認知行動療法を用いた取り組み
今村貴幸 (東海大学 スポルツパートナー)
先日(11月17日)東京大学医学部において「平成20年度に導入される【新たな健診・保健指導】における認知行動療法の役割」という本年度の研究会のメインテーマで開催された、第2回生活習慣病認知行動療法研究会に出席してきました。
多くの方にとっては聞きなれない言葉だと思われます。
「認知行動療法とは、人間の思考・行動・感情の関係性に焦点をあて、学習理論をはじめとする行動科学の諸理論や認知・行動変容の諸技法を用い、思考・行動様式を修正し症状や問題を解決していく治療法です。
これまでに、うつ病・パニック障害・不安障害・強迫性障害・PTSD・摂食障害・物質関連障害などの治療に用いられ、多くの効果が実証されています。
一方、現在の我が国での生活習慣病の予防・治療・予後管理において大きく欠けている点は、患者が健康行動を身に付け,自立的に健康維持あるいは症状管理を行っていくことが出来るように、患者を動機付けるとともに、生活改善を指導していくためのノウハウや専門家が少ないということです。
患者のセルフコントロールの獲得をねらいの1つとし、かつ患者の生活状態に応じた多様な行動変容の諸技法を提供できる認知行動療法は、このような患者指導に非常に有用であるといえます。
欧米では、すでに生活習慣病のみならずさまざまな慢性疾患のケアや予後管理に認知行動療法が適用され効果をあげていますが、わが国においては、十分な普及に至っておりません。
生活習慣病の罹患数や動脈硬化による心臓病、脳血管障害を考えれば、生活習慣病の治療に、認知行動療法の手法を積極的に、かつ早急に導入していく必要があると考えられます。」以上のような趣旨によって昨年設立されました(研究会設立趣旨より一部抜粋)。
参加者の多くは、医師、看護師、理学療法士、管理栄養士や運動指導士などです。今回は17の一般演題発表と教育講演及びシンポジウムがあり、活発な意見交換が行われました。
私は、一般演題の中で「糖尿病教育入院による運動変化ステージの経過と血糖コントロールの関係」というテーマで研究発表しました。
概要は、教育入院をした2型糖尿病患者の方を、教育入院時の運動実施状況と1年後に運動の実施状況から3群に分けてHbA1cの値に差がある検討したものです。
結果、教育入院前から積極的に運動を実施していた人と、教育入院によって運動に対する行動変容が見られた患者さんは、教育入院後、運動に対する行動変容が無かった方と比べ、HbA1cの値が良好であることが示されました。
つまり、認知行動変容テクニックを用いた介入をすることで、血糖コントロールに良い影響を与えることが出来ることが示唆されたのです。
今回他の方の研究発表や実践報告を聞き、生活習慣病になった方が、再発あるいは状態が悪化しないように、患者さんに対し行動変容させることは多くの医師やコメディカルにとって重要な問題であると感じました。
また生活習慣病にならない為の一次予防として、運動実践やその他の生活習慣改善を促すための行動変容技法の実践は、今後非常に重要な役割を果たすものと考えます。