INNER(インナー)にフォーカスを
菊池真由子 管理栄養士 ダイエットクラス主宰
ここ数年来、カラダの中の健康状態に感心が集まってきています。その中で最も注目されているのが血液です。たしかに血液の状態は外見や症状に現れにくいもの。
自分の目で確認出来ない分、血液検査を含んだ健康診断の結果を見て、思わしくない結果がでると不安になりますよね。
これをきっかけに、食事や運動に関心を持って何らかの工夫を取り入れる人は少なくありません。マスコミによる健康情報の特集をはじめ、健康食品やサプリメントへの関心は専門家も舌を巻く勢いです。
一方で、痛みやなんらかの症状がほとんど感じられないので、薬を処方されても漠然と飲んでいる人も少なくありません。そして「飲んでも飲まなくても変わらない」と治療を自己中断してしまう人がいるのも事実です。
実は「血液サラサラ」や「ドロドロ」はマスコミが作った用語です。医療の現場では「高脂血症」などれっきとした病名として扱われています。サラサラなどの用語は直感的にイメージがわかりやすいので利用されているだけなのです。これが逆に「自分が病気である」という自覚を薄くしてしまっている一因かもしれません。
本来ならば、医療機関で治療や指導を受け、その先に待っている脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を予防することが第一なのです。
ところで「自己中断してしまう人」や「何も手を打たない」、「健康食品に頼る」人が少なくないのは何故でしょうか。これほど健康情報が溢れている中、周知が足りないとはとても考えられません。
「ドロドロはサラサラにすれば済むこと」と軽視したり、楽観的に自分に都合良く解釈している人が多いのではないでしょうか。
また、大きな原因として、「どうせ病院に行っても」といった、現在の医療に対する事前期待の低さがあるのではないでしょうか。
例えば高脂血症の場合、長時間待たされて数分の診療になりがちです。大した自覚症状もないのに投薬治療がメインで、運動や食事療法を推められます。しかし、運動や食事療法は面倒だし、以降は定期検査と投薬になるだろうと「医療サービスへの低い事前期待」が立ってしまうと、途端に心の奥底に「家庭や日常生活でなんとかしたい」という気持ちが沸き上がってくるのです。
メタボリックシンドロームをはじめ、血液にまつわる健康は生死に関わる重要な問題。現在、この生命に関わる危機感に対して、医療のサービス内容や事前期待の低さを埋めているのがマスコミや食品業界です。あちこちから新情報や新商品を提供して健康効果をアピールしています。
しかし、不特定多数のユーザーを相手にしているせいか、従来のスタイルでは飽きられやすく、番組や紙面のリニューアルが目立つようになってきました。
体重計に始まって、近年、体脂肪計、血圧計、歩数計などの家庭用測定機器が普及してきました。今では筋肉量や骨量まで家庭で測れ、記録機能までつくようになっています。
しかし、いくら測定しても、その記録を受診時に持っていっても、続けることはなかなか難しいのが現状です。ここでも事前の予想よりも効果が実感出来ないという「測定しても満たされない心」が生じてしまうのです。
というのも、元来、「体重や血液の状態を健康に戻すには時間がかかるし、一生のおつきあいになることもある」ものなのです。このため、飽きや挫折、中断が産まれているのです。
しかし、消費者は常に新しい健康情報を求め続けています。まるで健康という心の栄養を求める旅人の様にさすらい続けているようにすら見えるのです。
今後、血液検査や血圧、体重など数値を指標としながらも、一番のInner(インナー)である『心』との一体化がますます重要になってくるのではないでしょうか。