメントしています。
この「無理はさせない」というアプローチには、対象者のゴールを行動の「継続」や「習慣化」に位置づけているからなのです。
インタビューの中でも、これまでの教えることが中心の「ティーチング型」のメールサポートでは、対象者から「情報はためになった」とか「栄養情報を知ることができた」といった声が多かったのが、今回のヘルスコーチングのアプローチを取り入れたメールサポートでは「具体的な行動に繋がった」という対象者からの声が集まっているようです。
それでは、なぜティーチング型とコーチング型のメールサポートで、このような対象者の反応の違いが出てくるのだと思いますか?
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1、ヘルスコミュニケーションの分類
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ティーチングもコーチングも、ヘルスケア領域の中で交わすコミュニケーション、いわゆる「ヘルスコミュニケーション」の種類の一つという分類、位置付けになります。
ヘルスコミュニケーションとしては、コミュニケーションのスタイル、アプローチとしていくつかに分類されます。
「ヘルスコミュニケーション」の分類
・ヘルスティーチング
・メンタリング
・コンシェルジュ
・カウンセリング
・ヘルスコーチング
これらのヘルスコミュニケーションの中で、対象者の「自らの行動」にフォーカスしているのが、「ヘルスコーチング」、コーチング型のアプローチです。
また、上記の中のコミュニケーションの中でヘルスコーチングが唯一、対象者との関係性が対等であり、また、コミュニケーションの中心が対象者であることが他のコミュニケーションと異なる点です。
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2、接し方の違い
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「ティーチング型」のアプローチでは、専門家が細かくアドバイスや指導をし続けるので、一定期間内の成果だけで見ると効果が高いケースがあります。
しかし、その期間が終了した以降の成果の継続という意味では、その期間が終了した以降から、対象者自らが見つけていく必要があり、期間が終了してから継続できるスタイルを見つけていくことになります。
しかし、「コーチング型」のアプローチでは、専門家が寄り添う期間からすでに「行動の継続」「行動の習慣化」を最終的なゴールに見据えて取り組んでいるため、その期間が終了した時点では、「行動の習慣化」の兆しや手応えを掴んでいるので、終了した時には成果の継続にも目が向けられています。
また、「ティーチング型」のアプローチでは、指導者、専門家側のアドバイスを対象者が忠実にこなしていくスタイルが通常で、どちらかというと対象者は受動的、受け身の状態です。
しかし、「コーチング型」のアプローチでは、行動変容を支援して、そのあと対象者が自ら継続できることに目を向けたアプローチであるため、対象者は能動的なのです。
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3、コミュニケーションの違い
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これまでのヘルスコミュニケーションの多くは、主役は指導者側でした。
しかし、コーチング型のアプローチであるヘルスコーチングでは対象者が主役であって、ヘルスコーチはあくまでもサポーター、伴走者という位置付けになります。
では、対象者が主役のコミュニケーションでは何が大きく異るかというと、ティーチング型アプローチでは「教える」「指導する」ことがコミュニケーションの中心で話す内容や説明の仕方などが重要視されていました。
しかし、ヘルスコーチングでは、対象者が自ら気づくためのサポートが中心になるため、対象者との会話では「聞く」「尋ねる」を繰り返します。
そのため、コミュニケーション(会話)の中心は、対象者になるのです。
ヘルスコーチングでは、ゴールや達成イメージに向けて具体的な行動に取り組むことが必要で、そのプロセスの中では、意識や身体の変化に気づくことはもちろん、自分に合う行動、合わない行動に気づいたりなど様々な気づき、発見を重ねて「自分流」を見つけることが、行動の習慣化、定着化には必要になっていくからです。
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4、ヘルスコーチは「教えない」のか?
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コーチング型アプローチでは、「ティーチングはしない」というのは一般的に言われていて、「教えない」コミュニケーションというイメージです。
その理由は、コーチング型アプローチでは対象者の自発性、自立性を引き出し、自らの気づきから行動へ繋げていくからです。
しかし、この「教えない」「ティーチング」をしないという部分が、「コーチング」に対する大きな誤解を生んでいると私は感じています。
この「教える、ティーチング」ということについては、伝えたいこと、伝えた情報の最終選択権がどちらにあるのかが重要であって、全く教えないということではありません。
「ティーチング」型アプローチでは、前述しましたがコミュニケーションの主役は指導者、専門家側にあるため、伝えたいこと、伝えた情報の選択権は、極端な言い方をすると対象者側には存在せず、専門家の言うことを忠実に守ることになります。
しかし、ヘルスコーチングのコミュニケーションの主役は対象者なので、伝えた情報の選択権は対象者にあることが基本です。
そのため、ヘルスコーチングでは、一方的な「教える、ティーチング」自体はしませんが、対象者の「選択の幅」を拡げ「選択を支援」するための「情報提供」は積極的に行うのです。
行動は、正しい知識、正しい理解の上で取り組むことが重要で、ヘルスコーチングでは「選択支援」のための「情報提供」は重要な要素になっています。
この「選択支援」のための「情報提供」の大切さについては、糖尿病療養指導のためのコーチングプログラムを提供しているNPO法人ヘルスコーチ・ジャパンの最上代表が、以前のインタビューの中で以下のようにコメントしています。
(NPO法人ヘルスコーチ・ジャパンの最上輝未子代表のコメント)
通常行われている一般的な「コーチング」では、「コーチングは教えない」ということを教え、明確な目標を持たない人は「アンコーチャブル(コーチしづらい人、コーチしてはいけない人)」に分類し対応しません。
しかし、糖尿病療養指導の現場では、「知識がない」「自覚がない」「意識がない(我がことになっていない)」人を対象としているので、糖尿病に関する基礎的なことを教えたり、自分の病気に関する興味関心を高めたりしなければなりません。
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「選択支援としての『情報提供』」
今回ご紹介したキーワード「ティーチングとコーチングの違い」は、ヘルスコーチングのアプローチでは誤解や混乱を招くポイントの一つになります。
特に、「教える」ことと「情報提供」の関係性、役割を理解した上で、対象者の「行動習慣化、定着化」にフォーカスして対象者の「選択を支援する」というアプローチこそがポイントであり、そのための正しい情報については、ヘルスケア領域の専門家の知識や経験がベースに、ヘルスコーチングのコミュニケーションに乗せていくことがポイントになっていくのです。
【『ヘルスコーチング』プライベートセミナー】
最近、管理栄養士向けなど専門家の方々へのヘルスコーチングのセミナーのお声掛けをいただくケースが多くなってきております。
このプライベートセミナーは、お客様のご要望に合わせ、場所、日時、参加人数を決めていただき開催する個別セミナーです。
プライベートセミナーでは、ワークショップ形式も含めた内容もアレンジ可能です。是非ご活用ください。
『ヘルスコーチング』プライベートセミナーの内容は以下にてご確認ください。
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「提供側視点の課題」
サービス提供側の視点は、ほとんどの場合お客様に対して1:N(不特定多数)で設定されているのですが、お客様から見れば、1:1なのです。この構造課題をあなたはどう考え行動しますか?
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【3】今週の注目デジクリップ! <11クリップ>
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[1]エムティーアイ、母子手帳アプリ「母子モ」が北海道遠軽町にて提供開始
母子手帳アプリは、スマートフォン・タブレット端末・PCに対応。妊産婦と子どもの健康データの記録・管理や予防接種スケジュール管理、出産・育児に関するアドバイス提供など、母親や父親をサポートする便利な機能が充実。(2017/08/17)
[2]慶應義塾大学、食事で摂取されるリンの代謝が寿命を制御するー老化のメカニズム解明につながる成果ー
今回の研究は、老化制御機構の一部を解明することで、動脈硬化や骨粗鬆症など、健康寿命に関連する病変を防ぎ、健康的で自立した生活をめざすヘルシーエイジングのために重要な発見と考えられる。(2017/08/17)
[3]楽天、遺伝子検査サービスを提供するジェネシスヘルスケア社に出資
遺伝子検査サービスを提供するジェネシスヘルスケアから約14億円の第三者割当増資を引き受け出資。なお、三木谷 浩史が社外取締役として就任。(2017/08/21)
[4]マルエツ、日本栄養士会の認定制度「栄養ケア・ステーション」開設のお知らせ【PDF】
日本栄養士会が取り組む「栄養ケア・ステーション」事業に賛同し、同社が運営する料理&カルチャー教室「いーとぴあ」が、スーパーマーケット業界として初めて「栄養ケア・ステーション」として認定された。(2017/08/22)
[5]ラウンドリング、いま女性に大人気の「菌活」を「食・触・聞・見」で学べる業界初の試み!「世界の菌活グルメ」試食しませんか?【PDF】
開催日は9月8日(金)。菌活グルメを一堂に取りそろえたイベント。内と外、両方から美しくなる「デュプルフローラ」をテーマに、内側美容に人気の菌活食材の中でもこれからニーズが高まりそうな世界の食材を紹介、など。
[6]博報堂、ネクスト・マーケティング「LEAD2025」ーシニア(“OVER50”)と新世代(“UNDER50”)から見る、ポスト2020のマーケティング転換
開催日は10月18日(水)。今回のConsulactionセミナーでは、これまでのプロジェクトからまとめた今後の市場構造の分析とその活用方法・実績・利点の紹介に加えて、新世代(“UNDER50”)に見るこれからの兆しについても説明。
[7]調査:Xiaomiは今四半期にAppleやFitbitより多くのウェアラブルを販売した
Strategy Analyticsの新しいレポートによると、Xiaomiは世界でトップクラスのウェアラブルメーカーであるApple(市場シェア13%)とFitbit(市場シェア16%)を抑えて市場シェア17%となり、初めて市場リーダーとなった。(2017/08/16)
[8]Eccrine Systems、血液モニタリングの代替となる「汗」による分析
「Eccrine Systems」は、皮膚のごく一部の汗腺だけを刺激できる。このデバイスは、化学物質を使用して汗腺を刺激するので、検査中も患者は苦痛を受けずに済む。(2017/08/17)
[9]本人が何も装着せず、電波の反射波を利用する非侵襲型の睡眠モニタをMITで開発
MITの研究者たちが、睡眠をワイヤレスでモニタする新しい方法を公開。反響定位法(エコーロケーション, echolocation)に似ていて、電波を睡眠者に当てて反射波を捉え、体の影響による電波の変化を調べる。(2017/08/18)
[10]Apple、スマホのカメラで心拍数などのヘルスケアデータを計測-特許が成立
この特許は、スマートフォンのカメラやLEDライトなどを利用して、簡単に脈拍などを計測する技術を説明したもの。(2017/08/22)
[11]mHealthWatch注目ニュース:LVL Technologies、650万ドルを取得し水分追跡ウェアラブルを構築
「LVL One」は、血液中の水の含有量を測定することで、適切な水分摂取を促し、水分不足から起こる多くの課題にアプローチする。製品も興味深いが、Samsungが粘り強くウェアラブルの可能性を模索していることが記事から想定される。(2017/08/28)
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