こんにちは。脇本和洋です。

2020年の[海外事例にみる企画ヒント編]では、高収益化のために、サービス内容に加えて、顧客とのコミュニケーション、マーケティング方法といった視点でも事例を紹介していきます。

1月と2月は、米国の人気ダイエットテレビ番組であるTHE BIGGEST LOSERから、「興味性を高める工夫」を特集します。

特集:海外事例にみる企画ヒント編

15年に渡るダイエット長寿番組に見る「興味性を高める工夫」(1)

健康ビジネスにおいて、提供者が見落としがちな重要なポイントがあります。特に長年やればやるほど、つい忘れてしまうことです。

それは何か?

「提供者が思うほど顧客は健康には、興味をもっていない」ということです。

当たり前ですが、今病気なら健康に戻すことに興味をもちますが、健康な時は健康以外のことに興味がわくものです。

そのため、健康を売るのにまず必要なのは、あなたのビジネスへの興味性を高める工夫です。

今回紹介するTHE BIGGEST LOSERは民間のテレビ番組です。
そのため、視聴率を稼ぐために興味をもち続けてもらうための工夫がいろいろとあり、その工夫が健康ビジネスの興味性を高めるヒントになるというわけです。

【目次】

  1. アメリカのトップ50のショー番組に長年ランクインするTHE BIGGEST LOSERってどんな番組?
  2. 興味性を高める切り口:テーマ性
  3. 興味性を高める切り口:ストーリー性

1.アメリカのトップ50のショー番組に長年ランクインするTHE BIGGEST LOSERってどんな番組?

THE BIGGEST LOSERは、肥満の一般参加者がカリスマコーチの指導で、約20週間でどれだけ痩せられるかを競う視聴者参加型のテレビ番組です。

もっと言うと、体重が100キロから200キロもあるお相撲さんのような素人が現れ、プライベートをあからさまにし、カリスマ指導者からの容赦ない指導で涙を流しながら運動し、葛藤し、最後は全員以前とは見違える姿に変身するという番組です。

2004年から2016年までの13年間、17シーズン(17期)に渡って放映され、その後中断していましたが、2020年1月末からバージョンアップして放送されることが決まっています。

【番組概要】

  • 放送開始:2004年
  • 1シーズン(期):約5か月間(20週、週1回放送)
  • 1回の放送時間:約1時間20分
  • 参加者数:20名~30名
  • 賞金:25万ドル(約2,500万円)が優勝者1人に贈られる
  • 減量の基準:何キロ痩せたかではなく、体重の何パーセントを減量したかで競う
  • ホスト役:Alison Sweeney(減量経験のある人気女優)
  • トレーナー:Bob Harper、Jillian Michaels他(カリスマトレーナー)

※THE BIGGEST LOSER(紹介ページ)
https://www.nbc.com/the-biggest-loser

2.興味性を高める切り口:テーマ性

一つ目の興味性を高める切り口は「テーマ性」です。

THE BIGGEST LOSERは、1シーズンごとに、テーマをもちます。テーマとは、参加者の切り口のことです。
この切り口に興味をもつと、その後の継続的な視聴につながります。

例えば、各シーズンのテーマは、

  • Couples(肥満に悩むカップルが2人一組のチームとなり減量に挑む。カップルは親子や兄弟、夫婦でもよい)
  • Second Chances(不幸な過去を背負う人が人生の再出発をかけて減量に挑む)
  • No Excuses(言い訳ばかりする人が、自分を変え減量に挑む)

などがあります。

Couplesは人気テーマで複数回テーマ設定されています。米国では家族で肥満の人が多く、親が「私のせいでこの子も肥満になってしまった」といったように子供対し負い目を感じ、悩んでいることが背景にあります。

また、Second Chancesは2009年のテーマで、リーマンショック後に経済的に苦境に立たされる人が多かったことが背景にあります。

つまり、ダイエットしたい人をめぐる環境や時代背景を都度考慮しテーマを設定し、「私と似ている!」と感じさせ、最初のテーマの段階で興味性を高めます。

3.興味性を高める切り口:ストーリー性

二つ目の興味性を高める切り口は、「ストーリー性」です。

1シーズン(20週間)の放送の中では、全体としてのストーリー設計をしています。例えば、以下のようなものです。

  • 1週目:スタート時の体力の測定が行われ、体力が極端にない人が多いことがわかります。さらに、メディカルチェックが行われ、心臓病などのリスクがかなり高い人が多いことが視聴者に伝わります。いわば、「イケてない人たち」であることを訴求します。 
  • 2週目~19週目:週ごとにトレーニングのテーマが変わります(有酸素運動、無酸素運動、食事方法)。運動トレーニングでは、涙しながらついてくる参加者をトレーナーが励まします。食事をテーマにする場合、フードバンクへ行き貧困者向けの食事を手伝い食品の大切さを学んだりします。 
  • 20週目(最終回):参加者が一人ずつ呼ばれ、これまでの出来事や思い出を振り返ります。最終優勝者の決定がされ、大きく変わった姿をクローズアップします。

つまり、最初はどん底からスタートし、いろいろな発見・学びを経ながら、参加者の心と体が大きく変わる。そして最終的には、

「人生でやりきることの大切さ」

を教訓として伝えます。このように、ストーリー全体として、興味性を高めています。

今号では、15年に渡るダイエット長寿番組である「THE BIGGEST LOSER」が行っている興味性を高めるための工夫として、テーマ性とストーリー性をとりあげました。

続けて2月の[海外事例にみる企画ヒント編]でも、引き続きTHE BIGGEST LOSERの興味性を高める工夫(今度は要素)を紹介します。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる企画ヒント編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスの現場で使えるキーワード

「顧客への寄り添いポイント」

近づくだけでは寄り添う事にならない。顧客との歩幅・歩調を合わせ息遣いを感じることが大切です。

今週の注目デジクリップ!

[1]グローバルニュートリショングループ、GNGニューズレター:GNGが選ぶ健康食品業界10大トピックス
https://global-nutrition.co.jp/gngnl/gng_newsletter_20200106/
1月6日(月)発刊。トピックスは「機能性表示食品、届出数2,600件越え&新たな動向、続くトクホ離れ」「ブレインヘルス」「パーソナライゼーションは、止まらない」など

[2]矢野経済研究所、セルフケア健康機器市場に関する調査を実施(2019年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2322
2018年のセルフケア健康機器市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年比101.3%の2,143億円であった。高齢化社会の進展や健康への意識の高まりを背景に、健康管理機器、健康回復機器、健康治療機器ともに堅調に推移している。(2020/01/08)

[3]ファンケル、尿から鉄分の充足状態が判定できる方法を開発【PDF】
https://www.fancl.jp/news/pdf/20200108_nyoukaratetubunnnozyuusokuhanntei.pdfhttps://www.fancl.jp/index.html
鉄分に関係するタンパク質「フェリチン」を測定し、鉄分の充足状態を簡単に判定する方法を開発。近日中に実用化、お客様へのサービス提供に活用する予定。(2020/01/08)

[4]LINEヘルスケア、いつでも医師とLINEでつながる「LINEヘルスケア(β版)」、iOSにて提供開始
https://linehealthcarecorp.com/ja/pr/news/2020/3
ネット検索では解決しにくい、健康に関する悩みや不安をLINEで解決。チャット形式で医師に相談できる「いますぐ相談する(相談を予約する)」と、テキストメッセージ形式で詳しく医師に相談できる「あとから回答をもらう」といった2種類のオンライン健康相談をスタート。(2020/01/08)

[5]メディロム、スマートトラッカー市場に参入 世界初無充電デバイス「MOTHER」を2020年夏に市場投入
https://medirom.co.jp/2020/01/1904/
メディロムは、シリコンバレーのスタートアップ企業MATRIXと、世界初、24時間365日のアクティビティトラッキングを可能とする生涯充電不要のウェアラブルトラッカー「MOTHER」の共同開発に成功。MOTHERは体温で発電するアクティビティトラッカー。(2020/01/09)

[6]LSIメディエンスとオクタウェル、健診当日から『特定保健指導』を開始できる仕組みを構築【PDF】
https://www.medience.co.jp/topics/release200114-1.pdfhttps://www.medience.co.jp/
医療保険者、健診機関、保健指導機関の3者がスムーズに業務やデータ授受等の連携ができ、健診当日から特定保健指導を開始できる仕組みを備えた新サービスを、オクタウェルが開発した「ウェルエット」を利用して、業界初のワンストップサービスをスタート(2020/01/14)

[7]明星食品、業界初!おいしく、かしこく食塩摂取量をコントロールできる「しおケアカップ」を使用開始
https://www.myojofoods.co.jp/news/8333.html
「しおケアカップ」とは、お客さま自身で内側下線までスープを残し、摂取する食塩相当量を調整できるようにしたカップ。カップ内側下線までスープを残した場合に摂取する食塩相当量の目安をカップ側面に記載。(2020/01/14)

[8]2020年版メンタルヘルステックカオスマップをemolが公開(TechCrunch Japanより)
https://jp.techcrunch.com/2020/01/14/mental-health-chaos-map-2020/
カオスマップでは、国内で展開される70あまりのメンタルヘルステックサービスが、7つのカテゴリに分けて紹介されている。このうち、とりわけ多くのサービスが取り上げられているのが“HR”で括られた、企業の人事部門向けの分野。(2020/01/14)

[9]新社会システム総合研究所、【Apple、Google等BIG5がもたらすバリューチェーン革命】デジタル医療・ヘルスケアビジネス2025
http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_20094.html
開催日は3月3日(火)。セミナーでは、「医療改革の本質とは」「さらにはスマートホーム、スマートシティと連携、接続へ」「ビジネス勝者は誰か?その条件は?」などについて解説。

[10]CES2020:P&GのIoTおむつ『Lumi by Pampers』 - 睡眠時間や動きを検出
http://mhealthwatch.jp/global/news20200114-2
P&Gは、HDカメラと動きセンサーと連動する赤ちゃん用のおむつ『Lumi by Pampers』「CES 2020」会場で発表。価格は349ドル。おむつの状態だけでなく、室温や夜の動き、湿度などの状況もトラッキング。(2020/01/14)

[11]『mHealth Watch』注目ニュース:『あすけん』、2019年もっとも食べられた市販食品ランキングを発表
http://mhealthwatch.jp/japan/news20200120
今回は、2018年から2019年で市販食品のランキングがどう変化したかというトレンド的な面ではなく、この1年間で『あすけん』の登録ユーザー数と食事記録の件数が大幅に増加している点に特に注目したいと思います。(2020/01/20)