ホームフィットネス市場が顕在化、クラブはダイエット支援サービスを開発せよ

フィットネスビジネス7-8月号 2007年 特集記事より

株式会社クラブビジネスジャパン様のご厚意より弊社脇本が受けたインタビュー記事を転載させていただきます。

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ホームフィットネス市場が顕在化、クラブはダイエット支援サービスを開発せよ


巨大なダイエット市場

今年1月に健康産業全体について俯瞰し体系化し整理したうえで、各々のビジネスについて簡単ではありますがわかりやすくまとめた『健康ビジネス業界がわかる』(技術評論社)という本を出版しました。

その中で健康に関して生活者が抱える「課題」を生活習慣病・メタボリックシンドロームなど11に分類しました。この中で最も大きなマーケットはダイエットです。

私たちはさらにこのダイエットに絡んだビジネス分野をPLAN系、DO系、SEE系、P・D・S系の4つに分類しました。(表1参照)

キーは継続支援の技術

 ダイエットに関しては、生活者がどんな商品・サービスを選択するにせよ、キーになるのは「継続支援」の技術だと思います。これにはプリダイエットとオンダイエットそれぞれの技術が求められるでしょう。

プリダイエットでは、自分のからだの現状や他の人のダイエット経験―「ダイエットは失敗する人も多い」など―を知ること、また目標設定をどうするのかといった「準備」が重要になると思います。

オンダイエットでは、食事(摂取カロリー)と運動(消費カロリー)のバランスをどうするのか、ストレスにどう対処するのか、いかにモチベーションを維持して継続するか、失敗した時に再スタートを切るにはどうしたらいいかといったことが重要になると思います。

サービスを提供する側からいえば様々な継続支援のドライバをみつけ、その中から自社のターゲットにあった継続支援のドライバを選択し、自社の強みを活かした継続支援サービスを考えることが重要になると思います。

プリダイエット・オンダイエットを通して一貫したサービスにすることも重要でしょう。

ダイエットセンター機能を取り込め

 継続ドライバには資料1に示す、8種類くらいがあると考えています。私たちが自主的20~40歳代の女性を対象に調査した結果では、この中で「インセンティブ」や「パーソナライズ」を魅力的と思っていることがわかりました。

具体的なアンケート項目としては「ポイントがたまり、そのポイントが還元されるサービス」、「パーソナルアドバイスがあるサービス」、「自分にあった目標設定のアドバイスがあるサービス」が上位に挙げられていました。

米国では既に、こうした継続ドライバを踏まえて創られた事業があり成長しています。「カーブス」などの女性専用小規模サーキットトレーニングジムはその代表格といえるでしょう。

カーブスは私たちの分類ではDO・運動系に分けられますが、それ以外にも日本にはないけれど成長している事業があります。それはPLAN/CHECK・食事系に分類される「ウェイトウォッチャーズ」や「ジェニークレイグ」、それからPLAN/CHECK・運動/ストレス(リラックス)系に分類される「インチェスア&ウェイトウェイトロスセンター」などのような「ダイエットセンター」です。

こうした施設の多くは、ダイエットをするところではなく、ダイエットについて学習したり、カウンセリングを受けたりするところです。場合によって食品を中心とするダイエット商品を売買したりもします。(編集部注*インチェスア&ウェイトウェイトロスセンターはトレーニングマシンやカーディオ系マシンを備えていて、フィットネストレーナーやライフスタイルカウンセラーがダイエットのためのサポートを提供している)

ダイエットセンターの特徴としては、持続性を大切にしていることが挙げられます。最初にダイエット食品を活用して減量を成功させ成功体験を味わってもらい、最終的には普段の食生活を改善し、ダイエット商品に頼らずとも体重をキープできるようになるプログラムを提供しているところが多いです。

指導方法としては個別カウンセリング方式と集団方式の2種類があります。昨年6月食品大手のネッスルが「ジェニークレイグ」をおよそ6億ドルで買収しました。アメリカでは需要が顕在化し成長しているビジネスとみられており、たいへん注目されてもいます。
日本のフィットネスクラブでも今後こうしたサービスの一部の機能が取り入れられることは十分考えられます。

ネット活用した継続支援

 アメリカではネットによるホームフィットネスを支援するサービスも開発され、少しずつ利用され始めています。

例えば昨年始まった「ジミー20」(www.gimme20.com参照)や「トレイネオ」(www.traineo.com参照)は、トレーニングメニューの作成やその結果の管理ができ、さらにSNSとしてマイページ機能やコミュニケーション機能があって、ダイエットをしている仲間たちと情報提供や交換、励まし合いなどができるようになっています。

基本的に広告モデルをとっているため、これらのサイトは無料で利用できます。また2005年にできた「ユーパンプ」(www.youpump.com参照)は模範になる様々なエクササイズの映像をネット上で購入し、自分のPCで「ユーチューブ」のようにチェックできるというサービスです。

こうしたサービスの特徴は、自分がダイエットや運動を始めようとした時にどんな方法に人気があるのかということをチェックしながら探すことができたり、自分でも実践しているエクササイズ方法などを投稿することができたりすることなどです。

投稿者にはリウォード(報酬)がポイントで与えられます。こういうリウォードシステムなどは日本でも今後取り入れられるようになると思います。このようにアメリカのビジネスの中には日本での今後の取り組みを考えるうえで、部分的にヒントになるところがあります。

ホームフィットネス会員

 リアルなサービスでは、「マイクロダイエット」のようなダイエットをサポートするミールリプレイスメント食品が多数開発されてきています。

そうした中でキリンヤクルトネクステージの「リエータ」は成長著しい商品として注目されています。2004年に約12億円だった売り上げが2006年には約70億円になり、マイクロダイエットが占めていた市場シェアを急速に奪っています。

リエータはサイト上でも「リエータカフェ」というコミュニティサイトを運営していて、そこからのリピート購入も多いそうです。
(www.healthbizwatch.com/keyperson/index.php参照)

こうしたネットと連動したサービスは各社でもっと拡充されていくものと思います。

フィットネスクラブもクラブに来て行ったエクササイズや家庭や通勤途上で行ったエクササイズがポイントによって交換でき、ウェブ上のマイページにそうしてたまったポイントで何かクラブの商品・サービスが買えるようなサービスを考えてみてはいかがでしょうか。

会員だけでなく予備軍や退会者にそういうサービスと月1回のクラブでの測定&カウンセリングや会報誌の提供などをパッケージした「ホームフィットネス会員」を廉価で提供したりするのもいいかもしれません。将来クラブに入会または再入会してくれる可能性も高まります。

ホームフィットネス市場を狙え

 現在フィットネスクラブに来ている方々は元気でアクティブな生活者が多いと思います。

それが今後はメタボリックシンドローム予備軍を含めた半健康人の方々にも広がっていくようにクラブ運営企業はマーケティングすることが求められていると思います。

こうした新しいターゲット層は、運動一辺倒ではクラブに足を運んでくれませんから何か別のサービスやサポートを提供することが大事になるでしょう。

ステップとしてはホームフィットネスのマーケティングに取りくんだうえで、クラブに足を運んでいただけるように誘導していくのがいいかもしれません。これからの5年間は「ホームフィットネスプログラム」の開発と提供が鍵になるかもしれません。