2019年7月4日にパシフィコ横浜で行われた「ウェルネスベンチャーサミット」に「市民とプロフェッショナルをつなぐヘルスケア」というとても興味深いテーマで登壇したOWLSの横山里佳さんに約1年経った今どう変化し、今後どうなりそうかを伺いました。

横山 理佳(よこやま りか) 氏

横山 理佳(よこやま りか) 氏

Profile

花王(株)ヘルスケア食品研究所にて、R&Dとして健康食品や生活習慣の研究と、デジタルヘルス分野の新規事業プロジェクト、(株)日本総合研究所 創発戦略センターにて医療・健康・介護・農業分野の新規事業開発及びコンサルティングに従事(うち1年間は、理化学研究所にて科学技術振興機構産学官民連携プロジェクトのメンバーとして、地域の業界振興や異業種プロジェクトを推進)。2018年より独立し、ヘルスケア・ウェルビーイング分野のサービス開発・研究実装・エコシステム構築に関わる。東京大学農学生命科学研究科(修士卒)。

Q1.市民とプロフェッショナルをつなぐヘルスケアの意図とここ1年前くらいの横山さんの活動の推移を教えていただけますか?

もう1年経つんですね…

サービス開発や事業開発の協働案件を続けつつ、場所を持たれている方(地域のコミュニティや企業の方等)との対話や検討を通して、提供側の目線ではなく、「ユーザー(市民)」の現状を知る、サービスや考えをぶつけてみて反応を伺うことをしていましたね。

ヘルスケアの話題は、だれしも関心がある領域でありながらも、専門的な話題も多く、「敷居が高い」と感じている方が多いということを痛感し、継続的に健康を考えていくために必要な仕組みを考えていく期間になりました。
また、それを通して、研究者の先生方にも多く出会うことができました。
なぜか、前回のサミットで「市民と専門家を繋ぐ」と言い切ってから、まだしっかりと把握していない分野のことに携われました(笑)。

そして、年明けからは、厚労省のヘルスケアベンチャーサミットのミートアップ運営のメンバーと共に、ウェルビーイングの事業を生み出す前の方々に特化したインキュベータープログラム「WOMB」の企画・立ち上げに参画させていただき、多様なステークホルダーを繋ぎ、多様な視点から社会課題をフォーカスする「空気」を作るために奔走させていただきました。

そして、今月(7月)からは、引き続き、予防医療×エビデンスに特化したBtoB(BtoG)のサービスをご提案させていただきながら、BtoCの事業開発に本格的にチャレンジする予定としております。

Q2.横山さんのそうした強みというか魅力はどういった背景から生まれてきたか興味あります。可能な範囲で教えていただけますか?

おそらく、「当事者」と「開発者」として2つの原体験が影響していると思います。

1つは、大きく遡って、社会人4年目のころ。
健康についての研究をする身でありながら、朝、突然起き上がれなくなりました。
会社での健康指導を受けて回復することができたのですが、「不調になっているのはかっこわるい」と思っていた私には、保健師さんのアドバイスを受け入れて、「良くなりました」と示すことしか考えていなかったのです。

でも、結局、自分の生活習慣や行動のクセは治らず、健康や自分の課題に対する考え方・捉え方もアンバランスで、今思うと根本的な改善ができていなかったと思います。
若い頃はそれでも良かったのですが、35歳すぎたくらいから顕著に体や体調に現れはじめまして(笑)。人間の体はよくできているな、と。

2つ目は、メーカーのR&Dとして、健康食品や健康経営系のサービスに関わっていたときの違和感です。
2010年頃から、現在は当たり前になっているデジタルヘルス関連のプロジェクトの担当として、エビデンスデザインをしていたときに思ったことがあります。
研究等から出す数値で「ここまでは良い」「ここからはダメ」と線引きすることで人を評価するような堅苦しいものになってしまいかねないこと、一方、わかりやすい言葉で表現すればするほど、専門家の知恵をしっかりと伝えられない。
そして、何よりも、ユーザーの心や体の「声」、つまり、「不安」を聞ききれていない。そう感じていました。

ビジネスや社会を俯瞰できるようになった今もその気持ちがあります。
そして、今回のコロナ禍での皆様の不安や混乱などで、更に、その思いが強くなっています。

Q3.今後の計画などを教えてください。

中長期的な計画も含みますが、「専門家のナリッジをまとめる・伝える」「一般の方に寄り添う」という2軸を、それぞれ際立たせていきたいと考えています。

まず、企業向けには、研究に基づいた情報(エビデンス)をアップデートしていく継続的なパッケージを提供したいと考えています。
サービスの仕様を検討して運用していく際に、興味があるトピックスを一から探してキャッチアップするのではなく、簡便に確実にキャッチアップできる仕組みを、まずは企業様との協働案件等のフォローアップとして提案させていただきたいと考えています。

一般の方には、前向きに健康になるための行動習慣を選べるように寄り添うサービス(ディシジョンエイド)を作る予定です。
予防医療関係のサービスは良いものがいっぱいあります。ただ、それを選ぶ行動をするには、その手前に仕掛けが必要であると感じています。

今後提供していく内容は、沢山の方々との協業のもとに社会に浸透していくものと考えています。
これから本格的にとりかかっていくプロジェクトばかりなので、一方的に提供するだけでなく、ぜひ皆様と、ヘルスケア、ウェルビーイングの理想郷を描いていければと思っています。

ありがとうございました!

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2020年6月30日]