米国「ダイエットセンター(Diet Center)」に学ぶ!

執筆 脇本和洋 + 大川 耕平(構成)

ダイエットセンターは、米国では民間企業が運営する「食とダイエット」をテーマにしたカウンセリング施設のこと。「一人では長続きしにくい」という、ダイエットの主要課題を解決する日本企業にとって参考になるユニークなサービスモデルです。

昨今日本でも「メタボリックシンドローム」に代表される健康課題が大きくクローズアップされています。
これらの健康課題のすべてに強く関係するのが「肥満リスク」であることは間違いありません。

日本でも数多くのダイエットビジネスが存在します。

しかし、対面式のダイエット指導で民間企業が展開している例はまだまだ少なく米国の事例に多くを学ぶことができるはずです。

米国大手3社の費用比較

■Weight Watchers
・概要:講習会をベースに展開する世界最大のダイエットセンター
・拠点数:米国だけで4100か所
・入会金:40ドル(入会費用+1回体験)
・講習会費用:1回12ドル
・標準参加頻度:週に1回
※同社の食品利用は必須ではない

■Jenny Craig
・概要:個別対面カウンセリングがベースの高級志向ダイエットセンター
・拠点数:世界で531か所(2001年)
・入会金:なし
・カウンセリング費用:6週間36ドル+食費。食費は1日あたり、14から19ドルが平均
・標準カウンセリング頻度:週に1回15分
・1週間当たりの合計費用:109から139ドル
※同社の食品利用が必須

■L A Weight Loss Centers
・概要:個別対面カウンセリングがベースの値頃感志向ダイエットセンター
・拠点数:世界で600か所(2004年)
・入会金:なし
・カウンセリング費用:8週間319ドル
・標準カウンセリング頻度:週に3回、5分から10分
・1週間当たりの合計費用:40ドル
※同社の食品利用は必須でない(ただし、必須としている店舗もある様子)

ダイエットセンターの特長の整理

以上ダイエットセンター3社の比較を行いましたが、ここではダイエットセン
ターの特長を改めて整理してみます。

1)ダイエットセンターはその場でダイエットを行うのではなく、ダイエット
  を学習でき、指導を受けられる場所である

2)ダイエットのアプローチ分野は「食事」のみ

3)指導は「集団形式」もしくは「個別カウンセリング形式」を選べる

4)「個別カウンセリング」は短時間で高頻度である
  (時間は5分から15分と短く、頻度は最低週1回で週に3回行う所もあり頻度が高い)

5)リバウンドなしで、目標体重達成後の「体重キープ」を最大配慮したプログラムになっている

6)最初はダイエット食品をうまく活用しながら減量の成功体験を感じることができ、最終的には
  「普段の食生活の改善」により、ダイエット食品に頼らないで体重をキープすることができる

まとめると、体重減とその後の体重キープために日頃の食生活の改善行動を報告し、アドバイスをもらえる気軽な「食の学習・カウンセリング施設」といってもよいでしょう。

また、「ダイエットビジネスにおける新しさ」でみた場合、以下の点が考えられます。

●カウンセリングを生かした商品販売モデル(サービス化モデル)

「Weight Watchers」と「Jenny Craig」は、商品(主にダイエット食品)販売高がそれぞれ、330億円(総売上の約30%)、380億円(総売上の約90%)となっており、商品販売だけで大きな売上を誇ります。カウンセリングという「サービス」を付加したダイエット関連商品の新たな販売モデルとして参考になります。

●「生涯ダイエットコスト」という考え方

「Jenny Craig」は3社の中で最も費用が高いわけですが、同社のプログラムでは、目標体重に達するまでの間、同社のダイエット高級食品を使います。しかし、その後の体重キープは特にダイエット食品を使うことなく、日常の食生活の改善により行うプログラムになっています。

「一生」という長い期間でダイエットに使う費用を考えると、一時的な出費となりますが、こうした施設に通った方が意外に安いということもありえるのではないでしょうか。

スポルツの視点

ここでは、健康業界のいくつかのプレイヤーごとにヒントを考えてみます。

●食品メーカーにとってのヒント
今回紹介した大手3社の中では、「Jenny Craig」が参考になるはずです。同社売上の90%以上が食品の売上であり、先日Nestle社が「Jenny Craig」を買収した理由もここにあります。食品利用を前提としたカウンセリングプログラムは参考になります。

ただ、「Jenny Craig」の利用者は、肥満の女性(標準体重より15Kgから20Kgオーバーの人)が中心であり、食品メーカーごとのターゲットにあわせたプログラムの開発が必要になることはいうまでもありません。

●フィットネスクラブにとってのヒント
フィットネスクラブでは施設での商品販売がひとつの課題になっています。商品利用が前提となるプログラムという観点でいえば、こちらも「Jenny Craig」がヒントになるはずです。運動と食を結びつけ、さまざまな商品利用を前提としたカウンセリング、プログラムを作りがポイントになりそうです。


●自治体での保健指導におけるヒント
今回紹介した大手3社の中では、「Weight Watchers」が参考になるはずです。同社のプログラムの特長は、ダイエットに成功した地元の参加者を教育し、その後講師(クラスルームリーダー)として採用し、その人が定期的にダイエット講習会を開き、地域に根ざした活動を行います。また、ダイエットができるだけでなく、そこに参加することで新しい友人を見つけ地域での楽しみが増えるなどの機会を提供しています。

●健康保険組合での保健指導におけるヒント
今回紹介した中では、「LA Weight Loss Centers」が参考になるはずです。カウンセリングの費用もそれほど高くなく、特定のダイエット食品を利用することが前提になっていないからです。

保健指導の中心となる男性が対象となる場合、プログラムではカロリー計算を前提にするのでなくわかりやすいポイント制を使い、面倒でない管理法を導入することが必要。また、単に体重減のための食事カウンセリングだけでなく、QOLの向上やビジネスマンとしての生活にどうプラスがあるかといった視点での
、やる気を引き出すコミュニケーションスキルが、まずはカウンセラーに求められるでしょう。

日本人の健康課題のメガトレンドとして「メタボリックシンドローム」>「肥満」という構図がクローズアップされればされるほど、「ダイエットセンター」で展開されているプロセスが参考になるはずです。

日本型「ダイエットセンター」サービスがどのように展開されていくか!?

我々はこれからもウォッチしていきます。