『これからのキャリア観~「成功を目指す」から「健やかに働き続ける」へ』で始まるのが「キャリア・ウェルネス」という2021年11月10日に発刊された書籍です。

どう読んでも、我々が目指す健康視点で展開していくウェルネスカンパニーづくりとビジネスを、人が協力してどう創って幸せになっていくのか?の考え方と極めて密接で、共感に満ちた内容なのです。HRセクションのビジネスパーソンのみならず、B2Bに関与する全てのビジネスパーソン、特にヘルスケア領域に従事する方々は読むべき書籍です。
私、大川が読み進める中で共感だらけの内容だったのですが、「ここをもう少し詳しく伺いたい」という部分を直撃してみました。

村山 昇(むらやま のぼる)氏

キャリア・ポートレートコンサルティング 代表
組織・人事コンサルタント
概念工作家

村山 昇(むらやま のぼる)氏

Profile

1986年慶應義塾大学経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。93-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営修士(MBA)取得。著書に『スキルぺディア』『働き方の哲学』(以上、ディカバー・トゥエンティワン)、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』(クロスメディア・パブリッシング)など。

我々スポルツは健康経営のサポートを数多く進めているのですが、あるべき姿のbeingというベースがあって、やるべきdoingを展開するという構造でないと上手くいかない現場をいくつも経験してきています。キャリア観とスキルの関係に少し似ていると思います。doingとスキルはわかりやすいけど、すぐ真似できます。これからの時代の方向として、beingとキャリア観の大切さにフォーカスすべきと感じています。

村山さんは、働き方のシフトを刹那に消費される「快」から、持続的に自分がはつらつとできる「泰」へとしています。この文字「泰」をここで選んだ背景について教えていただけるでしょうか?


私は日ごろよく、この世界の事象を考えるにあたって、「おおもと」VS「表層・末端」という対比をします。例えば下のような感じです。

このような2項対比の中で、「泰」と「快」は出てきました。すなわち、「仕事が楽しい」とはどういう状態なのかを考えたときに・・・

私は企業内研修の事業者として独立(個人事業主)を決意しました。どんな種類の研修で勝負しようかと考えたときに、「おおもと」的なほうを迷わず選びました。
「表層・末端」的な研修、すなわちスキル習得や、先端の専門知識を伝授する研修・セミナーは参入事業者が多かったですし、私自身はそうした変化を追っていくコンテンツにはあまり関心がなかったからです。
それよりも、人びとの働く根っこの意識を醸成する内容のほうが自分の関心でもありましたし、世の中に良質のものがなかったということもあります。「じゃ、自分がいいものをつくってやろう」と。

19年前に独立し、自分なりに「キャリア開発研修」プログラムをこしらえて売ってきました。
ところが当初は、顧客企業のほとんどはスキル研修にばかり目が向いていて、キャリア研修のような「おおもと」を育むような研修にはあまり需要が起きませんでした。
ところが昨今は健康経営が次第に叫ばれるようになり、「表層・末端」の部分ばかりに金をかけるのではなく、「おおもと」の部分にも研修を施さねばということで需要が高まりつつあります。

ご質問のなぜ「泰(たい)」かということですが、「快」に対する字が何かを考えたときに、「泰然自若」という状態が思い浮かびました。
「泰」は「泰(やす)い」と読み、太くて安定しているという意味です。「太い」という漢字はこの「泰」からきています。

私は人が「健やか」であるとは、その人がたとえどんな状況にあっても「泰然自若」と構えられる状態にあることだとイメージしています。
私は「快」を否定するつもりはありません。ただ、「快」のみを目的として追う生き方・働き方は、ほんとうの健やかさには通じないと思います。
なぜなら「快」は持続せず、不安定なものだからです。
ですが、「泰」がベースにあり、その上で「快」が得られれば、それこそほんとうの健やかさではないでしょうか。

何事も「おおもと」をしっかりつくることが大事だと思っています。
人びとを「泰」の状態にさせる製品・サービスは地味で金になりにくく、難しい作業です。
しかし私は、御社がユニークな発想で「泰」、すなわち「おおもと」を充実させる製品・サービスをつくってくれることにおおいに期待をしています。
私も「おおもと」にまなざしを向けたサービスを志向してまいります。

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2021年12月20日]