書籍「結局、これを食べるが勝ち」が2023年5月20日にリリースされました。これに先駆け2015年末に「なぜあの人は、夜中にラーメン食べても太らないのか?」をリリースしたとき「あすけん」の会員は60万人でした。約8年を経て、現在800万人を超える会員となっています。
前作と比べて何が最も異なる点でしょうか?著者の道江美貴子さんに直接お話を伺ってみました。

道江 美貴子(みちえ みきこ)氏

株式会社asken
取締役
食事管理アプリ「あすけん」管理栄養士

道江 美貴子(みちえ みきこ)氏

Profile

女子栄養大学栄養学部卒業後、大手フードサービス企業に入社。100社以上の企業で健康アドバイザーを務めた後、2007年、新規事業の立ち上げメンバーとして株式会社askenに参画し、以後「あすけん」の企画・コンテンツ制作・開発管理などに携わる。現在askenの取締役として、あすけん事業統括責任者を務める。著書「なぜあの人は、夜中にラーメン食べても太らないのか?」(クロスメディア・パブリッシング)など。

Q1.2015年末に「なぜあの人は、夜中にラーメン食べても太らないのか?」をリリースしたとき「あすけん」の会員は60万人でした。約8年を経て、現在800万人を超える会員となっています。前作と比べて何が最も異なる点でしょうか?本書の狙いをずばり教えてください。

きっかけとしては「あすけん」の会員が800万人になったことです。
8年前は60万人で十何倍に増えていますが、まだサービスを届けられていない方々がたくさんいるというのが現状だと思っていました。

「ひとびとの明日を今日より健康にする」というミッションを掲げていますが、それがアプリだけでなく他のかたちでも届けられるんじゃないかっていう話があったんですね。
そこで、情報を書籍というリアルなかたちで、「あすけん」のサービスを使っていない、知らない皆さまにもまずはお届けしたいというのがきっかけでした。

今回の本には「あすけん公式」と書いていますが、私たちが創業当時から「あすけん」を通じて大切にしてきたコンセプトが、「自分の食事を自分でコントロールできる知識を身につけて健康を保ってほしい」ということが軸で、これはずっと変わってはいないんです。

それが「あすけん」のユーザーさんにとっても、普段の生活の中でちょっと使えて、無理して学ぶのではなく、よくあるシチュエーションを題材に「こんなとき選ぶならどっちのほうがいい?」というクイズ形式でイラストも入れて、楽しんで読んでいただきたいと思って作りました。

あと、前作と違うところは、食事データが2015年のときは2億件でした。
今回、8年経って食事データが45億件とめちゃくちゃ増えていて、その数からダイエットや健康になりたいと思っている方がどんなものを食事として選んでいるのか、というのが食事のデータベースと言えて、それがダイエッターの食実態と言えるまでにサービスが成長したとも思っています。
「あすけんデータ」と称して、お菓子のランキングなどを出しているのがそれです。

Q2.多くの食事系サービスが苦戦している中で何が要因で「あすけん」は成功しているのですか?

よく聞かれるんですけど、「これが」っていうのが1つとかではないと思っているんです。

歩数はウェアラブルをつけたりとかで自動で記録を解決できると思うんですけど、食事はまだ自動で取ることはなかなかできなくて、ユーザーさんの能動的な記録行動がないと駄目というところがすごく違うし、ヘルスケアの中でも特異だと思うんですよね。

毎日の記録がとにかく続かないと、ユーザーさんにとっても全くメリットがないことになります。
そこに、続けることに阻害要因がないようにベースのことをひたすらちゃんと整える、やるべきことをやってきたというのが、意外と「あすけん」の強みかなと思っています

例えば、検索で出ないメニューや新たな市販食品コードなどの登録作業を毎日栄養士たちが行なっています。
またユーザー様からの投稿情報などに素早く対応するというところに力を使っています。

あとはユーザー様のアンケートやインタビューをやってまして、最近では『「あすけん」を1週間以内でやめてしまった方々』にインタビューして、どういう風に使ったかなどの細かいことを聞いて、私たちが意図しないようなところでつまずいたことなど、発見して対策しています。

このようにユーザー体験を都度都度、確認して改善していく。あまり派手ではない、当たり前のことをしてきた成果なのかなと思っています。

Q3.あすけんの利用者の成功失敗の分かれ目はどこにあると思われますか?

最初の1週間ぐらいっていうのが1つの境目にもなる起点だと思います。
面倒なことはやりたくない、ログって面倒だと思います。
でも成功している人って、そんな中でも細かい気づきをキャッチできてる人は続いていると思うんですよね。

体重が減るまで時間がかかるから、1週間やそこらでなんとかなるわけじゃないと思うんですけど。記録してみたら、「ああ、なんか知らないけどこのビタミンが私は少ないらしい、多いらしい」とか、「なんだこの飽和脂肪酸って」とか、ちょっとしたアドバイスとかで気づきがあって、そこで行動が1つでも変えられた人は楽しく記録を続けてくださっているなと思います。

私たちのサービスの設計が悪いのは絶対的にあると思うんですけれども、何か気づきが得られなかったり、最初からそういうモチベーションではなかったみたいな方だと、なかなか継続が難しかったりっていうのはあると思います。

サービスの中で、どうやって気づきが得られるように背中を押せるかが、まだまだ「あすけん」としては足りないところはたくさんあると思っているので、初期段階でそういう体験をしてもらえるようにすることは結構意識して考えてはいます。

Q4.本書は誰にいちばん読んで欲しいですか?

今回の本は、栄養のことは難しくてあまりわからない、という人でも楽しんで読んでもらえるように、身近な食事選択のコツをテーマにしています。
「あすけん」のユーザーの方にも読んでいただけたらうれしいですが、「あすけん」に触れる前の方で「ちょっと食事が気になる」「自己流でやっているけど…」という方にも読んでいただけたらうれしいです。

栄養のことを簡単に楽しくわかっていただけるように、食事の選び方がわからないっていう人にちょっとしたコツをお伝えすることで、例えば、間食の選び方をこういうことに気をつければいいんだっていう、少しの知識があるとすごく変わると思っています。


取材後記:
今後本書の読者がどんな反応をし、どう「あすけん」との関わりを持つかとても興味深く感じています。ぜひ追跡取材してみたいと思います。

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2023年4月18日]