HBW編集主幹の大川耕平が、昨年11/29-12/5までモニターとして参加した「地元ガイド厳選“道”探訪_快適e-Bikeで沖縄一周充実旅」は、内閣府令和2年「新たな沖縄観光サービス創出支援事業費補助金」をテコに一般社団法人沖縄県サイクルツーリズム推進協会の謝花さゆりさんを筆頭とした共同体事業チーム(敬称略:沖縄輪業、日本トランスオーシャン航空、JAL JTAセールス、匠設計コンサルタント)によって運営されました。
第二回目のモニターツアーを今年1月に実施する予定が、皆様ご存知のオミクロン株の感染拡大によって中止になってしまいました。

大川は体験して、感動し、感じ、考え、味わった沖縄一周e-Bikeの旅に凄い可能性を感じています。きっと「オキイチ」のブームが来ると思います。そこで、企画者である謝花さゆりさんにツアーのこだわりと今後の方向性について伺いました。

※「オキイチ」とは沖縄一周の意。
サイクリングの聖地である琵琶湖一周は「ビワイチ」と言う。

謝花 さゆり(じゃはな さゆり)氏

謝花 さゆり(じゃはな さゆり)氏

Profile

沖縄県名護市出身。高校卒業後、アメリカへ約2年半留学。帰国後、名護市に事務局があるNPO法人ツール・ド・おきなわ協会に就職し自転車と出会う。退職後もイベントに参加したりお手伝いをしているうちに自転車に大きな可能性を感じ、沖縄を自転車で豊かにしたいと思うようになる。2018年10月に一般社団法人沖縄県サイクルツーリズム推進協会設立。現在、代表理事として活動中。

Q1. 「オキイチ」企画がスタートした背景とツアー体験設計で苦心したことや、こだわりに関して教えてください。

まさに幣協会を設立した一つの大きな目的が、沖縄本島を一周するサイクリングツアー「オキイチ」の商品化でした。
きっかけとなったのは台湾一周の経験です。アジアの自転車先進国である台湾では、台湾一周サイクリングが人気です。

台湾一周ルートの道路や標識が整っており、また取扱い旅行社や自転車店もたくさんあります。
私は2回台湾一周を経験したのですが、沖縄もこのような環境が整っていれば良いのにと強く思いました。
しかし、旅行会社との連携や運営体制の確立等の必要があり、簡単には進めてこられませんでした。

また、日本では国が指定するナショナルサイクルルート(琵琶湖を一周するビワイチや、しまなみ海道など現在6か所が指定されている)の取組みが2018年から開始されました。
沖縄がいち早く指定されるよう活動することも幣協会が力を入れたいことの一つです。

ただし、指定される為には要件がいくつかあり、官民連携がしっかりされていることや環境整備、ソフト面の充実など、指定候補に選ばれるのは簡単ではありません。
特にインフラ整備等については、私たちが意見を述べることはできても手を出すことはできませんから、まずはサイクリングツアーの商品化や人材育成等のソフト面を私たちが進めていこうと話してきました。

そのようなことを考えながら小さなツアー等を実施していたところ「新たな沖縄観光サービス創出支援事業」があることを教えて頂き応募、そして無事採択されモニターツアーを実施することができました。

ツアーを設計する際は、サイクリスト向けではなく、できるだけツーリズム寄りにして、たくさんの方に楽しんで頂けるよう、いかにハードルを低くすることができるかというところに気を付けました。

私や一緒にツアー設計をするメンバーは日頃サイクリング関係の活動をしていて、自転車にも乗っていますしサイクリストや自転車業界の方との交流が多いので、どうしてもサイクリスト目線になってしまいがちです。
一日に50km以上走れば普段自転車に乗っていない人からは驚かれますが、サイクリングを楽しんでいる人からみるとそんなに長い距離ではありません。

一方で、いざハードルを低くしたところで本当に集客できるのか、普段自転車に乗っていない方が自転車で沖縄を一周するツアーを楽しんで頂けるのかという不安もありました。
そこは、共同体事業チームの普段自転車に乗っていないメンバーの意見に耳を傾けるよう意識しました。

本ツアーのこだわりは、参加者自身が自転車を用意するのではなく、e-Bike(電動アシスト付き自転車)のレンタサイクルの活用と、一日の距離をできるだけ短くして7日間で一周するように設計したことです。
一日50km~80kmに設定し、沖縄本島一周約400kmを7日間で完走します。

ちなみにサイクリスト(といってものんびり散策が趣味な方からレースに本気な方まで様々ですが)は1日約100kmを走行し3泊4日で一周するのが一般的な走り方です。

そしてもう一つ大事なこだわりが、安全第一で走行できるようサポート体制の充実を図ったことです。
サイクリングツアーガイドの研修を受けたガイドさんを先頭と最後尾に配置することと、サポートカーをつけて走行途中の補給対応や参加者の荷物の運搬、メカニック対応を万全にしました。

自転車が趣味な方はもちろん、普段は移動手段としてのみ自転車に乗っている方や、沖縄が好きで観光には何度か来ているけど新しい沖縄を発見してみたいという方にも参加してほしいです。

ただ、やはり一日中自転車に乗ること、サイクリストでない方にとっては一日50km~80kmの距離も大変なものなので、本当に初心者向けになっているのか、そもそも初心者が挑戦できるようなものなのか、応募してくれるのか不安でした。

共同体事業チームの旅行社さんも7日間で一周するツアーにどれくらい集客できるのか、これまで取り扱ったことのないツアーだと当初はかなり心配されていました。
その時は、台湾一周の事例を説明して沖縄でも成功する可能性があることを何度も伝えました。

新たな沖縄観光サービスの創出というところで、これまでやったことのない「7日間で一周する」モニターツアーに挑戦できたのはとても良かったです。

Q2.サポート陣はとても充実していると思います!

本事業のサイクリングツアー運営実施は、サイクリングガイドの育成にも力を入れておられる一般社団法人沖縄県サイクルスポーツ振興協会さんにお願いしました。

そして今回の「オキイチ」企画でツアーガイドに内間康平さんと新城銀二さんを起用したいという話をされたときに、これだけでこのツアーの目玉に出来るぞと思いました。

というのも、内間さんと新城さんは元プロロードの選手で、内間さんはリオデジャネイロオリンピック選手でもあります。さらにお二人はサイクリングツアーガイドの研修を受けており、今後サイクリングガイドとして活動していきたいという意向を示されています。

実際、テストツアーやモニターツアーでは、お二人自身も楽しみながら、そしてお客様が安全に楽しんで頂けるようガイドされていました。「自分たちも楽しかった」と話されていたのがとても良かったです。
自身が楽しむことがお客様も楽しんで頂けることに繋がり、ツアーガイドのお仕事をする上で大事なポイントだと思います。

そして、お客様の二人に対する評価がとても高かった!コース上の道を熟知しており安心して走行できたことや、丁寧なサポートなどが評価されていました。
今後のツアーに向けて自信がついたと思うし、ますますお二人には頑張ってほしいです!

Q3.私(大川)が言うのもおかしいですが、このツアーにかなり可能性を感じています。今後どのように展開していく予定ですか?ビジョンなど教えてください。

まずは、ガイドと運営スタッフの人材育成です。
今回のモニターツアーでは、ガイド2名と運営スタッフ2名の計4名で10名のお客様をサポートしました。今後、10名以上のツアーや連続してツアーを実施した場合、4名だけでは回しきれません。
ガイドとして活躍したい人、運営スタッフとしてツアーに帯同できる人を増やしていく必要があります。

また、人材育成に力を入れるのと同時に、ガイドや運営スタッフがしっかり収益を得られる仕事にならないと長続きしません。
この仕事を本業にして活躍したい!という人が増えるよう環境を整えていきたいです。

もう一つは、沖縄一周がメインのアクティビティなので、完走することが一つの大きなテーマとなってしまうことです。
それだけでも充実感はあるのですが、もっと旅全体の、そして沖縄ならではのストーリーをデザインし、且つお客様自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅にしたいです。
アドベンチャーツーリズムの考え方を取り入れたいですね。

商品化するためには、価格設定やターゲットの明確化、旅行会社との連携体制の確立などやるべきことは沢山あると思いますが、ツアー実施・改善を繰り返しながら、お客様満足度の高い商品に仕上げていきたいです。

Q4.どんな気づきがありましたか?

初対面同士の参加者とスタッフが7日間をともにする中でOneチームになっていく様子をみて、これが7日間で「オキイチ」に挑戦する旅の醍醐味だと実感しました。

1回目のモニターツアーは先着順で募集したのですが、なんと皆さん個人参加で北海道から九州まで全国各地からの10名でした。
参加者もスタッフも初対面でお互いのことを全く知らないままスタートしましたが、3、4日目くらいから走行に連帯感が生まれ一つのチームのようになってきました。

私は遠隔サポートでしたが、送られてくる写真の皆さんの表情や距離感からも感じることができました。7日間を共にして、アップダウンが続く厳しい道を走ったり、一緒に食事をしているうちにOneチームになっていくのです。この体験は、他の旅ではなかなかできない事だと思います。

今回はコロナ禍ということもあり日本国内に限られていましたが、将来は世界中から参加者が集まり、参加者同士の交流を楽しんで頂ける「オキイチ」にしたいです。

Q5.HBWの読者(チャレンジ好きな方いっぱいいます)に向かって何かメッセージをください!

HBW読者の皆様にも、ぜひ「オキイチ」に挑戦頂きたいです!
7日間一日中自転車を漕ぐ非日常空間の中で内観したり、沖縄の自然に癒されたり、地元の方々とのふれあいを通して新たな気づきや発見があると思います。
テーマを決めて大川さんと一緒に行くワーケーション的なツアーを企画しても良いかもしれません。

私が自転車に一番可能性を感じている点は、心身の健康に良いというところです。体の健康だけでなく心の健康にも良いというのが最も重要視したいところです。そして、環境にやさしく、観光コンテンツとしても良いと思っています。

車社会で自転車に乗る人がまだまだ少ない沖縄ですが、県民も普通に移動手段として、そしてサイクリングを趣味にして自転車に乗る人が増え、県外国外の人がサイクリングで沖縄を満喫できる環境を整えていきたいです。

それが実現すると、自転車に理解のある心身ともに健康な沖縄県民が増え、よりハッピーになり、そして県外国外の自転車で沖縄を楽しみたい人を快くお迎えすることができます。今はまだ夢みたいですが実現させたいです。

HBW読者の皆様は、心身ともに健康な方がほとんどだと思いますが、「オキイチ」に挑戦してより健康になり、そして沖縄を好きになって、あわよくば沖縄で健康経営ビジネスに繋がる何かが生まれるかも!サイクリングもコンテンツに出来ないか一緒に考えていけると嬉しいです。

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2022年2月9日]