こんにちは、渡辺武友です。
米国のデジタルヘルスの動向が、この1~2年で大きく変化してきました。
今後の日本市場でも起こり得ることですので、チェックしておきましょう!

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

1~2年で激変!米国のデジタルヘルス

Health Biz Watch、姉妹サイトであるmHealth Watchでは、多くの国内外のヘルスケアビジネスをお届けしてきました。
そこで見えてきたのが、米国のデジタルヘルス動向が、この1~2年で変化してきていることです。

この1~2年は、米国ではCOVID-19によるロックダウンをはじめとした多くの規制がなされましたが、ここ数ヶ月でほとんどが撤廃され、通常の生活スタイルになってきています。
その環境変化に合わせ、人が求めること、健康課題も変化してきています。

今回は、ロックダウンがもたらした米国のデジタルヘルス市場変化を3つの視点で見ていきます。

テレヘルス、MSK(筋骨格)プログラムの変化

国内でもCOVID-19のパンデミックにより、テレヘルス(遠隔診療)が解禁されました(条件や期限付きではありますが)。
特にロックダウンにより外出ができなくなった米国では、テレヘルスをはじめ、オンラインで診療を受けて薬の宅配をしてもらうなど、ヘルスケアの多くが自宅で受けられるものにシフトしてきました。

テレヘルスの代表企業であるTeladoc Health社の売上は、2019年には553億円、2020年1,094億円、2021年2,033億円と倍々で増加しています(※1ドルあたり100円で計算)。

もう1つ注目したいのが、Hinge Health社を代表とするデジタルMSK(筋骨格)プログラムです。
MSK(筋骨格)プログラムとは、腰痛や膝痛など筋骨格に関連する症状の初期段階やリハビリなど、手術が必要な重篤な状態ではない人に向けた運動プログラムがオンラインで提供されるというものです。

ロックダウンによりこれらサービスが普及したことになりますが、規制が撤廃されたことで、オンラインからリアルに戻る人も増えています。
オンラインを離れたのは意外にも若い世代で、中高年の方が継続してテレヘルスなどを利用する傾向があります。

高齢者などITリテラシーの問題から、なかなかテレヘルスに踏み出せなかった方も多かったのですが(高齢者利用率は以前の300%増)、ロックダウンにより強制的に使ったことで、その利便性に気づけたことになります。

投資の多くが予防支援から深刻な課題対応へ

2021年は米国のデジタルヘルスへの投資が好調でした。
特にメンタルヘルスやビヘイビアヘルス(行動支援改善)をテーマとするスタートアップに資金が集まりました。

しかし、2022年の前半の傾向として、軽度な症状や予防支援となるメンタルヘルスやビヘイビアヘルスの投資から、より深刻な疾患治療に特化したデジタルヘルスにシフトしています。
深刻な疾患とは、行動強迫性障害や摂食障害、重度な精神障害などが挙げられます。
例えば、摂食障害改善にVRを活用した治療を行うEquip社は、今年はじめに5,800万ドルの資金調達を達成しました。

ロックダウンになったことで、想定より深刻な障害に発展したケースが増えていることから、このような投資のシフトが起きたと言えるでしょう。

より成果を求められるヘルスケアへ

先の投資するデジタルヘルスに変化が起きているように、デジタルセラピューティクス(DTX:デジタル治療)への期待も、より成果を出すものに注目が集まっています。

特に米国ではバリューベース・ヘルスケア(治療行為だけではなく、治療による質、満足度が支払い評価となる)、そして早期発見や予防、予後のケアなどのペイシェントジャーニーの拡大により、今までの診療と処方薬の提供だけでは補えない状況になっています。

そこで役立つのがDTXです。

DTXは当初、体重や血圧データを入力するとグラフやアドバイスが表示され、患者の行動の参考になるものが主流でしたが、どうしても改善へのモチベーションが高い患者でないと使い続けることができませんでした。

今は、ゲームを活用したプログラムで脳を刺激するものや、生活習慣改善のサポートをするヘルスコーチングの導入などが進んでいます。

このようにデジタルヘルスを活用することで、より効果を出し、治療による満足度を高める取り組みへと大きくシフトしてきています。

デジタルヘルス、DTXに関する解説をします!

パシフィコ横浜にて10月12日~14日に開催される「healthTECH JAPAN 2022」にて、セミナー、ブース出展を行います。

今回のセミナー、ブース出展テーマは、デジタルヘルス、DTXの今後についてお伝えしていきます。詳細は改めてご紹介します。

リアルの場だからこそ詳細なお話しができますので、ぜひお越しください。

【healthTECH JAPAN 2022】

日時:10月12日(水)-14日(金)
会場:パシフィコ横浜
主催:JTBコミュニケーションデザイン

公式サイトはこちら
https://jcd-expo.jp/ja/

健康ビジネスキーワード

「ニーズへの認識」

埋もれていて、まだ明確になっていないニーズは存在する。
しかし、今存在していない全く新しいニーズや、今はないけど将来出現するであろうニーズというものは無い。
全く存在しないニーズの創造は実は不可能だけど、多くのプレイヤーが模索し、こだわり、何も起きない。

今そこにあるニーズの本質への別角度からのアプローチにイノベーションの可能性がある。
これに気づくか否か?

今週の注目記事クリップ

[1]GYYM、会員でありながらジムに通わない人の月会費を無駄に払い続けてしまっていた平均月数は1.8カ月ということが明らかに!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000059303.html
個別の入会金や月会費等の固定費用を支払うことなく、様々なフィットネス施設の予約・利用が可能な「1 TICKET FITNESS」を展開するGYYMが、月会費制スポーツジム利用者の実態調査を実施。(2022/07/27)

+++★追加解説音声:120秒★+++
https://youtu.be/w1aAzK8JtL4

[2]エムスリー、予防医療分野への取り組み「ホワイト・ジャック・プロジェクト」を開始【PDF】
https://corporate.m3.com/assets.ctfassets.net/1pwj74siywcy/63AwFZDUlP2u1ghq0IFpDQ/b191d5e6ac0c839494206edae3a2a000/20220727_Public_J.pdf
https://corporate.m3.com/
疾病の発症前の段階から健康状態を維持することを目的とした取り組み「ホワイト・ジャック・プロジェクト」を開始し、その第1弾として、健診代行を行うハピネス・アイを子会社化。(2022/07/27)

[3]伊藤忠商事、プラントベース食品ブランド「wellbeans(ウェルビーンズ)」を立ち上げ
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2022/220727.html
「ウェルビーンズ」は、プラントベースのおいしさをポジティブに楽しむ、「おいしさ」で選ばれることがこれからのプラントベースの常識になることを願い、誕生したブランド。(2022/07/27)

[4]ここまで進んだ「老化制御サイエンス」:ここまで分かった、老化物質「AGE」の謎と介入戦略(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00043/072100014/
老化を促進させる原因物質としてAGEが注目を集めている。このAGEに世界に先駆けて着目し、30年以上に渡って研究し続けている、昭和大学医学部教授の山岸昌一氏にAGEと老化の関係やAGEの体内蓄積を抑える研究成果について聞いた。(2022/07/27)

[5]sonomono、腸活の基本も学べる情報発信サイト「ソノモノラボ」開設(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000045905.html
健康寿命を延ばし、寝たきりシニアゼロの世界を実現させるために、sonomonoが着目しているのは「腸を健康に保つこと=腸活」。sonomonoが目指す地方創生ニューモデル「腸内環境日本一宣言プロジェクト」による研究結果なども掲載。(2022/07/27)

[6]askenとDNS、スポーツチームへ「あすけん」プレミアムサービスを無償提供
https://www.asken.inc/news/2022/7/26/dns
スポーツニュートリションブランドDNSとの共同企画。7月28日から9月30日までの期間、DNSがサポートするスポーツチームに「あすけん」のプレミアムサービスを無償提供する。(2022/07/28)

[7]ニチレイ、昆虫食のスタートアップ企業「TAKEO」への出資に関するお知らせ
https://www.nichirei.co.jp/news/2022/422.html
昆虫は環境負荷が少なく、栄養価や生産効率に優れた持続可能な食資源として期待されており、ここ数年は今までにない新しい食材としても注目されている。(2022/07/28)

[8]Apple Watchを通して利用できるヘルスケアデータとその応用を考える(Healthtech DBより)
https://healthtech-db.com/articles/applewatch-function
本記事では、スマートウォッチ中でも世界一のシェアを誇る「Apple Watch」をとりあげ、現在利用可能なヘルスケアデータには何があり、またそのデータや機能を応用しどんな疾患・患者管理に利用可能なのか、まとめていく。(2022/07/28)

[9]東京理科大学など、短時間のデータから 光電脈波特性の推定誤差の評価に成功
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20220728_8756.html
本研究をさらに発展させることで、日常の健康管理に有用なウェアラブルデバイス開発への貢献が期待される。(2022/07/29)

[10]ヤマハ発動機「移動と健康」に関する2年目の実証実験活動を開始
https://news.yamaha-motor.co.jp/2022/023141.html
大阪府河内長野市、奈良県王寺町などと協力し、7月25日からの約6カ月間、公道用“電動カート”を使った移動が健康促進・介護予防・介護費・医療費に寄与するかを検証するため、実証実験を行う。(2022/07/29)

[11]島根大学地域包括ケア教育研究センター、高齢者の歯の状態が高血圧の危険性を高める
https://www.cohre.shimane-u.ac.jp/docs/2022072600016/
島根県邑南町役場保健課との共同研究として集団健康診査(健診)のデータを分析したところ、高齢者の咀嚼機能の低さや義歯の不使用が、高血圧の危険性を高めることを明らかにした。(2022/07/29)

[12]久保田博南の「医療機器トレンド・ウオッチ」:電気磁気治療器の効果を見える化、感覚ではなくデータで明確に(日経デジタルヘルスより)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00546/00020/?ST=ch_digitalhealth
2022年6月に開催されたBioEM2022では、埼玉大学とソーケンメディカルが発表した「Faster reduction of the lower limb edema with 50Hz magnetic fields(50Hzの磁場による下肢浮腫の早期軽減)」というタイトルの研究が注目を集めた。(2022/07/29)

[13]デロイト トーマツ、グローバルで行っているZ・ミレニアル世代を対象とした年次調査の最新版「Z・ミレニアル世代年次調査2022」の結果を発表
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20220801.html
日本では約50%、グローバルでは60%超がリモートと出社のハイブリッドワークを希望。日本・グローバル共に「生活費」が最大関心事で、「節約」がリモートワークの恩恵。(2022/08/01)

[14]メドレー、ドコモと共同運営のオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」にドコモ提供「おくすり手帳Link」が統合ー薬局向けシステムはメドレーの「Pharms」を導入推奨ー
https://www.medley.jp/release/20220801.html
統合先となる「CLINICS」や「Pharms」では、「おくすり手帳Link」の有するお薬手帳や処方箋事前送信機能に加え、オンライン診療・服薬指導や対面診療の予約、服薬フォローアップ機能など、より充実した機能を搭載。(2022/08/01)

[15]ロート製薬×箱根ベーカリー、「焦がしバターのメロンパン」新発売
https://www.rohto.co.jp/news/release/2022/0801_01/
日本初の機能性表示食品のメロンパンを共同開発。食後の中性脂肪の上昇を抑えるグロビンペプチド入り。(2022/08/01)

[16]カゴメ、8月31日は「野菜の日」野菜をとろうキャンペーン賛同企業17社と野菜の想いを発信
https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2022/img/2022080101.pdf
8月は年間で最も野菜摂取量が低い月であり、夏の野菜不足解消の啓蒙として企画。各社の野菜への“想い”を発信することで、多くの人に野菜について考える機会や野菜を好きになってもらうきっかけになればと考えている。(2022/08/01)

[17][ピックアップ特集]ヘルスケア事業、異業種からの挑戦:第1回 拡大するヘルスケア産業に乗りだす商社(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00055/072800001/
三菱商事が描くヘルスケアビジネス[前編]。ここ数年、異業種からのヘルスケア事業参入や強化を図る企業が増えている。本特集は、そんな新たなチャレンジに再度焦点を当てる企画。(2022/08/01)

[18]BASE FOOD、AmazonのあたらしいTV CMにBASE FOODが登場
https://basefood.co.jp/news/940
BASE FOODに込められた想いや、商品開発の風景などが紹介されている。(2022/08/01)

[19]ガーミンジャパンと東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター、「モバイルヘルス技術を活用したマインドフルネス瞑想の心拍変動への影響についての検証」の共同研究を開始
https://www.garmin.co.jp/news/pressroom/news2022-0802-garmin-health/
本研究の目的は、マインドフルネス瞑想がストレスに与える影響を検証することにあり、モバイルヘルス技術を利用したデータ駆動型科学を用いて行う。(2022/08/02)

[20]矢野経済研究所×ウーマンズ、フェムテック市場の研究員と語る、女性ヘルスケア業界の新スタンダード「ジェンダード・イノベーション」とは?
https://www.yano.co.jp/announce/792
開催日は2022年9月13日(火)。独立系総合マーケティング調査機関の矢野経済研究所と女性市場に特化した業界動向分析・生活者分析を行うウーマンズがセミナーを共催。第1回目では矢野経済研究所代表取締役社長の水越孝氏が登壇。(2022/08/02)

[21]スプレッド、国内フードテックとして過去最高額となる総額40億円の大型資金調達を実施
https://spread.co.jp/news-release_20220802/
スプレッドは京都発の植物工場スタートアップ。2007年から運営を続ける「亀岡プラント」や次世代型の自動化植物工場「テクノファームけいはんな」でのレタス栽培をはじめ、その実績と経験を生かして開発した農薬不使用栽培の高品質いちごの商品化や代替肉の研究開発も行っている。(2022/08/02)

[22]認知症の兆候をAI検知するインソールを高専生が開発、評価額10億円で最優秀賞(PT-OT-ST.NETより)
https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1384?fbclid=IwAR27kO4qkWC5LUSPfkaKHgJV_olEld5L1U6PET_EBjitpvh4Lpmv-lacTkA
AIを活用して認知症の兆候を検知するインソールを一関工業高等専門学校の学生3人が開発。ディープラーニングを活用ビジネスモデルの評価額で競うコンテスト「DCON」にて最優秀賞を受賞。(2022/08/03)

[23]SUNDRED、「サイエンスをベースにしたWell-being産業の創出-PHRの活用を社会として前に進めていくためには?-」開催決定
https://sundred.co.jp/news/phr/
NTT西日本、BiocKパーソナルデータ分科会 共催セミナー。2022年8月30日(火)に大阪・京橋のNTT西日本「QUINTBRIDGE」にて開催。(2022/08/05)

[24]新社会システム総合研究所、未来を創るヘルスケアイノベーションに向けて何を考えるべきか
https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=22459
開催日は2022年9月1日(木)。健康価値と事業価値の共創につながるより良いサービスを構想・実装していくためのポイント。

[25]インフォーマ マーケッツ ジャパン、ダイエット&ビューティーフェア2022(第21回)
https://www.dietandbeauty.jp/
開催日は9月26日(月)-28日(水)。コスメ・美容機器や、サプリメントなど、様々な美容・健康業界のプロが集結するビジネスの展示会。

[26]クラブビジネスジャパン、2022年秋 フィットネスをベースにしたニュービジネスを創造する「西根塾」開講
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1013
フィットネスをベースに足し算、引き算、掛け算、割り算しながらニュービジネスを創り上げ、フィットネス業界に広くそれを告知していく講座を、株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ代表取締役 西根英一氏を講師にリアル開催。

[27]『mHealth Watch』注目ニュース:Mayo Clinic心臓専門医、小売業と同じく、ヘルスケアにも仮想プレゼンスが必要
https://mhealthwatch.jp/global/news20220808-2
テレヘルスを利用することで、対面診療と同じ満足感、安心感を得られ、テレヘルスの方が手間がかからないと思えれば、Ommen氏のコメントのように、テレヘルスを選ぶ人が増えていきます。(2022/08/08)

[28]The Rock Weekly 今週の注目記事より(英文)
・amazon、Whole Foodsに続きヘルスケアの上場企業「One Medical」を買収
https://rockhealth.com/rock-weekly/whole-foods-deja-vu/

・Appleが、ヘルスケア戦略に関わるレポートを発表
https://www.reuters.com/technology/apple-outlines-health-technology-strategy-new-report-2022-07-20/
Appleが健康分野に入ってから8年がたった今、包括的な方向性を示すレポートとなる。

参考>Empowering people to live a healthier day
https://www.apple.com/newsroom/pdfs/Health-Report-July-2022.pdf