「小型フィットネス施設に学ぶ」 VOL.2
市川 亨 (プロジェクト I 代表)
前回は、日本国内でも急成長を遂げる、カーブスを中心に標準型フィットネスクラブとの差異やその成功の要因を探りましたが、今回はその後の国内サーキットジムの動向とゲルマニウム温浴などとの複合化の業態で成長している小型フィットネス施設についてご紹介し、新たなトレンドをピックアップして見ました。
1.国内サーキットジムの店舗展開動向
(ア)カーブス、J-サーキット、ビーラインのFC展開力による3大ブランド化
日本国内では、カーブスの出店の勢いが圧倒的で、07年5月中には、合計で446店舗が開設される予定です。カーブス・ジャパンでの店舗のFC権の販売は、既に600件を超え、フランチャイジーオーナーの2次募集も開始されていますから、今後もハイペースでの出店が期待されます。
2年経たずにこれだけの店舗を開設できるカーブスのパワーは驚異的で、FCビジネスの勘所を押さえたカーブス・ジャパン社の経営戦略の賜物だと思います。
カーブスを追いかける国内組のJ-サーキットは、120店舗(ノンライセンス施設など含む)、ビーラインは107店舗と、こちらも先行企業の強みを生かし順調に店舗数を拡大しています。カーブスを加えたこれらの3つが、現時点での国内でのサーキットジムチェーンの3大ブランドといって差し支えないと思います。
今後、3大ブランドに続くボディーズやライブステーション、アルペンクィックフィットネスや既存の施設を持つ大手フィットネスクラブ系の新しいブランドなどが、どのように成長戦略を描いていくのか、楽しみな状況です。
(イ)サーキットジムへの機器、設備の付帯の動き
トップを走るカーブスを始め3大ブランドの標準仕様は、基本的に油圧式マシン、ステップボード台といった基本的なパッケージングを踏襲していますが、店舗面積に余裕のある施設や売上効率向上を図るオーナーでは、ゲルマニウム温浴器やバイブレーションマシンなど設置面積も小さく、操作も手軽なことから、サーキットジムの会費以外の収入獲得を目的に導入されている例が増えています。
2.小型フィットネス施設の複合業態の動き
サーキットジムよりさらに面積に余裕のある場合、岩盤浴やホットヨガスタジオなどのアイテムで複合化する例が、フィット・プラス社が提案するfresh(エフレッシュ)です。オーナー側の施設の規模に応じて複数の提案パターンを備えていて、加盟金や市場調査費なども細かく設定しています。
提供サービスと事業面積は以下のようになります。
フィット・プラス社のfresh(エフレッシュ)事業のパターン
タイプ→内容→面積
A→30分クックフィットネス(サーキット) →30坪~40坪
B→30分クックフィットネス+ゲルマニウム温浴→35坪~50坪
C→30分クックフィットネス+岩盤浴→ 50坪~80坪
D→30分クックフィットネス+ゲルマ+岩盤浴→70坪~120坪
E→30分クックフィットネス+岩盤浴+ホットヨガ→100坪~150坪
F→30分クックフィットネス+岩盤浴+スタジオ→100坪~150坪
*フィット・プラス社は、さらにレンタルビデオチェーンを展開する㈱ゲオのフィットネス事業運営会社の㈱ゲオフロンティアとも業務提携を結び、350坪~500坪のゲオフィットネス店舗の中のホットヨガ・SPA部門のエフレッシュ店舗併設店の展開も始めています。
「条件にあった物件を探す」というアプローチから「物件に合わせてサービスとシステムを用意する」というオーナー側の視線に合わせたアプローチを行っていることがわかります。
3.小型フィットネス施設の特徴の再整理
前回Vol.1で整理した小型フィットネス施設の特徴は、以下の通りです。
参加者の視点
1)従来のフィットネスクラブに参加できなかった層を対象としている。
2)いつでも参加できて、短時間で満足度を得られるシステムを構築している。
3)プログラム内容がシンプルでわかりやすい。
4)常にスタッフや会員同士のコミュニケーションが図れる。
5)商圏設定が狭く、徒歩、自転車で通える。
経営者の視点
1)施設規模が小さく、初期投資額が低い。
2)商圏や会員数が少なくてすむ、損益分岐点が低い。
3)FCシステムを採用しているためノウハウが得やすい。
今回紹介したフィット・プラス社などの事業展開から、以下の項目が追加します。
4)顧客層が共有化できれば、複合化することが比較的容易である
今回は、小型フィットネス施設にサーキットなど顧客との高いコミュニケーション能力を求められる分野とヨガ、ピラティスなど指導者の技術能力が高い分野の双方に複合化し事業成長の可能性があることがわかりました。次回は、これらの小型フィットネスクラブに求められる、人材の能力要件や育成のシステムなどの課題を探ってみたいと思います。