6月3日に開催された一般社団法人ウェルネス総合研究所主催のウェルネストレンド白書 Vol.2発刊記念セミナーに参加することができた筆者が感じたことは、同白書の隠れた価値についてです。データの使い方、解釈の仕方、総括的に言えることなどの解説をご担当された武田猛氏に、その可能性を伺ってみました。

武田 猛(たけだ たけし)氏

武田 猛(たけだ たけし)氏

Profile

18年間の実務経験と18年間のコンサルタントとしての経験を積み、36年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わる。コンサルタントとして国内外合わせて700以上のプロジェクトを実施。「全世界の中での日本を位置づけ、自らのビジネスを正確に位置づける」という「グローバルセンス」の元に先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評がある。

Q1.ウェルネストレンド白書のそもそもの企画刊行の背景について教えていただけますか?ヘルスケア領域で長くマーケットを分析してきた武田さんならではの意図も組み込まれている気がしました。

「市場レポートは老舗調査会社が、ご存知の通り企業へのインタビュー中心で数字もつくってレポートしていて、かなりバイアスがかかっていると考えた方がいいものが多いです。
その中で企業が考えたベネフィットがその通りになっていないことも我々がみると結構ありました。

そこで、消費者がどういう目的で45~47あるとされるヘルスベネフィットと素材成分についての認知度と理解度、そして摂取意向を調べて、より詳細な商品開発、マーケティングに役立つレポートにしようとやってきました。

さらに、今回のウェルネストレンド白書ではデモグラフィックだけ切るのではなく、因子分析によって消費者のプロファイリングでセグメンテーションするという初めての試みで非常に面白い結果が出たと考えています。」

消費者像を浮き彫りにする意図を持ったこのようなアプローチは「会議室ではなく、現場で使えるより定性的なレポートを目指した」ことによって創出できたとのことでした。

Q2.今回2回目を出してみて感じている手応えなどはありますか?4,500人以上のサンプル数なのに1回目をやられてから半年後に今回の2回目という頻度も魅力的に感じますね。

「1回目と2回目とは全く異なるサンプルに質問しているわけです。
それにも関わらず7つのセグメントの出現率はほぼ同じでした。
これは今の日本の代表的な姿なのかというところに自信が持てました(笑)

もう一つは、今回三大栄養素について特に深掘りして聞きましたので、各セグメントの人がプロテインなどに対してどう思っている、どう向き合っているかが非常によく分かりました。」

また、すでに購入してくださった顧客とのさまざまなやりとりから新たな調査フォーカスが生まれ、レポートの進化に繋がっていく可能性を感じているという。

「多くの企業は自社のお客様はすごく研究しているのですが、競合分析とかノンカスタマー研究はまずしていない。しかし、このレポートを活用すればそれができます。
ノンカスタマーをいかに顧客化するかの具体的施策を考えることができます。」

Q3.ユーザーにこの白書をどんな使い方をしてもらいたいですか?

「特に機能性表示食品制度がスタートしてからは、完璧にプロダクトアウトです。
この成分はこういうメカニズムでこういうヘルスベネフィットなのでプッシュということなのですけど、やっぱりマーケットユーザーインにもう一回立ち返るべきかと思っています。

そういう意味で今現在の生活者をより詳細に見ていって、有効なマーケッティング手法を考えるための道具にウェルネストレンド白書はなると思います。

機能性表示食品は約5,000件以上届け出があります。
その中で実際成功している商品は50もないと思います。そうすると1%です。

機能性表示さえすれば売れるわけではなく、表示はもちろん重要ですし、サイエンスも重要なのですけど、それをより活かすためにも生活者の理解は重要だなと思います。
NNB※も言っていますけど、ヘルスクレームの幻想ってことは欧米でも言われていることであって、ヘルスクレームだけで成功した商品なんてないわけです。

日本企業もそういうことで次のステップに上がるときかなと思います。」

そのためにもウェルネストレンド白書は食品会社やウェルネステーマの他業種のマーケティングに新たな活力を生む導火線になるはずだとインタビュアー大川は感じました。
今回はありがとうございました。


●ウェルネストレンド白書について
https://wellness-lab.org/trend/

※NNB(英国発、食品・栄養・健康分野の業界専門誌:New Nutrition BUSINESS)

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2022年6月28日]