2017年4月27日に大阪某所にて「ハピネス経営」をテーマに3人の演者がそれぞれの専門領域から今後のハピネス経営のあり方を語るセッションセミナーが開催されました。
その3人とは西根英一氏(今年2月5日に当該コーナーにてインタビュー)と私、大川耕平と今回のインタビュー対象の松林博文氏(マーケティング3.0総合研究所所長)でした。
松林さんのメッセージは今で言う「働き方改革」「エンゲージメント」「多様性」「組織の新しい役割」など当時とても感銘を深く受けました。
昨今の情勢の中であの時の内容が今こそ求められているものではないか?と感じています。
小手先のヘルスケア改善向上機能をプロダクトやサービス化するだけではダメで、そのプレイヤー会社自体がハピネスを追求するスタンスを持っていないと相手(顧客)と価値共創へと向かえないと最近つくづく感じています。
前置きが長くなりましたが、松林さんにお話を伺いたくなり今回となりました。

松林 博文(まつばやし ひろふみ)氏

事業&組織&人材開発コンサルタント
グロービス経営大学院講師
マーケティング3.0総合研究所 所長
MIRACREATION株式会社 取締役

松林 博文(まつばやし ひろふみ)氏

Profile

ミシガン大学卒業後、国内外で経営大学院(MBA)で教鞭をとるかたわら、内外企業や、国・市町村へ総務省、経済産業省、近畿経済産業局、自治大学、国際協力機構などをつうじマーケティング、ブランディング、従業員、顧客満足度向上に関するアドバイザーを務め、カンボジア、マレーシア、韓国などアジア諸国でも教鞭を取る。日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)特別執行役員。ベンチャー型事業継承支援。

著書、共著書に「未来の組織はエンゲージメントで決まる」(英治出版)「(実況)マーケティング教室」(PHP)、「マーケティング MBAシリーズ」(ダイヤモンド)「クリエーティブ・シンキング」(ダイヤモンド)「MBA経営キーコンセプト」(産能出版)「ほんとうの事業承継」(生産性出版)などがある。1962年1月生まれ鎌倉在住。趣味はサーフィン、トロピカルアート、ワイン。

Q1.今後の日本企業が重視すべきテーマとして、「ハピネス」「エンゲージメント」がありますが松林さんの思いやスタンスを教えていただけますか。

はい、ありがとうございます。
大川さんにはいつも色々なセミナーでコラボさせていただき大変お世話になっています。
それでは簡単にエンゲージメントに私がどのように興味を持ち、現在どのような問題意識で取り組んでいるのかお話しさせていただきます。

僕自身は90年半ばアメリカのビジネススクールで学び日本のビジネススクールで戦略やマーケティングを教えています。
この20年で日本人のMBAホルダーも増え、海外からの知識もいち早く導入しているのに日本企業の業績は欧米や中国の企業に比較して低迷しています。

一人当たりの生産性、GDP、イノベーションにおける競争力ランキングなど様々な指標はこの30年間低下しています。これらのいわゆる経済指標だけでなく、幸福度、自己肯定感、そして僕の関心事でもあるエンゲージメントも低いのです。これは企業にとっても日本にとっても大きな問題です。
業績と働きがいの両方をバランスよく関連している指標がエンゲージメントです。
エンゲージメントは「社員の一人一人が企業の掲げる戦略、目標を適切に理解し自発的に貢献したい意欲レベル」です。
上司に指示されなくても自発的に前向きに働く人の比率が高い方が業績面でも精神面でもいいに決まっていますよね。

エンゲージメントの背景については英治出版から出された「組織の未来はエンゲージメントで決まる」により詳しく書かれています。
この書籍は日本でいち早くエンゲージメントを測定し始めたアトラエの新居代表とともに仕上げたものです。ぜひ興味のある人は手にとって読んでくださいね。

Q2.このHBWの読者は健康ビジネス・サービスやウェルネス系サービス事業プレイヤーとメディカル関係者になるのですが、それを前提として、エンゲージメントの重要性を教えてください。

現在、大阪の北浜にあるミラクリエイションという人事労務系のサービスを提供している会社のお手伝いをしています。
その一つのサービスにクライアントのエンゲージメントを測定し向上する支援を行っています。
具体的にはアトラエのwevoxという測定ツールを使って月一度のパルスサーベイを実施しています。

今後日本のあらゆる企業にとって「エンゲージメント」は重要な概念になっていくでしょう。
中でも、ヘルスケア、健康ビジネスに関わる方にとって「エンゲージメント」の概念は特に重要だと考えています。なぜなら高いエンゲージメントを達成するためには心身共に健康であることが必須だからです。

サーベイ項目の中にも直接的には自覚できる健康について定期的に聞いています。
また身体的な健康だけでなく、働きがい、職場の仲間との関係性、などのエンゲージメント項目は精神的な健康と深く関わっています。

これまでのリサーチから見えてくるのは、医療やヘルスケア業界のエンゲージメントは高いとは言えないことです。
特にコロナの影響で現場のスタッフに様々なしわ寄せがきているのも事実です。
さらに対人支援に関わっている方の特徴として自分を犠牲にして相手をサポートされる方も多いようです。
働く人のエンゲージメントを犠牲にした状態で継続的に他者に貢献することは困難です。社会や企業は「仕組み」としてエンゲージメント向上をより意識する必要があります。

また、エンゲージメントが低い状態が続くと現場でのミスも増加する傾向にあります。
それを未然に防ぐために医療やヘルスケア業界全体でエンゲージメント向上に取り組むことが必要になります。
まずはご自身が属する組織、団体のエンゲージメントを測定し、それを可視化することから始め、さらに中長期的な視点で改善、向上に取り組まれてはいかがでしょう。

大川さんや、以前の西根さんたちとも日本企業、団体のエンゲージメントを向上させることに日々取り組んでいますので、また気軽にお声がけください。

Q3.今後の企画などがあれば教えてください。

出版に関しては「エンゲージメント向上の教科書」と「コンパッション経営」を予定しています。いずれも現在仲間たちと共著執筆中で仮のタイトルとなります。

「エンゲージメント向上の教科書」についてはエンゲージメントについての概念、その重要性は理解できたけれども、どのように各項目を上げていけばいいのかまだわからないという読者を対象にしています。

「コンパッション経営」は、組織に属することで「共に生きる力」を高めあい業績を上げていく経営手法についてです。

いずれもエンゲージメントのテーマでもある豊かな関係性を築き上げるための考え方、仕組みについて執筆中ですのでご期待くださいね。

この記事を読まれて自社のエンゲージメント向上に興味を持たれた方は気軽に info@miracreation.co.jp までお問い合わせください。

ありがとうございました!

インタビュアー:大川耕平

[取材日:2021年5月7日]