“たかが歩数計されど歩数計”物語から読み解くヘルスケアビジネス

弊社SPORTZ&HBWとも長年お付き合いただいているヘルスケア業界の重鎮小林洋さんに、コロナ禍にあって我々ヘルスケア業界がアプローチすべき方向性にある本質は何かを伺いました。
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小林 洋 氏

健康医療デザインアドバイザー

小林 洋 氏

Profile

1956年京都生まれ。京都工芸繊維大卒 オムロン株式会社でデザインマネジメント担当 オムロンヘルスケア、オムロンコーリンで健康、医療事業担当 オムロンコーリン代表取締役 オムロンヘルスケア執行役員専務を歴任。2016年12月にオムロングループを卒業し、現在はフリーランスとして 健康医療デザインアドバイザー 神戸医療産業都市推進機構 神戸リサーチコンプレックス協議会のコーディネーター

Q.今のサービスデザインエッセンスが集合してますね。その後の展開はどうでしょう?

その前にちょっと寄り道、心拍変動についての関係をお話しします。
国内のマーケティングから移動して2006−8年、オランダアムステルダムにいました。
欧州、中東、アフリカビジネスのマネジメントでした。その時のお話!

フィンランドのPolar社本社訪問の機会を得ました。
創業者が立ち上げその娘さんが社長。2006年ごろだったと思います。
拍計測でアスリートの体調維持、トレーニング効果増強をサポートしたPolar社は今のWearableセンシングの元祖のようなところで憧れでした。

特に、2000年代には有名アスリート、トレーナーとのネットワークを欧州、USAに築いておりその心拍変動によるトレーニングノウハウなどプロフェッショナルなエビデンスとマニュアルがありました。
パートナーとして組む相手としては最適と思っていました。(このノウハウとても羨ましかった)

また、丁度ノルディックウォーキングが北欧で広がった頃でステップカウンター(歩数計)や体重計、体組成計とのコラボレーションをPolar社と目論んで幾つかトライしていました。(またO社ブランドでの心拍計の供給もあり)
O社欧州代理店会でノルディックウォーキング大会開催、血圧計などの代理店の代表に参加いただき、もちろんPolar社がサポートに来てくれてプロの指導が受けられました。
O社ブランドを付けたノルディックウォーキング専用ポール(Lekki製)がプレゼントでした。(今でも宝物)

この写真の左の方はアルペン金メダリストのミッターマイヤーさん。右の方は欧州チャンピオンの旦那様のノイロイターさん。
このイベントをPolar社とともにサポートしてくれました。感激でしたね。
このイベント参加者にはもちろん歩数計をプレゼントです。
(この時ノルディックウォーキング用ウェアに歩数計専用ポケットをつけたものを試作していた)

また、Polar社の本社はフィンランドのオウルにあり、バルト海最深部の軍港がある街。その郊外にカッコいいビル。(写真がないのが残念)
フィンデザインの家具、照明、従業員のカンティーンなど羨ましい限りのデザイン。(勝手に新本社もそんな風にしたいなと思っていた)
やっぱり、ファシリティにしっかりしたデザインコンセプトがあり、これは今でこそみなさん認めるところだけど、最初から優れたデザイン経営なので学ぶところがすごく多かったです。

余談になりますが、当時の社長、創業者の娘さんは経営を任されたということですが、スイスに住んでいました。
ここにも訪れ、事業化の話をしていたのが思い出です。
創業者がアル中?という噂の中、早くに権限委譲されていて(冬の長いフィンランドではアル中や鬱は多いと聞く)デザイン経営は引き継がれていました。

この分野でこの会社に追随したSUUNTO、GARMINにとってもお手本はPolar社でしたね。
SUUNTOの本社もオウルだったかな?Polarとの関係もあったと聞きますが、測定したINDEXは軍事的要素も大きく、潜水に対して200メーター以上の深度や防水など研究していたと思います。

やはり生体センシングの根本は軍事技術!
戦争下で兵士が倒れている。しかし生きているか確認できない、そのための生体信号をどう取るか。
これは消防士や災害救助も同じ、助けに行くべきかの判断もセンシング技術がサポートする。そのような技術がこの事業をやっている根本にあることもわかってきたのです。

さて、自分では自転車競技やりませんが、唯一大好きなレース観戦です。
2020年のツールドフランスは8月29日からになりましたが、いつもレーサーが前のジッパーを開けると胸に心拍のセンサーがついているのに気づきますが、ご存知のようにこれが大変重要で、レース中のレーサーの疲労度や栄養の供給などサポートカーから指示が出ています。
チームプレーでもあるので個々のレーサーの状況も把握してモニタリングしていて、VO2MAX、AT、疲労度、、、、いろいろな管理指標が出ています。

昔から欧州での自転車競技やノルディックスポーツは多くのファンがいて、日本とは大きく違っていました。
今、日本も底辺が広がりつつあってレースや一般のかっこいいレーサーを見るようになりましたね。
ノルディックスキーやアルペンスキーなどの競技が広がることを期待しています。
色々Polar社をベースに語りましたが、心拍変動は基本ですね。昔から中心です。
今、AppleWatchが心拍、心電計測を搭載してきますが、まさにここでしょうね。

Q.心拍変動の重要性はみなさん十分に認識されていると思いますが、事業としてその先も聞きたいですね。

残念ながらこの心拍変動をINDEXとする事業展開と歩数計から活動量計に進化し始めたINDEXは、少し距離を置き始めました。
つまり医療、特に生活習慣病、糖尿病の運動療法の指標に歩数、活動量が重要になってきたのです。

O社は事業としてスポーツより医療ヘルスケアの連続性の中で事業を考えていました。(血圧計がど真ん中の事業だから)
ここでまた精度の課題、医療のアカデミックな研究や、実地でサポートするためには医療機器であるということ大きな担保が必要ですが、活動量計??単なる雑品です。

しかし、ここで凹まなかった。精度論文のある活動量計を研究開発発売したのです。
つまり、研究テーマ、論文にこの精度を保証した機種を使ったことが、アカデミア、学会で掲載されリファレンスになるのです。(こんなこと、医療機器でもないのにする?と結構冷たい目で、、これはたかが歩数計されど歩数計なのです)
研究や学会でもある程度ポジションを取りました。これがInnovation4ですね。

さらに、CTの世界が大きな影響を与えます。
BLEがようやく世の中で標準となり、WellnessLinkなどで個人の健康管理をサポートするサービスを提供したいということにつながります。

でも世の中には、スマホで糖尿病や生活習慣病管理ができるアプリが多種出てきて、健康経営に使われる。レッドオーシャンですね。(すでにレッドオーシャンですが、これをスタートできたことがInnovatio5ですか)

OMRON CONNECTという機器のデータプラットフォームを提供し、センシングとしてのボトルネックは抑えるもののヘルスケアサービスにはこのサービス事業の価値観、マネタイズ構築がKeyになってきました。

ここから脱皮できるか、それが今の立ち位置かな?
さらに市場は広がってます。
PHR(Personal Health Record)の活動、医療とヘルスケアをつなぐビジネス自治体や企業での健康経営など、されど歩数計の展開が大きく始まっています。
ベンチャーのWelbyやTWRなども中心の重要なINDEXには、活動量や生活習慣INDEXが加わっています。

特にTWR(Tsukuba Wellness Research)ではこのデータ送信型の歩数計、活動量計をコアのセンシングとして全国自治体に運動プログラムを提供し、その結果医療費抑制効果まで算出するという科学的対応の結果を出しています。

されど歩数計(歩数、活動INDEX)、ヘルスケアデータプラットフォームにはMUSTになりました。Innvation6ですか。

Q.進化過程がよくわかりましたが、ワープした30年ですね。

まとめましょう。ここでの考察。

1)デザイン視点、デザイン思考ってどこにあるの
社会の変化、顧客の変化、技術の変化を読み取る視点?

2)事業のダイナミズムはどこから
デザイン思考でできる?

3)研究、技術開発が大きなKEY
研究、技術開発を理解すること必要?

4)ICT DXは、ヘルスケア分野ではMUST

5)でも顧客はかっこいい生活、健康を求める
ブランドはカッコイイが必須

6)INDEXの価値(歩数ー活動ー心拍変動ーー)

7)プラットフォームと健康サービス

これをお読みいただいた方の経験の中に色々変化ポイントや考えるトリガーなどが存在します。
たかが歩数計ですがされどまだ進化しています。
ハードだけではなく歩数や活動や、医療との連続性や、、、INDEXとして、どうでしょうか?顧客に必要なINDEXとは?

長々と書き出しましたが、時代のエッセンスを組み入れ、ハードからソフト、アルゴ、サービス展開は色々ありますが、今もこんな考え方は続いていて、私が今所属している神戸医療産業都市推進機構や神戸リサーチコンプレックスでも最も重要なのはINDEX!

顧客に価値を提供するにはどんなINDEXの組み合わせ?
ここが肝と思っています。

ありがとうございました。

(このコラムについては個人的価値観でのみ判断しておりますので科学的に適合しないことなど存在するかもしれません。ご容赦ください。)

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2020年9月7日]