東京大学医学部附属病院22世期医療センター検診情報学講座准教授時代からお世話になっている奥真也さんがここのところ続けて書籍を出していて、気になって読んでみるとこれはこれは多くのHBW読者にも紹介したいと思い、今回ご本人にインタビューをお願いしました。

奥 真也 氏

医療未来学者

奥 真也 氏

Profile

1962年、大阪府生まれ。医師、医学博士、経営学修士(MBA)。大阪府立北野高校を経て、東京大学医学部医学科卒。英レスター大学経営大学院修了。専門は医療未来学、放射線医学、核医学、医療情報学。東京大学医学部附属病院放射線科に入局後、フランス国立保健医学研究所(INSERM)に留学。東京大学医学部附属病院22世紀医療センター健診情報学講座准教授、埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学先端情報科学研究センター教授などを務める。その後、ビジネスの世界に転じ、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。埼玉医科大学総合医療センター客員教授。創薬、医療機器、新規医療ビジネスに造詣が深い。

著書に「放射線を超えて」(SCICUS、2012)、「Die革命」(大和書房、2019)、「未来の医療年表」(講談社現代新書、2020/9)、「世界最先端の健康戦略」(KADOKAWA、2020/11)など。
Twitter:@medfuturologist

Q1.医学の発達がもたらした「超長寿時代」における健康法は従来と根本的に異なるとしながら、その中で新理論として「健康ファイナンシャル思考」を提唱されています。詳しくはこのインタビュー読者にも書籍を手に取ってもらうとして、この思考のコンセプトを少し教えていただけますか?

はい。会社の経営などで言われるPDCA(Plan-Do-Check-Act)を思い浮かべて下さい。
そして、個人や家族でお金を貯めることも、使うことも、それぞれ単独に成り立つことではなく、相互の関係性が重要で、やってみてうまく行ったから継続してやる、ちょっとうまく行かないから工夫して変更してみる、というようなことが大切だと思います。

そのため、まずは「可視化」して、現在の健康資産の状況を可視化することから始めてほしいと思うのです。
健康資産は、健康をお金に見立てただけで、お金のことばかりではない―むしろお金はその一部に過ぎないと思います。

健康ファイナンスにおける節約は、例えば、一生の間に可能な心拍数を無駄遣いしないために過度に強い運動を行わないことなどが挙げられると思います。
また、投資の例としては、「(軽い)運動習慣をつける」「薄味に慣れておく」などがそれにあたります。
そのようにして健康資産を最適化し、初めてその健康資産を「消費」できるのです。

消費は、普段は節制しておき、大事な人たちとの楽しい会食の機会にはカロリーを気にせず食べるとか、身体が動かなくなってからに備えて練習しておいた(投資)VR=Virtual Realityを用いて、若いころに熱中したスポーツを追体験するなど、も含まれます。

Q2.なるほど、とても分かりやすいです!本でも触れている、自分の健康をプランニングしていくという発想はとてもポジティブで好ましく思えるのですが、今まであまり言われてこなかった気がします。奥さんご専門の医療未来学というスタンスから導かれた発想に思えたのですが、いかがでしょうか?

医療未来学とは、技術革新によって得られる医療の進歩について、医学、情報学、その他の自然科学のみならず、社会的、経済的、政治的、文化的背景なども考慮に入れて綜合的に判断し、評価する学問です。
医療に関わるいろいろな業界を渡り歩いて来た結果、このような視点を持つようになりました。

そのような枠組みで、個人の健康について考えてみると同じような面があります。
単に医学や医療だけから考えることはできず、その人の価値観や経済状況、家族の状況などによって価値判断は変わってきます。
ちょうど、ライフプランにおいてお金のことを考えるときと同じような発想が望まれると感じたのです。

Q3.なるほど、健康ライフプランですね!さて、今後の奥さんの企画や戦略ビジョンについて少しでも教えてください。

今後、医療未来学という視点から、皆さんが心身健康で、「生きたい」と思って長い人生を送っていただけるために、いろいろな形で発信していきたいと考えています。
Twitterやfacebook、その他のメディアも使っていきたいと思っています。
その一方で、22世紀中盤から後半にかけて世の中が求めている医療や医療ビジネスの実現にも力を注ぎたいと思います。

今後、医療の範囲は拡大し、予防領域に広がっていきますし、人々の生活により自然な形で溶け込んでいきます。
アップルウォッチやFitbitのような身体につけるタイプのセンサーだけでなく、家や公共施設に設置されたセンサーが我々を守ってくれるようになるのです。
医学以外の学問や異業種のノウハウが生きるようなサービスの実現はとても楽しみです。

当面の話としては、来年の早い時期に、中学生、高校生が医学を目指すためにはどういうことを考えるべきかという本を出版する予定があります。
また、その後には、今後の社会に重要と思われる「不死時代の死の問題」にも踏み込んで行きたいと考え、いまいろいろと取材をしています。
未来の医療の状況を想像できる小説なども手掛ける構想を持っています。

本日はありがとうございました。

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2020年12月11日]